目次
産業用ロボットのIoT化が求められています。なぜ産業用ロボットをIoT化する必要があるのか、また、IoT化する際にどのような問題点があるのか詳しく解説します。また、実際にIoT化するための手順についても見ていきましょう。
・産業用ロボットをIoT化することで汎用性を与え、稼働率を高めることが可能
・IoT化にはネットワークとクラウド、IoTデバイスが必要
・産業用ロボットのIoT化は計画・デバイスとネットワークの導入・試運転・運用とデータ収集の4つのステップで進めていく
産業用ロボットでIoT化が推奨される理由
産業用ロボットは、それだけでも作業効率化が見込める優れたツールです。しかし、IoT化を進めることで、さらに産業用ロボットの可能性が広がります。特に次の5つの理由から、産業用ロボットのIoT化が推奨されています。
- 状況の変化に対して柔軟に対応できるようにするため
- 作業停止時間を短縮し、稼働率を高めるため
- 産業用ロボットに汎用性を与えるため
- 人との共同作業を実現するため
- 新旧の産業用ロボットを同時に稼働させるため
状況の変化に対して柔軟に対応できるようにするため
産業用ロボットはコントローラで動かすため、作業速度を変更する場合もコントローラで操作しなくてはいけません。前もって作業の変更が分かっているときには問題はありませんが、急に作業速度や稼働時間を変更するときは、コントローラの操作が煩雑になり対応が難しくなる恐れがあります。
産業用ロボットをIoT化しておけば、「今日中に生産量を500増やす」「供給過剰になっているため生産速度を落とす」などをインターネットで一元指令・管理できます。ロボットの稼働状況を見ながらコントローラで即時対応する必要がなくなるため、ロボットの管理にも余裕が生まれます。また、ロボット間だけでなく他工場や他部署ともインターネットでつながっていると、さらにシームレスな動きが可能になります。
作業停止時間を短縮し、稼働率を高めるため
一旦トラブルが生じると、産業用ロボットを停止して点検・修理が必要になります。場合によっては、工場全体の遅れにも発展しかねません。IoT化を進めるならば、1つのロボットにトラブルがあるときは他のロボットの生産速度を速めるなどの調整を自動的に行うことも可能です。全体的な作業停止時間を短縮し、稼働率を高めることができるでしょう。
産業用ロボットに汎用性を与えるため
基本的には産業用ロボットは一対一の命令体系になっているため、最初にプログラミングした内容の作業しか行えません。しかし、IoT化することで、ロボット自体の機能に合うことならばプログラミングしていない内容でも実行可能になります。産業用ロボットの汎用性を高めるためにも、IoT化が必要といえるでしょう。
人との共同作業を実現するため
IoT化によりロボットが接触を感知できるようになると、ロボットと人との共同作業が安全に実現します。特定の工程だけに産業用ロボットを導入する場合や、ひとつの工程の中でも人とロボットがそれぞれの得意分野に分ける必要がある場合などに役立つでしょう。
新旧の産業用ロボットを同時に稼働させるため
一気に工場のロボット化を進めない限り、どの工場でも新旧の産業用ロボットが入り混じっています。また、一気にロボット化した工場でも、ロボットごとに寿命は異なるため、新旧のロボットが入り混じることになるでしょう。年式が異なると一つのコントローラで操作できないこともありますが、IoT化をすることで、システムや命令系統が異なるロボットもインターネットを通して一元管理できるようになります。
産業用ロボットをIoT化するために必要なもの
産業用ロボットをIoT化するためには、以下の3つのものが欠かせません。
- ネットワーク
- クラウド
- IoTデバイス
ネットワーク
IoTを利用するにはインターネットを送信するネットワークシステムが必要です。近年では配線不要でインターネットを利用できる無線ネットワークが主流です。複数の産業用ロボットをシンプルにIoT化するためにも、IoTデバイスや操作範囲に合わせた無線ネットワークシステムを導入しましょう。
クラウド
大容量のサーバやストレージが必要なので、クラウドも準備しておくことが求められます。クラウドに利用状況や稼働状態を残し、分析すると、システム改善に役立つ情報を得ることが可能になります。
IoTデバイス
すでにIoTに対応している産業用ロボットであればインターネットにつなぐだけでIoT化が完成します。IoTに未対応な産業用ロボットをIoT化するためには、産業用ロボットをIoTデバイスと連携させる必要があります。
産業用ロボットをIoT化する際の問題点
IoT化することで産業用ロボットが扱いやすくなり、なおかつ稼働率の向上も見込めます。しかし、IoT化には以下のようなデメリットもあります。
- 多大な費用がかかる
- 操作スキルのある人材が必要
- インターネットセキュリティ対策が必要
多大な費用がかかる
IoT化には費用がかかります。また、インターネットに対応していない産業用ロボットをIoT化する場合は、各ロボットのシステムも変更しなくてはいけないため、さらに高額な費用が発生します。
操作スキルのある人材が必要
今まで製造を担当していたスタッフが急にコンピュータで操作することは難しいので、コンピュータを操作できるスキルを持つ人材が新たに必要になることがあります。また、メンテナンスや管理のスキルを保有する人材も必要になるケースもあります。
インターネットセキュリティ対策が必要
操作をインターネット経由で行うため、セキュリティ対策が必要です。大切な情報が漏洩したり、悪意あるスパイウェアが侵入したりする恐れがあります。
産業用ロボットをIoT化する手順
実際に産業用ロボットをIoT化する手順を紹介します。
- ①IoT導入の計画を立てる
- ②IoTデバイスやネットワークの導入
- ③試運転
- ④運用とデータ収集
1.IoT導入の計画を立てる
単にIoTさえ導入すればIoT化できるわけではありません。まずはIoTを導入してどのような工場を作りたいのか、綿密なプランを立てましょう。
2.IoTデバイスやネットワークの導入
プランにより必要だと判明したデバイスとネットワークを導入します。IoT非対応の産業用ロボットが多い場合、導入に時間と費用がかかることがあります。
3.試運転
導入したシステムを操作します。うまく動かない場合は調整が必要です。場合によってはプラン全体の見直しが必要になることもあるでしょう。
4.運用とデータ収集
試運転に成功した後は、システム稼働を開始します。稼働状況からデータを収集し、システム改善に役立てます。なおデータ収集は自動的に行われますが、フィードバックを読み解き、システム改善をするのは自動では行われません。導入の際に依頼した業者とも相談し、システム改善を進めていきましょう。
まとめ
産業用ロボットをIoT化することで、状況の変化に柔軟に対応できるだけでなく、稼働率を高め、生産性向上を目指せます。ぜひ産業用ロボットのシステムインテグレータ等に相談し、IoT化を進めていきましょう。