目次
食品業界や医薬品業界でも使われているパラレルリンクロボット。導入することで生産性の向上が実現できますが、導入目的を間違えると損失に繋がりかねません。そこで今回は、パラレルリンクデメリットと導入で失敗しないために気を付けるべきことについて見ていきましょう。
・パラレルリンクロボットは用途が限られるなどのデメリットがある
・事前にパラレルリンクロボットの導入目的をはっきりとさせておくことが大切
・パラレルリンクロボットの導入に失敗しないためにもシステムインテグレータとのコミュニケーションが重要
パラレルリンクロボットのデメリット
パラレルリンクロボットは高速・高精度での作業が可能というメリットがありますが、デメリットも少なくありません。以下のようなデメリットがあるので詳しく紹介していきます。
- 用途に限りがある
- 重量物は持てない
- 作業範囲が制限される
- パラレルリンクロボットを扱える人材が必要
- トラブルが発生する可能性がある
- 初期費用が高額
用途に限りがある
パラレルリンクロボットは用途が限られています。一般的に以下のことしか可能ではありません。
- 製品の運搬
- 仕分け作業
- 配列
- 組立
- 簡単な金属加工
このため、複雑な加工や溶接などはできません。用途によって使用できない場合があるので注意してください。
重量物は持てない
パラレルリンクロボットは重量物を持つことができません。人の作業を代わりに行えるような仕様になっているため、運ぶことができる重量は限られています。
機種によって可搬質量は異なりますが、一般的には1kg~10kgとなっています。そのため、軽量の製品を扱う場合のみ、パラレルリンクロボットの導入を検討してください。
作業範囲が制限される
パラレルリンクロボットはリンク長さや数、ボールジョイントの可動領域によって作業範囲が制限されます。そのため、可動領域外にワークがあった場合、ロボットは作業を行うことができません。
あらかじめどれくらいの規模の生産ラインを構築するか考慮しておく必要があります。
パラレルリンクロボットを扱える人材が必要
パラレルリンクロボットの操作や検査を行う場合、法律上資格が必要です。そのため、資格を所持している作業者が必要となります。
資格を取るにはコストが発生しますし、取得しても的確な操作ができるようになるには時間が必要です。長期的に人材育成を行っていくことが求められます。
トラブルが発生する可能性がある
パラレルリンクロボットだけの話ではありませんが、ロボットはトラブルが発生した場合、生産ラインを停めなければならない可能性があります。
頻繁にトラブルが発生すると、生産が遅れて納期に間に合わなくなる場合も出るかもしれません。そのため、トラブルを減らすためにも、日々のメンテナンスや点検が重要ですが、工数が発生してしまいます。
初期費用が高額
パラレルリンクロボットは初期費用が高額です。ロボット本体のみであれば、100万~400万円程度で購入できますが、ロボット以外にもベルトコンベアや架台、エンドエフェクタなどの装置を購入する必要があります。
また、ロボットの導入はシステムインテグレータがサポートするためシステムインテグレータ会社に対しても支払わなければなりません。最終的に、ロボット本体の何倍もの費用がかかるため、非常に初期費用が高額になります。
パラレルリンクロボットの導入で失敗しないための要点
パラレルリンクロボットにはデメリットがあるため、導入の仕方を間違えると大きな損失になるかもしれません。そのため、導入に失敗しないための要点を紹介します。具体的には以下のようになります。
- 導入目的をはっきりとさせておく
- 価格・導入費用と効果が見合うか確認
- SIerと徹底したコミュニケーションを行う
- 稼働前にテストを行い、トラブルを対策しておく
- パラレルリンクロボットを操作できるよう人材を育成する
導入目的をはっきりとさせておく
導入する目的を把握しましょう。目的を明確にしておかないと、ロボットを選ぶときに不要な機能を追加したり、目的がずれて最適なロボットを導入できなくなってしまう可能性があります。
大きな損失につながる可能性もあるため、社内で導入する理由を話し合って決めることをおすすめします。
価格・導入費用と効果が見合うか確認
パラレルリンクロボットは高額のため、事前に費用対効果を検討してください。いつまでに投資額を回収できるか「回収期間」を計算しておくことをおすすめします。
SIerと徹底したコミュニケーションを行う
ロボット導入のための相談から生産ラインが稼働するまで、SIer(システムインテグレータ)と共同で作業を行います。そのため、あなたの工場で理想の生産ラインを構築するためにも、SIerとしっかりとコミュニケーションを行う必要があります。
少なくとも依頼前にどのような生産システムを構築したいか提案依頼書を作成しておくことがおすすめです。作成することで、SIerの提案が具体的になり、見積もりも正確になるため、円滑にロボットの導入を行うことができます。
稼働前にテストを行い、トラブルを対策しておく
稼働前にしっかりとテストを行い、事前にトラブルを見つけて対策しておくことが大切です。テストをしっかり行うことでどのようなトラブルが起きるかがわかります。
事前に解決できるものは対策を行うことで、稼働開始した時のトラブルを削減できます。
パラレルリンクロボットを操作できるよう人材を育成する
パラレルリンクロボットにトラブルが起きたとき、ロボットの検査をしたり、操作を行う場合が出てきます。そこで、ロボットを正確に扱える人材が必要です。
現在社内に扱える人がいない場合は、資格を所持している人を雇うか、社員にセミナーや講習会に参加してもらい、資格を取得してもらいましょう。
パラレルリンクロボットの活用事例
実際にパラレルリンクロボットを導入して効果が得られた企業の事例を見てみましょう。
経済産業省と一般社団法人日本ロボット工業会が発行した「ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2016」から導入事例を紹介します。
輸送機器用ギヤ部品のバリ取り工程にロボット導入|株式会社タツミ
株式会社タツミでは、輸送機器用のギヤ部品のバリ取り作業を人手で行っていました。しかしながら、人が行う場合、作業ミスもあり、不良率があがってしまいます。
そこで、サーボモーターとモーションコントローラを使用したパラレルリンクロボットを導入し、熟練作業者が行っている作業を自動化しました。これにより品質が安定するようになりました。
つみれのトレー詰め・袋詰め工程へのロボット導入|若女食品株式会社
若女食品株式会社ではつみれをトレーに詰める作業がありますが、従来手作業で行っていました。しかし、これでは多品種少量生産と繁忙期の増産に対応するのが難しいという問題があります。
解決方法として一番ボトルネックになっていた包装工程に4台のパラレルリンクロボットを導入します。結果、つみれのトレー詰め作業とポリ袋に詰める作業を自動化し、人員削減と生産性向上に成功しました。
まとめ
パラレルリンクロボットのデメリットと導入に失敗しないために必要なことについて紹介しました。ロボットの導入には、機能を把握して、目的に沿った作業を行えるかどうかを検討することが大切です。
また、生産ラインの稼働のためには、SIerの存在が欠かせません。理想の生産システム構築のためにも、まずはSIerに相談してみてはいかがでしょうか?