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産業用ロボットを導入するには多大な費用がかかります。おおよその寿命を知っておくことで、買い替えの資金計画も立てやすくなるでしょう。この記事では産業用ロボットの寿命の目安や耐用年数について紹介します。また、寿命を延ばすコツについても説明するのでぜひ参考にしてください。
・産業用ロボットの寿命は、搭載モーターの規定時間を目安にできる
・耐用年数を寿命の目安にするならば、産業用ロボットの寿命は3~14年
・事後保全と予防保全で産業用ロボットの寿命を延ばすことができる
産業用ロボットの寿命の目安
産業用ロボットの寿命は、搭載されるモーターの規定時間を目安にすることができます。モーターの規定時間はロボットあるいは説明書に記載されているので、確認しておきましょう。
なお、規定時間は寿命そのものではなく保守点検をするべきタイミングのことです。しかし、規定時間が来た時点で部品等に摩耗や劣化が見られることがあるので、産業用ロボットの寿命の目安として考えることができます。
耐用年数から見る産業用ロボットの寿命の目安
固定資産税を求める際、産業用ロボットなどの動産は耐用年数から計算します。耐用年数とは、価値があると考えられる(=使える)年数のことなので、産業用ロボットの寿命の目安として考えることができるでしょう。
なお、産業用ロボットはその用途によって耐用年数が異なります。以下に紹介するので、寿命を予想するうえでの参考にしてください。
食品製造業用設備は10年
食品製造業用設備に該当する産業用ロボットの耐用年数は10年です。以下のものなどが含まれます。
- 食肉加工設備
- 砂糖精製設備
- 麺類製造設備
- 缶詰・瓶詰製造設備
- パン類・菓子類製造設備
飲料、タバコ、飼料製造業用設備は10年
飲料の製造を行う産業用ロボット、あるいはタバコや飼料を製造する産業用ロボットも、耐用年数は10年です。いくつかの例を紹介します。
- 荒茶製造設備
- 再製茶製造設備
- 清涼飲料製造設備
- 清酒、みりんその他果実酒製造設備
- 冷凍、冷蔵業用製造設備
- タバコ製造設備
- 配合肥料等製造設備
繊維工業用設備は3年か7年
繊維工業用設備は、炭素繊維製造設備の黒鉛化炉に関しては耐用年数は3年ですが、その他の設備は7年です。耐用年数が7年の設備には以下のものなどが含まれます。
- 生糸製造設備
- 紡績設備
- 不織布製造設備
- レーヨン糸製造設備
- 合成繊維製造設備
木材および木製品製造業用設備は8年
木材製造業用設備と木製品製造業用設備の耐用年数は8年です。ただし、木製家具を製造する設備は除きます。
- 製材業用設備
- チップ製造業用設備
- コルク製品製造設備
家具または装備品製造業用設備は11年
家具や装備品製造業用設備の耐用年数は11年です。具体的には以下のものなどが含まれます。
- 木製家具製造設備
- 石工品製造設備
- 金属製家具や建具の製造設備
パルプ、紙、紙加工品製造業用設備は12年
パルプや紙、紙加工品の製造業用設備の耐用年数は12年です。例えば以下のものなどがあります。
- パルプ製造設備
- 段ボール、段ボール箱製造設備
- 繊維板製造設備
印刷業または印刷関連業用設備は3~10年
印刷業や印刷関連業用設備は、種類によって細かく耐用年数が分かれています。もっとも耐用年数が短いのは新聞業用設備で、耐用年数は3年です。
- 新聞業用設備で、モノタイプ、写真または通信設備:3年
- デジタル印刷システム設備:4年
- 製本業用設備:7年
- その他設備:10年
化学工業用設備は4~8年
化学工業用設備の耐用年数は4~8年です。塩化リン製造設備の耐用年数は4年と短いですが、以下で紹介している通り、ほとんどの設備は5年ないしは8年です。
- 塩化リン製造設備:4年
- 臭素もしくはヨウ素化合物製造設備、活性炭製造設備、半導体用フォトレジスト製造設備、ゼラチンまたはにかわ製造設備、フラットパネル用カラーフィルター、偏光板または偏光板用フィルム製造設備:5年
- その他設備:8年
鉄鋼業用設備は5~14年
鉄鋼業用設備も、設備によって耐用年数が異なります。表面処理用鋼材などは5年ですが、純鉄管製造業用設備は9年、また、多くの設備は14年と長く設定されています。
