目次
協働ロボットは安全柵なしに人と一緒の場所で働くことができる産業用ロボットです。安全性を維持するためには、センサの存在が不可欠です。協働ロボットに使われているセンサの仕組みや種類について紹介いたします。
・協働ロボットには人を感知するセンサと速度を感知するセンサが組み込まれている
・協働ロボットのセンサが感知するとスピードの調整が行われる
・協働ロボットのセンサは内蔵されているものもあるが、外付け可能なものもある
協働ロボットに使われるセンサとは
協働ロボットには、安全性を確保するためにセンサが使用されています。センサとは英語「sensor」で、日本語では感知装置と訳すことが一般的です。協働ロボットに使われるセンサは以下の2つの種類に分類することができます。
- 人を感知するセンサ
- 速度を感知するセンサ
人を感知するセンサ
協働ロボットは人と同じ作業場で働くことができるロボットですが、人と接触することで事故が起こらないとは限りません。人との接触を避けるために、人が近づいてきたことを感知するセンサが取り付けられていることがあります。センサが人を感知すると、ロボットの頭脳に当たる部分が作業を止めたり作業速度を落としたりといった指令を出します。
速度を感知するセンサ
作業スピードが速すぎると、周囲の人が万が一触れたときにケガをしてしまう恐れがあります。そのような事故を防ぐ目的で、速度を感知するセンサが協働ロボットに取り付けられていることがあります。センサが一定以上のスピードを感知すると、ロボットの頭脳に当たる部分が作業スピードを一定以下に調整します。
協働ロボットに使われているセンサの仕組み
協働ロボットのセンサは、接触や接近、あるいは速度を感知します。感知してからロボットに起こる一連の流れについて見ていきましょう。
- ①接触や接近、一定速度の感知
- ②スピードの調整
- ③非接触や不在、一定速度未満であることの感知
- ④スピードの回復
①接触や接近、一定速度の感知
協働ロボットに接触したこと、あるいは接近したこと、一定速度に達したことなどをセンサで感知します。どの程度を「接近」とするかは、ロボットの可動域にもよります。可動域が広いロボットの場合はロボットから数メートル離れていても「接近」と判断します。
②スピードの調整
センサで接触や接近、一定速度を感知すると、ロボットの頭脳に当たる部分が作業を止めます。あるいはスピードを落とすといった反応をすることもあります。なお、センサで感知してもスピードを落として作業を続ける場合は、作業性が落ちないため、生産量にあまり影響を与えないというメリットがありますが、ケガや事故のリスクは減ってもゼロではないいう点に注意が必要です。
③非接触や不在、一定速度未満であることの感知
ロボットが停止した状態あるいは低スピードで作業をしている状態で、再びセンサが発動し、接触状態ではないこと、あるいは一定距離以上離れていること、一定速度未満であることを感知します。どの程度の距離を「離れている」とするかは、ロボットの可動域によります。可動域が広いロボットの場合は、数メートル離れていても、まだ接近状態にあると判断することがあります。
④スピードの回復
センサが接触していないことや接近していないこと、あるいは一定速度未満であることを感知すると、ロボットの頭脳に当たる部分が作業速度を元に戻します。しかし、すぐに元通りの作業速度にするのではなく、より安全性を高めるために、時間をかけて段階的に作業速度を上げていきます。
協働ロボットに使われるセンサの種類
協働ロボットに使われるセンサは、いずれも速度か接触・接近を感知するためのものです。しかし、取り付ける場所や感知する対象によっていくつか種類があります。主なセンサの種類を5つ紹介します。
- ロボット本体外付け型センサ
- ロボット本体内蔵型センサ(トルクセンサ)
- ロボット本体に後付けされたセンサ
- パレット型センサ
- 監視カメラ型センサ
ロボット本体外付け型センサ
ロボット本体の外側、例えばアーム部分や軸部分にセンサが取り付けられているものもあります。接触や接近といった外的要因を感知し、作業スピードを調整する際に用います。
なお、外付け型センサが取り付けられていないロボットに関しては、ロボットメーカーが想定する方法で利用するならば基本的には接触や接近を感知する必要がないと考えられます。例えば元々「3メートル以上の間隔を置いて協働ロボットを設置、もしくは安全柵を設置して人は近づかない」という風に設定されているロボットであれば、接近や接触の可能性が低いため、センサを取り付ける必要性も低いでしょう。
しかし、ロボットメーカーが想定する方法以外で利用するときには、センサで接触や接近を感知し、安全性を高める必要があります。その場合は、後で説明する後付けできるセンサを用い、協働する人々の安全を守ります。また、パレット型や監視カメラ型などのロボットとは別の場所に設置できるセンサも用い、安全性の向上を図りましょう。
ロボット本体内蔵型センサ(トルクセンサ)
ロボット本体、主に関節部分にセンサが内蔵されていることもあります。関節部に内蔵されているセンサは速度を感知するためのもので、一定速度以上になったときに作動し、作業スピードを調整する際に用いられます。速度感知専用で、なおかつ関節部分などロボットの構造内に組み込まれているセンサを「トルクセンサ」と呼ぶことがあります。
ロボット本体に後付けされたセンサ
センサがない協働ロボットにセンサを後付けすることもできます。例えば、作業場の関係上、協働ロボットで想定されているよりも頻繁に人が接触する場合などは、安全性を高めるためにセンサをアーム部分等に取り付けることができるでしょう。後付けされたセンサは接触や接近を感知し、作業スピードを調整する際に用いられます。
なお、後付けできるセンサにはさまざまな形状のものがありますが、後付けした後にロボットの操作性を低下させないように薄型のものが多いです。必要な場所にセンサを取り付け、協働する人々の安全向上に活用します。
パレット型センサ
パレット型センサとは、その名の通りパレット(平たい板状のもの)の形のセンサです。協働ロボットの近くに設置し、人が踏むことで感知します。人がパレット型センサを踏むということは、協働ロボットの近くに誰かが接近したということです。ロボットの頭脳に当たる部分にセンサが感知したという情報が流れ、作業スピードを徐々にゆっくりと変化したり、作業そのものをストップさせたりします。
監視カメラ型センサ
ロボットの周辺を画面に写し、監視カメラのように設置して作動させるセンサもあります。カメラに人が写ると感知し、作業スピードを調整します。監視カメラ型センサはパレット型センサと同様、後付けできるので、作業スペースが狭いなどの理由で後からセンサの必要性が生じたときも、すぐに配置して感知に備えることができます。
まとめ
協働ロボットは安全性を高めるために、接近や接触、あるいは速度が一定以上になることを感知するセンサが取り付けられていることがあります。内蔵型のものもありますが、外付け型のものや、パレット型、監視カメラ型のものもあります。ロボットの設置環境に合わせて必要なセンサを取り付け、協働する人々の安全性を高めていきましょう。