目次
総合重工メーカーとして知られる川崎重工は、50年以上にわたり産業用ロボットを生産・販売してきました。川崎重工のロボットは、自動車メーカーをはじめ、国内外の様々な製造業で現在も活躍しています。
本記事では、川崎重工業のロボットにはどのようなものがあるのか、実際にどのような工程で活用されているのかを事例を踏まえてご紹介します。
川崎重工とは
川崎重工業株式会社は、東京都と兵庫県に本社を置く総合重工メーカーです。1878年創立で、船舶海洋・車両・航空宇宙・ガスタービン・プラント・モーターサイクル&エンジン・精密機械など多角的に事業を行なっています。
ロボット事業に関しては、1969年に国産初の産業用ロボットの生産を開始しました。以来、自動車産業を中心に国内外の製造業の自動化に貢献しています。
近年では、半導体や医療の分野で技術力を発揮しています。半導体搬送ロボット(ウェハ搬送ロボット)は世界でトップシェアを誇り、医療分野では、手術支援ロボット「hinotori」の販売が話題になりました。
出典:川崎重工
川崎重工のロボットの特徴
総合重工メーカーである川崎重工は、航空宇宙・鉄道車両・モーターサイクルなどの製品を製造しているため、自社内の製造工程で川崎重工のロボットを適用することができます。そのため、ユーザー視点での使い勝手や改善点を検証し、製品機能や提案内容に反映することが可能です。
製品ラインナップの多さも特徴の一つです。自動車・半導体・医療・物流など、川崎重工のロボットで対応できる分野は幅広く、納入実績も多数あります。
さらに、川崎重工はシステムインテグレーターとしての機能も有しており、ロボット単体のみでなく、システムとしての提案が可能な点も特徴です。
川崎重工のロボットの種類
川崎重工のロボットの種類について、適用別にご紹介します。
参考:川崎重工(製品ラインアップ)
スポット溶接
スポット溶接適用の機種には、大型汎用ロボットのBXシリーズ・BTシリーズがあります。可搬重量は100〜300kgのロボットです。
溶接ケーブル、ホース類を内蔵しているので省スペースで、設備との干渉を防ぐことができます。BX・BXTシリーズをさらに高剛性・軽量化し、性能もアップしたものがBXPシリーズです。
最新の制御技術を搭載したFコントローラーによる制御で、動きも高速化されています。大手自動車メーカーの製造工程にも多数導入されている機種です。
関連記事
塗装
防爆仕様のKシリーズは、塗装工程向けのロボットです。
Kシリーズはバリエーションが多いので、小型部品の塗装から自動車の内外板塗装まで大小様々なワークに対応できます。
ホース内蔵タイプのものもあり、ホースに付着したホコリやゴミがワークに落ちるのを防ぐので、塗装不良対策に効果的です。
また、ロボット単体のみでなく、周辺設備も含めた塗装パッケージシステムとしての販売もオプションで行なっています。
ウェハ搬送
川崎重工のウェハ搬送ロボットは、世界トップクラスの半導体製造装置メーカーに導入されています。代表的な機種としては、NTJシリーズ・TTJシリーズ・NTHシリーズがあります。
同社独自の駆動機構によって実現した高精度でなめらかな動作が特徴です。TTJシリーズに関しては、テレスコピック機構を採用しているので上下の稼働範囲が広く、低位置から高位置までの搬送が可能です。
また、NTHシリーズは 、回転中心をずらしたロング アームの設計になっており、走行装置無しで広範囲にアクセスすることができます。
ハンドリング
川崎重工のハンドリングロボットは3〜1500kg可搬までラインナップ豊富です。小・中型汎用ロボットのRSシリーズは、3〜80kg可搬まで種類があります。業界トップクラスの動作速度と、広い動作範囲を特徴としたコンパクトなロボットです。
300kgを超える重量ワークのハンドリングが必要な場合には、超大型汎用ロボットのMシリーズが適しているでしょう。Mシリーズは、主に大型鋳造品の搬送などの目的で活用されています。
パレタイズ・デパレタイズ
生産ラインの最終段階で箱、袋、ケース、瓶、カートン等をパレットに積み上げることをパレタイズといい、パレットから荷物を下ろすことをデパレタイズといいます。
