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いまや人材不足やコスト削減のために多くのメーカーで使われている産業用ロボット。
技術の発展によりさらなる生産自動化を行えるようになっており、今後も市場規模が拡大していくといわれています。
今回は、産業ロボットの市場規模が拡大する理由や業界ごとの用途について紹介していきます。
・国内のロボットの市場規模は2035年に約10兆円
・世界での産業用ロボットの出荷台数は2021年に51万台出荷されると予測
・協働ロボットの需要は2025年に2653億円に拡大
産業用ロボットは国内外で市場規模が拡大していく
産業用ロボットは今後国内外で市場規模が拡大していくと予測されています。
現在、あらゆるメーカーにおいて人材を確保することが難しくなっており、問題を解決していくためには生産ラインを自動化して作業要員を削減していくことが必要です。
他にも、生産の効率化や品質の向上も求められており、各メーカーが競合会社より多くの利益を得るためには産業用ロボットの導入が欠かせません。
現在でも多くの企業で産業用ロボットは使用されていますが、今後FA(ファクトリーオートメーション)やIoT、AIによって産業用ロボットの技術が高度化していき、さらなる効率化アップや品質の向上が可能です。
そのため、すでに産業用ロボットを導入している企業でも業務効率化のために新しく導入するため、市場規模が拡大していきます。
また、アジア諸国や中国の産業が発展していることから海外需要も増えています。産業用ロボットはさまざまな観点から市場規模が拡大していく見込みです。
産業用ロボットの国内の市場規模
国内の産業用ロボットの市場規模についてデータを見ながら今後どれだけ市場規模が増加するかを見てみましょう。
分野別の国内市場規模
上のグラフは経済産業省の「平成22年ロボット産業将来市場調査」に記載されていた分野別の国内市場規模について表しています。
日本国内のロボットの市場規模は2025年までに5.3兆円、2035年までに9.7兆円と2012年と比較して10倍程の市場規模になる見込みです。
2035年を見ると、分野別では医療系や福祉系などのサービスロボット分野が最も市場規模が大きいですが、製造分野が次に大きく、約2.7兆円の市場規模が見込めると予測しています。
受注・生産・出荷状況
日本ロボット工業会の発表した産業用ロボットの受注・生産・出荷額の推移についてのグラフです。
国内の受注額を見ると2020年10-12月期に四半期では過去最高の受注額になったことがわかりました。
2019年に米中貿易摩擦、2020年はコロナウイルスによる影響で産業用ロボットへの投資は停滞していましたが、2020年10-12月期アジアや中国向けの電子部品実装用のロボットが牽引したことで受注額が大きく増えました。
今後も経済への大打撃になる出来事が起きなければ、受注額はさらに増加していくと見られます。
産業用ロボットの世界の市場規模
産業用ロボットの世界の市場規模も拡大すると言われていますが、どのようなデータがあるか詳しく見ていきましょう。
世界全体の市場規模
世界全体の市場規模について下記のデータを参考にして見ていきましょう。
- 台数の市場規模推移
- 金額の市場規模推移
台数の市場規模推移
上のグラフは国際ロボット連盟(IFR)が発表した「World Robotics: Industrial Robots 2017」という報告書に記載されていた、世界の産業用ロボットの販売台数のデータです。
産業用ロボットの世界販売台数は、毎年平均14%ずつ増加しており、2017年に世界の産業用ロボットの出荷台数は過去最高となる381万台を記録しました。2021年には630万台出荷されると予測されています。
金額の市場規模推移
製造業向けロボットの世界市場 | 2019年 | 2025年予測 | 比率 |
溶接・塗装系 | 3408億円 | 6527億円 | 191.5% |
アクチュエーター系 | 514億円 | 1217億円 | 2.4倍 |
