産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.05.31

スポット溶接機とは?他の溶接機との違いや特徴を詳しく解説

スポット溶接機は、工場での作業からDIYまで幅広く使用される溶接機です。他の溶接機との違いや、スポット溶接機ならではの特徴について詳しく解説します。

この記事の結論

・スポット溶接機とは小さな面で接着するための機器
・電源とトランス、ヘッド、電極の4つの部分で構成される
・スポット溶接機を使うことで熟練工でなくても美しい仕上がりを期待できる

スポット溶接機とは?

スポット溶接機とは、点ほどの小さな面で接着させるための機器です。溶接の種類にはいくつかありますが、スポット溶接機による溶接は圧力を使って溶接する「圧接」の一種です。

電源に接続された電極の間に2枚の金属板を重ね合わせ、圧力を加えつつ通電することで金属を溶かして接合します。

スポット溶接機の構成

スポット溶接機は4つのパーツから構成されています。それぞれのパーツについて詳しく紹介します。

  • 電源
  • トランス
  • ヘッド
  • 電極

電源

電源から、時間や波形の制御をおこなった電流をトランスに流します。電源が入っているときは感電や事故の危険性もあるので、常に注意するようにしましょう。

トランス

電源から流れてきた電流を大電流に変換するパーツです。スポット溶接機ではごくわずかな面積の面(点に見える)に高電流を流すので、トランスが不可欠です。

ヘッド

溶接対象物に圧力を加える部分をヘッドと呼びます。ヘッドの大きさは対象物を十分にはさめるかどうかで決定します。

電極

電流を対象物に流して溶接を行う部分が電極です。大容量の電流が流れるため、手に触れないように注意が必要です。

スポット溶接機の特徴

スポット溶接機には優れた特徴が多数あります。その中でも特筆すべき8つの特徴を紹介します。

  • 溶接面が小さく仕上がりが美しい
  • 音が静か
  • 粉塵が出ない
  • 溶接速度が速い
  • 熟練工でなくても対応できる
  • 溶接材が要らない
  • 薄い金属同士の溶接に向いている
  • 通電しやすい材料には向かない

溶接面が小さく仕上がりが美しい

スポット溶接機ではほぼ点で溶接されるため、溶接面が外観を損なわず、仕上がりが美しいという特徴があります。

また、溶接する部分が少々ずれても溶接面自体が小さいため、ずれているかどうかが分かりにくく、個人的に溶接を楽しむ愛好家でも美しく仕上げることが可能です。

音が静か

溶接というと高い金属音がつきものですが、スポット溶接機ではほとんど音がしません。耳栓不要で扱うことができる溶接機です。

粉塵が出ない

スポット溶接機では溶接作業中に粉塵が出ないので、粉塵予防のマスクやゴーグルがなくても作業が可能です。しかし、光が強いため、目を傷めない目的でゴーグルを装着することができます。

溶接速度が速い

スポット溶接機では点で溶接するため、線や面で溶接する場合と比べて融解時間が短く、溶接速度が速いというメリットがあります。

しかし、広範囲の部分を溶接する場合には他の溶接機よりも作業時間が長くなってしまいます。あくまでも溶接面が小さなときだけ使うほうが良いでしょう。

熟練工でなくても対応できる

あらかじめ決まった場所を溶接するため、熟練した作業員でなくても対応できます。DIYなどで使用する方も少なくありません。

溶接材が要らない

溶接する部品自体を融解するため、別途、溶接材を用意する必要はありません。溶接材が要らないので、溶接にかかる費用削減にもつながります。

薄い金属同士の溶接に向いている

厚みのある金属は通電しにくいのでスポット溶接には向きません。薄い金属同士を溶接する際に、スポット溶接機を用いるようにしましょう。

通電しやすい材料には向かない

銅やアルミのように通電しやすい材料は、電気が溶接部に溜まりにくく温度が上がりにくいので、溶接しづらいです。スポット溶接機は、電気抵抗が高く、電気伝導率が高い鉄の溶接に向いています。

