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工程の細分化や導入価格、スペース的にも大型ロボットを購入するのが難しいケースもあります。そんな時、ロボットに部分的な作業代替が期待できるのがロボットアームです。今回はロボットアームの基本的な機能と選び方、代表的な製品を紹介します。
・ロボットアームとはマニピュレーターといわれるアーム部分
・ロボットアームの選定基準は「自由度」「可搬重量」「駆動方式」「速度」「精度」
・ロボットアームの価格帯は10万~50万程度
・ロボットアームの代表製品3つ
ロボットアームとは
ロボットの性能や稼働を左右するのがマニピュレーターといわれるアーム部分です。マニピュレーターとは、Manipulate(操作する)の派生語で、産業用ロボットの動きの象徴的な腕の動きをあらわしています。
ロボットアームは、装置全体を指す場合や、大きくて複雑なロボットの一部を指す場合があります。回転や動力を伝達する接続部はジョイントで繋がれており、この部分を「軸」といいます。
人間の腕に代わって働くロボットアームの動きは、軸の数(軸数)と軸の動きによって決まります。一般的に4つから7つの可動部となる回転軸があり、それぞれサーボモータと減速機がつながれています。
ロボットアームの選定基準
ロボットアームは、汎用品としてメーカーが販売しています。製品を選ぶ際に重要となる基準を解説します。
自由度(可動範囲)
人間の関節にあたる軸数です。軸数が多いほど自由度が高く(可動範囲が広く)、複雑な作業が可能で、3次元空間の作業に適しています。そのため生産現場では、自由度の高い垂直多関節ロボットが主流になっています。
一方、直交ロボットは軸数が2から4と自由度が低く単純な動作しかできません。しかし、動作速度が速く精度が高い割に安価というメリットがあり、垂直多関節ロボットを補佐する作業に用いられることがあります。
可搬重量(ペイロード)
ロボットアームが持ち上げることのできる最大重量です。メーカーが可搬重量(ペイロード)を設定しているので、運搬する対象物の重量を考慮して選択するようにしてください。
可搬重量は、ロボットアームの軸数やリンクの接続の方式と密接な関係があります。たとえば、垂直多関節ロボットや水平多関節ロボットは、モーターの先にモーターが繋がった構造であるため、根元の軸に近いほど大型のモーターが必要です。このため、ロボット本体のサイズや重量の割に可搬重量が小さくなります。
一方、パラレルリンクロボットは根元にある複数のモーターでロボットの先端だけを動作させるため、ロボット本体のサイズや重量に対して可搬重量が大きく、高速での動作が可能です。
駆動方式
油圧、空圧、電動、手動などのロボットアームの駆動方式です。駆動方式により、マニピュレーターの速度や強度、精度などが決まります。
最も一般的な駆動方式は電気です。電気による駆動は、制御がしやすく高速の動作に向いており、装置をコンパクトにできるというメリットがあります。
油圧駆動は大きな力を出しやすく、外部からの衝撃に強いため、重量物の運搬するロボットなどに使われています。空気圧駆動は電気駆動に比べて高精度な位置決めなどの精度は劣りますが、空気の圧縮性を利用した柔らかな力の制御が可能です。また、油圧ほどではありませんが大きな力が出しやすいというメリットもあります。
速度
ロボットアームの作業速度で、速い方がタイムラグなく作業できます。生産ラインの速度に合わせて選定することが大切です。
ロボットの動作が必要以上に速いと、前後の工程で待ち時間が増えたりムダな在庫が発生し、処理量増加の効果が相殺されてしまうからです。
また、安全柵を設けないロボットや協働ロボットでは人への安全対策が必要です。
これらのロボットの動作速度には規定された制限があり、ロボットハンドが対象物に触れる点の中心であるTCP(ツール・センター・ポイント)速度は250mm/s以下とされています。どうしてもロボットを高速で作業させたい場合はロボットを安全柵で囲んで人が立ち入らないような安全対策が必要です。
精度
ロボットアームの精度を判断する指標として「繰り返し位置決め精度」と「絶対位置決め精度」があります。産業ロボットを用いた生産では、同じ動作を繰り返して行うので精度が重要です。
一般に、関節数と精度は反比例する傾向にあり、関節数が多くても剛性やサーボモーターの品質を上げると、精度も上げることができます。ただし、高い精度を備えた多関節ロボットは一般的に高価な傾向もあります。
精度と価格の相反する条件の解消策としては、「センサーフィードバック」という技術が注目されています。センサーフィードバックはロボットハンドの先端に画像センサーを取り付け、画像センサーからの位置情報を基に相手座標系を基準としロボットアームやロボットハンドを制御します。
このため、高性能なロボットに交換することに比べ、低コストで確実に精度不足を補うことができるというメリットがあります。
ロボットアームの価格帯
産業用ロボットのロボットアームの場合、価格帯は100,000円~500,000円程度といわれています。もちろんメーカーによって価格は異なりますが、ロボット一体の購入と比べて価格は抑えることができます。
ロボットアームの代表的な製品を紹介します。
卓上ロボットアーム DOBOT Magician
卓上ロボットアーム DOBOT Magicianは株式会社アフレルの製品です。
これまで産業用ロボットと言うと1体あたり1,000万円を超える高価格帯が主流で、小型で安価とされるタイプでも100万円を超えるものが一般的でした。
DOBOT Magicianは15万円前後の価格帯ながら、4軸アームを備え、標準のツールヘッドとして、グリッパー、吸盤キット、ライティング&ドローイング、3Dプリンタ等があります。
ロボットアーム KR 1000 titan
ロボットアーム KR 1000 titanはKUKA Japan株式会社の製品です。
強力・迅速・自在性・正確性を備えた独自の6軸ロボットアームです。最大可搬重量1000kgで、最大可搬時においても6軸多関節ロボットのフレキシビリティーを備えています。
ROBOサドル
ROBOサドルは株式会社三桂製作所の製品で、2019年に販売が開始されています。
ロボットアーム部に取り付けケーブル・ホース類をサポートする可動式サドルで、自由自在に回転や方向調整が可能です。
まとめ
工場現場で人間のように滑らかな作業を行うためには、ロボットアームが重要になります。
自社で導入した産業用ロボットが故障した際に、一体丸ごと新しいロボットに交換するのは現実的ではありません。ロボットの動きの中枢を担うアーム部分だけの交換で済むケースも多いです。
ロボット本体の価格と比べると100,000円~500,000円と安価になるため、新規購入はもちろんのこと、ロボット交換の際にもロボットアームの製品をチェックしてみることをおすすめします。