目次
通常、産業用ロボットには「コントローラ(controller)」が欠かせません。コントローラは言わばロボットの司令塔であり、ロボットの動きを決定します。コントローラの役割やコントローラへの命令方法、種類について見ていきましょう。
・産業用ロボットのコントローラとは、ロボットを操作する機械のこと
・コントローラを使ってセットアップや加減速度設定、ゾーン制御、拡張機能の利用を実施可能
・コントローラへの命令はプログラム入力やポイントトレース、リモートコマンド、オンライン命令、パルス列で実施
産業用ロボットのコントローラとは
産業用ロボットコントローラとは、産業用ロボットを操作する機械のことです。テレビや家電などのリモコン(リモートコントローラ)をイメージすると分かりやすいでしょう。
なお、産業用ロボットはマニピュレータとコントローラ、ティーチペンダントの3つの部分で構成されています。マニピュレータとはロボット本体のことで、操作するコントローラとマニピュレータの動作設定を行うティーチペンダントがなしには作動できません。
産業用ロボットのコントローラの役割
産業用ロボットコントローラの役割は主に以下の4つです。
- パラメータ設定(セットアップ機能)
- 加減速度設定
- ゾーン制御
- 拡張機能
パラメータ設定(セットアップ機能)
産業用ロボットの操作に必要なパラメータは、通常、コントローラを用いて設定します。予めコントローラ側に最適値が入力されているものを使えば、初心者でもパラメータ設定が簡単に行えます。
産業用ロボットを使い始めるときのセットアップも、コントローラを用いて行います。コントローラの中にはセットアップとパラメータ設定が自動で行えるのもあります。
加減速度設定
加速度が高すぎると、ロボットの寿命を短くする原因になりかねません。また、モーターのトラブルを招くことにもなります。加減速度をコントローラで制御して、作業効率とロボットの寿命のバランスを取ります。
ゾーン制御
最適な加速度を自動で設定する機能(ゾーン制御機能)が搭載されているコントローラもあります。ロボットのパワーを最大限に引き出しつつ、加速度が高くなりすぎないように制御できるので、作業効率とロボットの寿命のバランスを重視したい方向けです。
拡張機能
イーサネットやCC-Linkなどのネットワークを利用して、コントローラ経由で複数の産業用ロボットを連携させることもできます。多軸コントローラなら利用可能なポイント数やプログラム数も多いので、ロボットの連携と機能拡張がしやすくなります。
産業用ロボットのコントローラへの命令方法
コントローラで産業用ロボットに指令を出すためには、コントローラ自体に命令をする必要があります。命令方法は主に次の5通りです。
- プログラム入力
- ポイントトレース
- リモートコマンド
- オンライン命令
- パルス列
プログラム入力
産業用ロボットのコントローラへの命令をプログラム入力で行う場合、簡単なBASICから独自言語まで利用できる言語がコントローラによって異なります。プログラムを入力することで、コントローラに作業内容や速度などの細かな指令を覚えさせます。なお、多軸コントローラを利用する場合は、演算や変数設定などの自由度が高く、指令できる内容も多様です。
ポイントトレース
ポイントトレースとは、ポイントに番号を振り、バイナリーで指定する命令方法です。プログラム不要で使用できるので、プログラミングに明るくない方でも利用可能です。ただし、事前にポイントごとの操作をティーチングする必要あるため、その過程においてはプログラミングの素養が必要です。
リモートコマンド
リモートコマンドとは、CC-Linkなどのワード機能を使って、コマンドやデータ発効を実行することです。リモートコマンドを使えば複雑な機能も指令できるので、ロボット自体が複雑な機能を備えているときにも利用できます。
なお、リモートコマンドとポイントトレースのどちらの命令方法でも対応可能なコントローラがありますが、コントローラで操作するロボットの機能が多彩なときはリモートコマンド、機能がシンプルでポイント数が少ないときはポイントトレースを選ぶことができます。手間や適・不適によってコントローラの命令方法を選びましょう。
オンライン命令
コントローラ上での動作指令は、慣れないと手間がかかり、簡単なコマンドでも膨大な時間がかかってしまうことがあります。コントローラに命令する内容が複雑なときは、イーサネットなどを介して、パソコンから直接コントローラに指令を出すオンライン命令がおすすめです。使い慣れたパソコン操作なので、初めての場合でも対応しやすいでしょう。また、複雑な指令も出せるので上位機種のロボットにも対応します。
パルス列
位置決めユニットを通してパルス列によりコントローラに指令を出す方法もあります。コントローラ側でプログラムする必要がないため、小型の機種などでも利用しやすいです。また、パルス列による指令に対応しているコントローラは多いため、覚えておきたい方法といえるでしょう。
産業用ロボットのコントローラの種類
産業用ロボットコントローラは、大きく単軸コントローラと多軸コントローラに分けられます。
- 単軸コントローラ
- 多軸コントローラ
単軸コントローラ
単軸コントローラは、プログラム入力やポイントトレース、オンライン命令など、ほとんどの命令方法で設定可能なコントローラです。ポイント数は1,000程度なので、複雑な機能を持つ産業用ロボットを操作するときには向きません。また、複数のロボットを連携させるときにも、ポイント数や操作バリエーションの少なさが引っかかることがあるでしょう。
なお単軸コントローラは、入力電源が200Vや24Vなどの海外対応型もあります。海外の工場で産業用ロボットを導入する場合には、変圧機不要で利用できる単軸コントローラが向いていることもあります。
多軸コントローラ
多軸コントローラは、プログラム入力とリモートコマンド、オンライン命令で設定可能なコントローラです。基本的に複雑な指令を行うロボットと組み合わせるため、ポイントトレースやパルス列といったシンプルな機能の指令に用いることが多い命令方法には対応していないことが多いです。
ポイント数は10,000程度なので、複雑なコマンドを指定するときや複数のロボットを組み合わせるときにも十分対応できるでしょう。また、多軸コントローラの中には2軸を同時制御するデュアルドライブ機能に対応しているものもあり、複数のロボットを連携操作する際の操作性が高くなります。
まとめ
産業用ロボットの動きを指令するのがコントローラで、利用する前にはポイントトレースやリモートコマンド、オンライン命令などの方法を利用してコントローラに操作方法を命令する必要があります。それぞれの命令方法の特徴を抑え、操作する産業用ロボットに合うコントローラを選ぶようにしましょう。