スポット溶接機が用いられる場面

スポット溶接機が用いられる場面をいくつか紹介します。スポット溶接機の使用イメージをつかんでください。

自動車の外観

スポット溶接機による溶接は火花が出ないので、作業の安全性も高いです。自動車工場では、自動車の外観を作る作業工程でスポット溶接機が用いられます。

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DIYでの薄い金属板の加工

DIYで使用するときには、薄い金属板を加工してクッキー型や表札などを作る際に用いられます。溶接面が大きなものには向かないので、必要に応じて別の溶接機を用意するようにしましょう。

スポット溶接機を使用するのに必要な準備

スポット溶接機を使用する際には、いくつか必要なものや条件があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

必要なもの

スポット溶接機で溶接作業をするときには、以下の4つのものを準備しておきましょう。

なお、ゴーグルは光を直視しないために必要です。また、熱が伝わることもあるので、手袋をしてからスポット溶接機を持つようにしましょう。

  • 溶接対象物(金属)
  • スポット溶接機
  • 手袋
  • ゴーグル

溶接の条件設定

スポット溶接機を使う前には、電極と加圧力、電流、通電時間の設定が必要です。それぞれの設定において注意すべきことを紹介します。

電極の選択

スポット溶接機は溶接する対象物によって電極を交換します。対象物に合う材質と形状の電極を選ぶことで、溶接対象物の品質を保持することができます。

対象物に合わない電極を選ぶと、溶接時に電極が溶けることもあります。電極溶解を避けるためには、融点が高い電極を使う、もしくは電極の先端が太いものを選ぶようにしましょう。

例えば銅-タングステンは、純銅に比べると導電率が下がるものの耐熱性が高いので、電極が溶けにくくなります。

条件の決定

スポット溶接機の加圧力・電流・通電時間を決定します。

いきなり対象物を溶接すると圧力や電流などが合わない可能性があります。必ず試運転をしてから実際の対象物を溶接するようにしてください。

スポット溶接機の種類

スポット溶接機の種類を、可搬性と電源形式で分類することができます。それぞれの分類によりどのようなタイプに分けられるのか見ていきましょう。

移動可能かどうかで選ぶ

スポット溶接機には、移動可能なものと定位置に置いて使用するものがあります。それぞれの特徴や使用場面を紹介します。

定置型

テーブルがついており、作業場に固定して使用するものを「定置型」と呼びます。一人で動かすことができないほどの大きさのため、業者に据え付けてもらいます。また、材料が大きくても利用できるので、工場向きです。

ポータブル型

持ち運び可能なものを「ポータブル型」と呼びます。小回りが利く操作性の高いものが多いので、細かな作業に適しています。自宅でDIYをするときには、ポータブル型を選びます。

電源形式で選ぶ

電源の形式によって選ぶこともできます。主に単相交流型とインバータ直流型、コンデンサ放電型の3つの形式があります。

単相交流型

単相交流型は、装置がシンプルで安価です。小型(10~20cm四方程度)で軽量(5kg程度)のものもあります。個人的にスポット溶接機を利用するときは、単相交流型を選ぶことが多いです。

インバータ直流型

インバータ直流型は、高品質な溶接が可能です。火花が発生しにくいので安全性が高いという特徴があります。工場などで利用されているスポット溶接機はインバータ直流型であることが多いです。

コンデンサ放電型

コンデンサ放電型は短時間での溶接が可能です。大電量を瞬時に放電できるため、強い熱量が必要な溶接作業にも適しています。ただし速度に制限があるため、流れ作業には向かないこともあります。

スポット溶接以外の溶接

電極を用いたスポット溶接以外にも、溶接の種類は豊富にあります。主な種類を紹介します。

ろう接(はんだ付け)

母体よりも融点が低い「ろう」や「はんだ」を溶かすことで溶接する溶接法です。対象物を溶かさずに溶接できます。

ガス溶接

ガスを使用して加熱して溶接する手法です。火花が出ないので、溶接面をしっかりと確認することができ、ミスが少ないというメリットがあります。

アーク溶接

アーク溶接では、ガスを使用しない方法もあるので、中毒や引火事故を防ぐことが可能です。小さな部品の接合に向いており、溶接機が比較的安価というメリットがあります。

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まとめ

スポット溶接機はほぼ点で対象物を溶接できる機械です。仕上がりが美しいので、DIYなどでも利用できます。

使用する際には必ず対象物以外で試運転をし、電極の形や素材、電流の強さなどが適正か調べてから対象物の溶接を行いましょう。

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