産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.05.15

ロボットビジョンによる制御技術の進化で、FA化の潮流が激変!

ロボットビジョンによる制御技術の進化で、FA化の潮流が激変!

近年、大きな発展が進む産業用ロボット技術。ロボットの制御方法でも、従来のティーチングに加え、ロボットビジョンシステムが広く利用されるようになってきました。

ロボット制御技術の導入は、FA化を可能にするとともに、人手不足の解消や生産効率化、品質向上など、さまざまなメリットをもたらす可能性を秘めているのです。

この記事では、代表的なロボット制御方法である「ティーチング」と「ロボットビジョンシステム」の特徴や作業過程、ロボット制御によるFA化のメリットについて解説します。

ロボット制御技術の基本と、ロボットビジョンシステムの革新性

ロボット制御技術の基本と、ロボットビジョンシステムの革新性

一般的に用いられているロボット制御技術には、ロボットの具体的な動きをプログラミングによって記憶させる「ティーチング」とカメラによる画像処理でロボットに対象物を認識させる「ロボットビジョンシステム」の2種類があります。それぞれの制御技術がもつ特徴やメリット、デメリットをみていきましょう。

ティーチング

「ティーチング」はプログラムを作成し、産業用ロボットに動きを教え込む制御方法です。

従来から行われてきた方法で、ティーチペンダントと呼ばれる操作機器を使用し、ロボットを実際に動かしながら動作を記録します。ロボットの動きは複雑で、頭の中やPC上だけでプログラムを作り上げるのは限界があるためです。

しかし、実際に現場のロボットを使用するのでラインを止めなければならず、生産ロスが発生してしまうほか、電源が入ったロボットの近くで作業することがあるため、接触事故の危険性もあります。

また、ティーチングを行う「ティーチングマン」には高度な技術が必要で、専門の資格教育から知識・経験の習得まで人材育成にコストがかかる点もデメリットの一つとされます。

ロボットビジョンシステム

「ロボットビジョンシステム」はロボットに搭載されたカメラの画像処理により対象物を認識させて動作内容を判断させる制御方法です。

ロボットビジョンは「マシンビジョン」とも呼ばれ、ロボットの「センサー(カメラ)」や「画像処理システム」などから構成され、人間の目の役割を果たします。

ロボットはセンサーの画像から周囲の空間や製品などの情報を認識し、アルゴリズム化することで、状況に応じた動きをロボットアームなどに伝え、ピッキングや製造といった制御を行います。

ロボット自身が判断するシステムのため、ティーチングのように人手や時間がかかりません。また、同時に複数の作業が可能で、多品種の製品でも識別して動作を変更できるため、製品整理が不要になるのもメリットです。

ロボットビジョンシステム、動作の仕組み

ロボットビジョンシステム、動作の仕組み

ロボットビジョンシステムの作業過程は「記憶」「認識」「処理」「作動」の4つの段階に分けられます。

  1. 記憶
    カメラを使って対象となる製品等の画像を取り込み、画像処理システムで「形状」や「大きさ」「アームでつかむ部位」などを記憶します。
  2. 認識
    実際にラインを動かし、カメラで製品の「場所」や「向き」「傾き」などを認識・把握します。
  3. 処理
    事前に記憶した製品情報と作業プロセスをもとに、「製品のどこをつかむか」「つかんだ後はどこにもっていくか」などを特定します。
  4. 作動
    実際にロボットアームを動かして製品をつかみ、決められた場所にピッキング・搬送します。

ロボット制御技術によるFA化が、差し迫る難題を解決!?

ロボット制御技術によるFA化が、差し迫る難題を解決!

FA(Factory Automation:ファクトリー・オートメーション)とは、「工場の自動化」を意味する用語で、受注から生産、出荷まで工場における一連の生産過程を機械やロボット、情報技術などを利用して自動化するシステムです。
FAにより解決への期待が高まっているのが、近年の製造現場で進む人手不足の深刻化です。
少子高齢化による労働人口減少や人件費上昇などが原因で、製造業を中心に必要な人員や高度な技能を持つ人材などの不足が問題化しており、生産性低下や企業の競争力悪化が危惧されています。
FA化なら、人手不足解消はもちろん、ほかにもさまざまな成果を実現可能です。続いては、FA化で人手不足が解消する理由や多様なメリットを解説します。

FA化がもたらす3大メリット

FA化がもたらす3大メリット

FA化の実現がもたらすメリットには、大きく以下の3つがあります。それぞれを詳しくみていきましょう。

人手不足の解消

省人化による人手不足の解消にはFA化の存在が欠かせません。従来はFA化といっても、主な作業は人が担い、機械やロボットは効率化など補助的な役割が中心でした。
しかし、近年では、AIやIoTなど新しい技術の導入が進んでFA化が大きな発展を遂げており、ロボットやセンサーが中心となって人間が補助に回るケースも増えています。作業に関わる人員も大幅な削減が可能となりました。
これまでのFA化は、作業者の負担を減らす「省力化」に焦点を当てていましたが、今後は、生産性を維持しながら作業者自体を減らす「省人化」が主流になっていくと考えられます。
FAで省人化が実現すれば、従来よりも少ない人数でラインを動かせるようになるため、労働力不足解消に大きな貢献が期待できるのです。

人件費や固定費を削減できる

FAを導入すれば、人件費や固定費などのコスト削減も可能です。
自動化で作業者が減れば、人件費などの人的コストも比例して低下させられます。最近では、中国や東南アジアの労働賃金も上昇傾向にあり、海外に生産拠点を移してもコストを削減できるとは限りません。
FA化なら、製造・検査などの作業効率も向上させるため、工場の稼働時間が従来よりも短縮可能で、電気料金などの固定費を圧縮する効果も期待できます。
FAは、コストを最小化するとともに、生産効率は最大化でき、人件費や固定費などの影響を受けずに収益性の維持が可能です。また、作業人員が減って余剰になった人材を他の部署に回せば、企業全体のさらなる生産性向上にもつながるでしょう。

高品質を維持できる

FA化を進めると、人為的ミスや作業者の能力による品質のバラツキが減るため、高品質を維持できるようになります。
ロボットや機械が製造の中心になれば、人の手による作業から起きるさまざまな問題が解消され、作業の標準化と品質の安定化が期待できるのです。
特に、日本の製造業はベテラン技術者への依存度が高く、今後は少子高齢化により、技術者不足や技術の継承問題が予想されます。品質低下や出荷遅れによる企業の信頼低下を防ぐためにも、FA化による品質維持が重要といえるでしょう。

まとめ

まとめ

ロボット制御技術は、時々刻々と進歩しており、最近では、これまで一般的だったティーチングに加えて、ロボットビジョンシステムにも注目が集まっています。
ロボットビジョンシステムなら、ティーチングのように人手や時間がかからず、多品種少量生産や複数の作業にも対応可能です。ロボット制御の導入によって製造現場のFA化も可能になり、人手不足の解消やコスト削減、品質の安定化など、多くのメリットが期待できます。
産業用ロボットは、今後、製造現場をはじめとするさまざまなシーンで欠かせない存在になると考えられます。もし、あなたの会社が、生産の効率化やFAの実現を目指したい、あるいは人手不足や技術者確保、固定費上昇などに頭を悩ませているとしたら、ロボット制御技術の導入が有力な解決策の一つとなるかもしれません。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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