産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.05.22

NC旋盤とは?どんな加工が出来るか・加工の種類や導入コストを解説!

NC旋盤とは?どんな加工が出来るか・加工の種類や導入コストを解説!

NC旋盤は主に、鉄・銅・アルミ・ステンレスといった金属を加工するために使われる工作機械です。シャフトやボルト、コネクタなどの金属を削って作る機械部品の生産に欠かせないものであり、自動車や産業用ロボットにはNC旋盤で作られた製品が数多く使われています。

この記事では、NC旋盤の特徴からNC旋盤を使うメリットとデメリット、NC旋盤とCNC旋盤の違い、さらにNC旋盤で行える加工の種類について解説します。

NC旋盤とは

NC旋盤とは

NC旋盤とは、NC(Numerical Control)装置が搭載されている旋盤のことです。

旋盤とは、加工したい素材を高速で回転させながら加工用の刃物(バイト)を当てて削り、さまざまな形状の部品を作る機械を指します。人間が手作業で加工を行う旋盤が「汎用旋盤」または「普通旋盤」と呼ばれているのに対し、自動制御による加工ができる旋盤が「NC旋盤」と呼ばれています。

従来からある汎用旋盤を扱うには高い技術が必要で、専門のスキルを身につけた職人が目で見ながら工具を動かし、細かな調整をしつつ手作業で加工を行っていました。一方でNC旋盤では工程が自動化されているため、熟練の技術者でなくても一定の精度で製品を作れることが大きな特徴になります。

NC旋盤で加工するメリット

NC旋盤で加工するメリット

さまざまな形状の精密部品を作り出すNC旋盤は、金属加工の現場に必要不可欠な工作機械であり、ものづくりや産業を縁の下で支える存在といっても過言ではないでしょう。NC旋盤で加工するメリットについて解説します。

自動加工ができる

NC旋盤の大きな特徴は、従来は手動で行っていた加工工程を自動化できることです。汎用旋盤のように職人がつきっきりで作業する必要がなく、生産効率の向上につながるうえ、生産現場の省人化によって人手不足の解消にも一役買います。さらに、マニュアルが確立されているので、ある程度使いこなせるようになるまでの時間が比較的短い点も大きいでしょう。

高精度の加工が出来る

NC旋盤では自動制御による精密な加工が可能です。そのため高い精度が求められる加工や、複雑な形状の加工に向いています。手動で加工を行う汎用旋盤の場合、職人が微調節しながら1つひとつ加工していくため作業担当者によってバラツキが出ることが、現場の課題となっていました。一方でNC旋盤では、個人の技術に依存しない高精度の加工ができるのがメリットです。

量産化が出来る

高精度かつ連続した加工ができるのもNC旋盤がすぐれている点です。人間が操作する汎用旋盤では、1つの部品を作るのに少なくない手間と時間がかかっていました。作業する人に疲労がたまれば精度が落ちたり作業が中断されたりもします。

加工工程が自動化されているNC旋盤は作業者への負担が少なく、効率的な大量生産が可能です。これにより、大量生産とコストダウンの両立が期待できます。

安全性が高い

人間が手作業で加工を行う汎用旋盤では、作業担当者が金属の切りくずでケガをしたり粉塵を吸い込んだりする危険性がありました。また、旋盤に巻き込まれたり挟まれたりする事故が起これば、大きなケガや命の危険にもつながります。

一方でNC旋盤は技術者が直接手で操作をする必要がなく、加工中に切りくずが飛んでくることもほぼないため、安全性が飛躍的に向上しています。

NC旋盤のデメリット

NC旋盤のデメリット

NC旋盤はメリットの多い工作機械ですが、デメリットも存在します。次に、NC旋盤のデメリットについても確認しておきましょう。

導入コストが高い

NC旋盤にはさまざまな機種が登場していますが、いずれもNC装置が搭載されている分、高額な導入コストは避けられません。設備投資にかかった資金を回収するためには、費用対効果を上げる計画、効率アップや生産性向上なども課題となってくるでしょう。

また、汎用旋盤と比較すると構造が複雑化しているため、故障の頻度も上がる傾向があります。

最初の1つ目を加工するまでの手間がかかる

NC旋盤で加工を行うには、プログラムの作成や入力、工具や工作物の取り付け、刃物の位置補正などが必要で、実際に加工に取りかかるまでの段取りに手間や時間がかかります。もしも途中で間違いが発覚した場合は、再度プログラムの作成からやり直さなくてはなりません。このように汎用旋盤にはない段取りが発生するのがデメリットだといえるでしょう。