CPシリーズ・RDシリーズは、このパレタイズ・デパレタイズ作業に向けてつくられたロボットです。幅広い重量の搬送物に対応できるよう、可搬重量は80kgから700kgまでカバーしています。高速な往復動作で、効率的なパレタイズ作業を実現します。
ピッキング
YFシリーズは、小物部品や食品を高速で仕分けするピッキングロボットです。
酸性やアルカリ性洗剤を用いた洗浄に対応している仕様や、食品機械用グリス・オイルを 採用した仕様もあります。
協働ロボット
川崎重工の協働ロボットは、双腕スカラロボットの「duAro」です。腕が2本あるので、人と同じように作業ができる点が、他社にはないユニークな点です。
タブレットとダイレクトティーチによりティーチングも簡単で、食品製造工程や、自動車の組立工程でも活用されています。
川崎重工のロボットの価格
RSシリーズの7kg可搬のもので約200〜300万円です。ただ、具体的な販売価格については販売元に問い合わせが必要になります。
代表的な販売元には、川重商事株式会社・椿本興業株式会社・株式会社ロボカルがあります。
川崎商事株式会社は、川崎重工グループの商社として、カワサキロボットを販売しています。各SIerとのネットワークを活かした提案が強みです。ロボット導入後のアフターサービスも行っています。
椿本興業株式会社は、大阪に本社を置く商社で、産業機械の販売や化学素材の加工・販売を行う会社です。FAやマテリアルハンドリングシステムに精通した社員が多く在籍しているのが特徴です。
株式会社ロボカルでは、構想設計から納入後のアフターサービスまで入り込み、一気通貫でサポートいたします。
川崎重工のロボットの導入事例
川崎重工のロボットは様々な製造工程の自動化に貢献しています。具体的にどのような工程に導入されているのか、その実績をご紹介します。
導入事例① 自動車ボデーの溶接設備
愛知県豊田市に本社を置く鬼頭工業株式会社では、トヨタ自動車株式会社を始めとする大手自動車メーカー向けの自動車ボデー溶接設備を設計・製造しています。
この設備では、川崎重工業のBXシリーズやBXPシリーズが多く使われています。
自動車ボデーの最終工程であるメインボデーの溶接工程では、ライン上を流れる部品を多数のロボットで溶接します。
また、自動車ボデーを構成する小さい部品に関しては、ラインではなくセル内で数台のロボットが溶接します。
導入事例② 精密機械部品のピン圧入作業自動化
産業用ロボットや医療機器、航空機、原子力プラント向けの精密加工部品を加工する株式会社田中鉄鋼所では、アルミブロックに平行ピンを圧入する工程に川崎重工の協働ロボットであるduAroが導入されています。
ピンのセット、ピンの圧入、その後の検査までduAroが担っています。
単調な連続作業であることからヒューマンエラーが発生しやすい工程でしたが、duAroを導入したことで、圧力不足や挿入不良を100%無くすことに成功しました。
導入事例③ 大型鋼構造物用溶接ロボットシステム
川崎重工のグループ会社である川重ファシリテック株式会社では、生産設備のメンテナンス・検査事業のほか、ロボット設備や各種生産・組立設備の設計・製作を行っています。
川重ファシリテックの大型鋼構造物用溶接ロボットシステムは、ロボットと走行装置、昇降装置、ポジショナ等を組み合わせた設備になっており、ロボットには川崎重工製のアーク溶接用ロボットのRAシリーズが活用されています。
川崎重工のサポート体制
システムアップ・メインテナンス・アフターサービスの専門会社としてカワサキロボットサービス株式会社があります。
ロボットスクールを主催しており、受講者の目的・レベルに応じて、川崎重工製ロボットの使い方をレクチャーします。また、24時間ヘルプデスクを設けており、夜間に発生したトラブルにも対応可能です。
カワサキロボットサービスは、東北・関東・中部・関西・中国・九州地方の全13か所に拠点があり、海外ではアジア・米国・欧州でもサポートを行なっています。
まとめ
今回は川崎重工のロボットについてご紹介しました。自動車メーカーに始まり、近年では半導体や医療など、川崎重工のロボットは幅広い分野で活躍しています。
多彩なラインナップと自動化の経験・知見をもって、多くの製造工程の自動化に貢献してきました。導入前のロボットスクールやトラブル対応など、サポート体制も充実しています。