- 表面処理鋼材若しくは鉄粉製造業又は鉄スクラップ加工処理業用設備:5年
- 純鉄、原鉄、ベースメタル、フェロアロイ、鉄素形材又は鋳鉄管製造業用設備:9年
- その他設備:14年
非鉄金属製造業用設備は7年か11年
非鉄金属製造業用設備の耐用年数は、基本的には7年です。ただし、核燃料物質加工設備に関しては耐用年数は11年と長く設定されています。
金属製品製造業用設備は6年か10年
金属製品製造業用設備の中でも、金属被覆及び彫刻業又は打はく及び金属製ネームプレート製造業用設備の耐用年数は6年です。その他の産業用ロボット等の設備の耐用年数は10年です。
生産用機械器具は6年か12年
生産用機械器具の中で、金属加工機械製造設備の耐用年数は6年です。その他の生産用機械器具の耐用年数は12年です。なお、産業用ロボットを製造する設備はその他に含まれるので、耐用年数は12年です。
産業用ロボットの寿命を延ばすコツ
産業用ロボットの寿命を延ばすことはコスト削減にもつながります。少しでも長く使い続けるためには事後保全と予防保全の2つの保全を行うことが大切です。それぞれの保全において、ロボットの寿命を延ばすためにできるコツを紹介します。
事後保全
トラブルが起こってから保全活動を行うことを「事後保全」といいます。少しでも音や動きに違和感が生じたときは事後保全のタイミングと言えるのですが、操作性に問題がない場合は使い続けてしまうケースがあります。しかし、このような行為は産業用ロボットの状態を悪くするだけで、トラブルの深刻化を招く行為でもあります。異音がするなど、トラブルの予兆が見えるときは、すぐに電源を停止して修理専門の業者に依頼しましょう。
予防保全
産業用ロボットの状態に関わらず予防目的で保全活動を行うことを「予防保全」といいます。特に異音などの問題がなくても行うため、早期にトラブルに気付くことができます。しかし、問題がない場所にも保全活動を行うので、余計な時間や手間がかかってしまうこともあります。予防保全は、実施するタイミングによって以下の2つに分かれます。
- 時間基準保全
- 状態基準保全
時間基準保全
一定期間ごとに保全活動を実施することを「時間基準保全」といいます。3か月ごと、6か月ごとと期間を決めておくため、前もって業者に依頼しやすいです。
状態基準保全
劣化や異常のサインが見えたときに保全活動を実施することを「状態基準保全」といいます。サインが見えてから保全活動を行うため、時間基準保全よりは保全活動の回数が少なくて済むことが多く、また、不必要な部位には保全活動を行わないため無駄が少ないというメリットがあります。
しかし、こまめに産業用ロボットの状態をチェックしないと保全の基準を満たしているか分からないので、センシング技術等を活用した自動監視システムなどの導入も検討が必要です。
産業用ロボットの寿命が短くなる原因
同じ耐用年数の産業用ロボットであっても、使い方や設置環境によっては寿命が短くなることがあります。寿命を短くする原因を紹介するので、注意できる部分は注意していきましょう。
不具合を放置する
操作に問題がない不具合であったとしても、放置すると産業用ロボット全体の不具合につながることがあります。不具合は絶対に放置せず、定期的にメンテナンスを行うことで寿命を延ばしましょう。
使用頻度が高い
産業用ロボットは長時間連続稼働が可能ですが、あまりにも使用頻度が高いと寿命に影響を与えることがあります。ロボットの寿命を長くするためにも、1日の稼働時間を制限することもできるでしょう。
有寿命の消耗品を交換しない
部品それぞれにも寿命があります。有寿命の消耗品を交換しないで使い続けると、ロボット全体の寿命が短くなります。正しいタイミングで消耗品を交換しましょう。
高湿度環境で使用する
湿度が高いとサビの発生、金属部品の劣化につながります。産業用ロボットを長持ちさせるためにも、工場内の湿度管理を行いましょう。
まとめ
産業用ロボットの寿命は、モーターの規定時間や法的な耐用年数から予想することができます。寿命を少しでも長くするためにはこまめな保全活動が大切なので、定期的に業者に依頼して不具合を早期発見するようにしましょう。