NC旋盤とCNC旋盤の違い

NC旋盤とCNC旋盤の違い

CNCとは「Computerized Numerical Control」の略で、CNC旋盤はプログラムによる数値制御が可能な旋盤のことです。

NC旋盤は、操作が比較的単純で大量生産に向いていますが、プログラムの修正が手作業で行われるため柔軟性が低いのが難点です。

一方CNC旋盤は、プログラムをコンピュータで制御することができます。CNC旋盤の方がプログラムの修正が簡単で柔軟性が高いため、自動化にも適しています。

ただし、プログラム制御が当たり前になった昨今では、NC旋盤とCNC旋盤は明確に使い分けられているというわけではなく、NC旋盤もCNC旋盤もまとめてNC旋盤と呼ばれています。

NC旋盤で出来る主な加工

NC旋盤で出来る主な加工

NC旋盤では汎用旋盤と同様の加工が可能です。加工したい素材を勢いよく回転させながら削るという性質上、円筒状の製品を作るのに向いているため、旋盤を使って作る製品は丸物と呼ばれることもあります。NC旋盤でできる主な加工について解説します。

外径加工

外径加工とは、工作物の外側に刃物を当てて外径を削る加工のことです。旋盤加工の中でもっとも基本的な加工の1つだといえるでしょう。硬い金属があっという間に削れていく様子は、野菜や果物の皮をむくシーンを連想させます。

元の素材から大まかな形を削り出したり、表面を美しく仕上げたりと、さまざまな場面で多用されています。

内径加工

内径加工とは、パイプのように円筒状になっている製品の内側を削る加工です。一般的にはまず穴あけ加工を施して刃物が入るサイズの穴をあけてから、穴の直径を広げていくように削っていきます。

切削しているところが見えない内径加工は難易度が高く、NC旋盤に任せることで効率アップや納期短縮につながる可能性があります。

穴あけ加工

穴あけ加工とは文字通り、素材にドリルで穴をあける加工です。旋盤を使うことで、決まった位置にまっすぐに穴をあけられます。

穴あけ加工ではまずセンタードリルで穴の位置を決め、その後ドリルで下穴をあけていきます。あけられる穴の大きさはドリルのサイズによってまちまちです。その後内径加工を施し、図面通りに仕上げていきます。

テーパー加工

テーパー加工とは角度を付けて素材の外径を削り、円錐状に加工することです。円錐とはだんだん細くなっていく形状のことで、道路に置かれている三角コーンの形をイメージすると分かりやすいでしょう。

旋盤を使ったテーパー加工では、刃物の当て方によってさまざまな角度を持つ製品を作ることができます。汎用旋盤では角度を計算したうえで加工する必要がありますが、NC旋盤ではプログラムで数値を指定するだけで加工が可能です。

溝加工

溝加工(溝入れ加工)とは素材の一部分を凹ませてさまざまな幅や深さの溝を入れる加工のことです。外径だけでなく、端面(素材の切り口)や内径に溝を入れる場合もあります。旋盤加工では、溝を入れる部分に対応した溝入れバイトと呼ばれる専用の刃物を使って行います。

突っ切り

突っ切りとは切断する加工のことです。一般的には旋盤で素材を加工したのちに、製品になる部分だけを切り落とすことを指します。突っ切りは加工の最終工程となることが多く、ここでミスやトラブルが発生すると製品が台なしになってしまうため注意が必要です。

加工のやり方自体は溝入れとほとんど同じで、最終的に切り落とすか落とさないかという点に違いがあります。

ねじ切り

ねじ切りとは、ねじのピッチ(ねじ山)を作るための加工です。旋盤では外側にねじ山がある雄ねじと、内側にねじ山がある雌ねじのどちらも作れます。ねじ切り加工では回転する素材に刃物を当てながら素材の位置をゆっくりと動かし、らせん状の溝を作っていきます。ねじ切りは汎用旋盤で加工すると時間がかかり非効率的ですが、NC旋盤であれば大量生産が可能です。

まとめ

まとめ

金属加工に使われるNC旋盤は、従来は職人が手で行っていたさまざまな加工を自動化できる工作機械です。プログラムによる精密な加工を連続して行えるため、高精度の部品を大量に生産することに向いています。また、手で操作する汎用旋盤よりも安全性が高く、加工中に作業者がつきっきりになる必要もありません。

NC旋盤で作り出された製品は、自動車や航空機、ロボットなど、ありとあらゆる機械に使用されています。世界中の工場で稼働しているNC旋盤は、現代の産業に欠かせない存在なのです。

関連記事