産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.04.30

双腕の協働ロボットには2種類ある|それぞれの特徴や用途を紹介

産業用ロボットには、人間と作業を一緒に行う協働ロボットというタイプや、人間のように二つの腕を持つ双腕ロボットというタイプがあります。今回は、双腕ロボットの種類やそれぞれの特徴、導入で解決できる課題などを具体的に解説します。

この記事の結論

・人との作業を前提とした協働ロボットのなかで、最近注目を集めているのが2本のアームを持つ双腕ロボット
・双腕ロボットのうち「ヒト型双腕協働ロボット」は人と同じような立体的な作業が特徴
・双腕ロボットのうち「スカラ型双腕協働ロボット」は省スペースで水平方向の作業が特徴

双腕ロボットと協働ロボットの概要

最近は人と同じラインで作業ができる「協働ロボット」の開発が活発に行われ、その中の一種である双腕ロボットも注目を集めています。

双腕ロボットと協働ロボットの概要を解説していきます。

双腕ロボットとは

双腕ロボットとは、産業ロボットの種類の1つで、2本のアームがついている産業ロボットの総称を指します。

2013年12月の産業用ロボットの導入規制緩和により、ロボットとの接触による危険が少ないなどの環境条件であれば、人との協働作業を認可するという法律に改正されました。これによって人との協働作業に重点を置いたロボットの開発がさらに進みました。

こうして誕生した産業用ロボットが、2対の腕を持つ「双腕ロボット」です。構造は、先端のチャッキング部分(エンドエフェクタ)とそれを動かすためのリンク機構により構成されています。

双腕ロボットはこの構造により旋回運動、前後運動、上下運動、回転運動の4つの動作が可能です。

人と同じほどの作業スペースで、人がこれまで行っていたような繊細かつ複雑な動きを得意としています。片方の腕で作業をこなし、もう1本の腕でワークを支えるなど、作業の安定化を助けます。

通常は一つの作業しか担当できないロボットが主流ですが、双腕を巧みに操ることで、数多くの作業を1台でこなせるのが特徴です。

協働ロボットとは

協働ロボットとは、従来型の人の代わりに作業するロボットから「人と共に作業するロボット」のために開発された産業用ロボットです。

これまでの産業ロボットは、自動車や機械製造など、比較的規模の大きい製造ラインで柵で囲い、安全を確保するため人の作業と分離した状況で固定的に使われてきました。そのため繰り返しの単純作業には向いていても、状況に応じて変種変量に柔軟に対応する必要がある食品製造業などの現場には不向きでした。

その後技術革新とともにロボットの小型化が進んできました。また法規制の緩和により、安全柵なしでの人とロボットの共同作業が可能となり、産業ロボットのジャンルの中で、人との共同作業を前提とした協働ロボットが続々と誕生してきました。

小型化、軽量化、ティーチングの容易さなど、協働ロボットの特性による相乗効果により、価格のハードルも下がりました。今までロボットの導入が難しかった中小製造業でも、人と協働してさまざまな作業ができるようになりました。

双腕ロボットには2種類ある

双腕ロボットにはヒト型とスカラ型の2種類が存在します。特徴や解決できる課題について解説します。

ヒト型双腕協働ロボット

ヒト型双腕協働ロボットとは垂直多関節ロボットとも呼ばれ、一般的には人間の腕に近い構造となっています。

特徴

ヒト型双腕協働ロボットは、まさにヒト型の造形をしています。人間で言う腰のあたりにも関節を持ち、前かがみの姿勢を取ることができます。

双腕型のため両手を駆使して、従来の垂直多関節ロボットよりも複雑な組み立て作業ができるのが特徴です。また可搬質量が大きいため、金属部品も扱うことができます。

動きの自由度が高い分、動作を入力するティーチングが難しくはなる点は課題といわれています。しかし技術革新とともに、作業者の負担を軽くするために直感的に扱える専用のソフトウエアも開発が進んでいます。

解決できる課題

ヒト型双腕協働ロボットは自由に動かせる関節が多いため、立体的な作業に向いています。

双腕部分は人間の腕の構造に似た設計をしているため、人間の代替作業をさせるロボットとして合理的な形になっています。

また稼働範囲に比べて設置面積が少ないため、工場現場などでレイアウトしやすく、水平多関節ロボットと比較し上下方向の動作範囲の全てに手先が届く事が特徴です。

従来、仕分け・箱詰め作業 など細かくて複雑な作業は、ロボットによる自動化が難しく、人が作業しなくてはならない課題を抱えていました。ヒト型双腕協働ロボットは複雑な現場であっても、人の作業の代替が担える存在として注目を浴びているのです。

スカラ型双腕協働ロボット

スカラ型双腕協働ロボットは、水平多関節ロボットとも呼ばれ、水平方向の作業に適した構造になっています。

特徴

スカラ(SCARA)とはSelective Compliance Assembly Robot Armの略です。スカラ型双腕協働ロボットは、平坦な人作業の置換えのために開発されました。

スカラ型ロボットの双腕に旋回する腰軸を加えることで、部品などを持った腕の姿勢を維持したまま、腰軸で姿勢を変えることができる構造となっています。このため同じ型で複数の場所へのアクセスが安定的に行えることが特徴です。

名前の通り、水平方向の動きに特化したロボットで、関節の回転軸が全て垂直に揃っています。高速に移動して平面上の位置を決めてから、先端部を上下に動かす仕組みになっており、平面的な作業に向いています。

解決できる課題

スカラ型双腕協働ロボットは他の産業用ロボットと比べると小型な造りです。広いスペースを確保しなくても導入できるため、製造現場の限られたスペースを有効に活用しつつ生産性を高めることが可能です。

一般的には作業工程が一方向の半導体ウエハの搬送や、基板など起訴部品の組み立てなどで幅広く利用されています。またスカラ型双腕協働ロボットは他の産業用ロボットに比べて構造が単純なため、制御がしやすくなっています。その分、価格も他の大型ロボットと比べて安価です。

ロボットの運用パワーや導入コストが課題だった中小企業においても、スカラ型双腕協働ロボットは注目を浴びる存在です。

まとめ

製造業では業種を問わず、人手不足の課題を抱えています。今までは人の作業の代表格であった少量・多品種の生産工程においても自動化の要求が高まっており、産業用ロボットの需要が高まっています。

これまでの重量型ロボットと異なり、人と協働ができる双腕ロボットは、多くの製造業の課題を解決する存在として注目されています。人と同じ作業スペースに設置できる双腕ロボットは、人とロボットが共存する先駆けの存在となるでしょう。

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