組立・搬送系 | 789億円 | 2335億円 | 3.0倍 |
合 計 | 1兆 174億円 | 2兆 2727億円 | 2.2倍 |
富士経済によると、産業用ロボットの世界市場は2019年に1兆174億円に達していることがわかりました。また、2025年の予測では2兆2727億円という市場規模になるといわれており、拡大していくことがわかります。
特にスマートフォンや半導体関連の需要が見込まれることから、クリーン搬送系が3倍伸びると予測しています。
地域・国別の市場規模
地域別・国別の市場規模も詳しく見ていきましょう。
- 地域別の内訳
- 上位15か国の稼働台数
- 国別の産業用ロボットと作業員の比率
地域別の内訳
地域別の産業用ロボット市場についてのグラフです。産業用ロボット市場は、世界的に増加傾向にありますが、地域別に見るとアジアで稼働台数が増加していることがわかります。
上位15か国の稼働台数
稼働台数は中国が増加しており、日本に次ぐ世界第2位になっています。米国、韓国、ドイツが時点で稼働台数が多いです。一方、欧米諸国やBRICsの一部では稼働台数が少なくこれからの需要が見込めます。
国別の産業用ロボットと作業員の比率
各国の工場労働者1万人あたりのロボット稼働台数について表しています。数値が多いほど産業用ロボットの導入が進んでいることがわかります。
産業用ロボットの稼働台数世界2位の中国が他の国よりも数値が低いため、中国への産業用ロボット供給にはまだまだ余地があるということがわかりました。
産業用ロボットの市場規模を拡大させている業界
産業用ロボットの市場規模が拡大しているのは、さまざまな業界がコスト削減のために必要としているからです。ここでは、具体的な業界とその用途について紹介します。
- 自動車業界
- 半導体などの電子デバイス業界
- 家電などの電気電子業界
- 精密機械業界
- 物流業界
- 食品業界
自動車業界
自動車業界では、自動車の組立や溶接、塗装などが産業用ロボットの主な用途です。生産ラインにおけるFA化もより増加していることから、まだまだ自動車業界の需要は見込めます。
24時間体制で量産でき、高品質、コスト削減や生産率の向上に繋がります。高温や粉じんなど作業者の健康や体力の負荷に関わるような環境での作業も対応できるため、自動化のニーズは高いです。
半導体などの電子デバイス業界
電子デバイス業界は半導体の小型化技術が日々進んでいます。
それに伴い、大量生産によるコスト低減や半導体の高性能化において、産業用ロボットが欠かせません。クリーンルーム系や搬送系のロボットがニーズとしてあります。
家電などの電気電子業界
電気電子業界では電気・電子部品の製造プロセスにおいて半導体チップの生産や家電製品の組立、はんだ付けなどさまざまな生産工程で使用されています。
精密機械業界
医療機器や測定機器などの精密機械などにも産業用ロボットが使われています。小さい部品のピッキング、組立が主な用途です。位置精度が高く高速で作業できるパラレルリンクロボットの需要があります。
物流業界
物流業界ではピッキングロボットの需要が増加しています。人の代わりにロボットが物を運搬することで人件費削減や業務の効率化を行うことができるため、自動化が求められています。
食品業界
仕分け作業や検査の作業で産業用ロボットを導入しています。箱詰めや温度測定、衛生面の検査が自動化されてコスト削減が行われています。
今後市場規模が大きくなる協働ロボット
今後市場規模が大きくなるロボットとして、人と同じ環境で働くことができるロボット「協働ロボット」の需要が伸びると言われています。
富士経済研究所の調査では協働ロボットの市場規模は2019年590億円でしたが、2025年には2653億円と、約4.5倍もの市場規模が拡大すると予測されています。
そのため、今後協働ロボットを導入する会社は増加していく見込みです。
まとめ
産業用ロボットの市場規模が国内だけでなく、中国やアジアを中心に海外も拡大していることがわかりました。
また、さまざまな業界のあらゆる企業が導入しており、コスト削減や利益増加を目指しています。あなたの会社でも導入を検討してみませんか?