産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.28

産業用ロボットアームの仕組みと種類・用途を徹底解説

産業用ロボットアームはさまざまな部品で構成されており、使われている部品や機構によってロボットの種類が異なります。種類ごとにそれぞれ適した用途があり多種多様な場面で使用されています。

今回は産業用ロボットアームの種類や用途について紹介しますので最後までお読みください。

この記事の結論

・産業用ロボットのアームはジョイントとリンクで構成されている
・産業用ロボットはさまざまな種類があり、それぞれ特化した用途がある
・産業用ロボットの先端に取り付ける機器(エンドエフェクタ)は自由に取り換えられる

産業用ロボットのアームはジョイントとリンクで構成される

産業用ロボットのアームはジョイントとリンクで構成されています

ジョイント(関節)

産業用ロボットでは自由に曲がったり、伸縮したりする関節部分のことをジョイントと言います。

ジョイントは回転関節と直動関節に分類されます。回転関節が人間でいう肘や肩などの関節部分にあたり、自由に回転することが可能です。

直動関節は人にはなくロボットにしかないジョイントで3次元方向に伸縮できます。

リンク(骨)

ジョイントの間を繋ぐ骨の部分をリンクと呼びます。リンクの種類は2つに分類され、シリアルリンクとパラレルリンクに分類されます。

シリアルリンクはロボットの土台から、先端までジョイントとリンクが直列に並んでいる機構のことをいいます。人間の腕と同じような構造をしているのが特徴です。

パラレルリンクはロボットの土台から先端まで複数のジョイントとリンクが並列している機構のことをいいます。

産業用ロボットのアームと人間の動きの比較

産業用ロボットのアームと人間の動きを比較すると共通点があります。回転ジョイントが人間の関節に肩やひじのように自由に動かせるという点は人間と同じです。

ジョイントを動かしてリンクで力を伝えるという原理に関しても人間とロボットは非常に似ています。

産業用ロボットのアームのジョイント(関節)を動かすために必要な要素

産業用ロボットのアームのジョイント(関節)を動かすために必要な要素を紹介します。

  • アクチュエータ
  • 減速機
  • エンコーダ
  • 伝導機構

アクチュエータ

アクチュエータは動力源を回転や曲げなどさまざまな動作に変換する装置です。ロボットのジョイントに欠かせない部品で、アームを回転させたり、直線運動させたりする役割をもっています。

アクチュエータにはモータが組み込まれています。しかし、一般的なおもちゃのようなモータは使用しておりません。

産業用ロボットの場合、0.01mmの精度での動作が必要とされるため、対応できません。そのため、サーボモータを用います。サーボモータは高機能なモータで回転する周期や回転速度を制御できます。

アクチュエータは電気や油圧、空圧をエネルギーとして駆動します。電気が一般的に用いられていますが、油圧も使われています。出力が大きく、耐衝撃性をもっていることがメリットです。

減速機

減速機もアクチュエータを構成する大切な部品です。モータの力を増幅する役割を持っています。モータだけでは力に限界があるため、限度を超えると回転することができません。そのため、減速機が必要になります。

減速機で力が増幅するというのは、自転車の変速機と同じ原理を利用しています。

自転車は前輪と後輪でギヤの大きさが違います。後輪のギヤを変更することでスピードの調節やペダルの回しやすさが変わるのをご存知でしょうか。

実は自転車では、ペダルを回しやすいギヤに変えたときに出力が増えるため、坂道を簡単に上れる仕組みになっています。

アクチュエータも同じで、ギヤによって出力をあげて、モータの回転力以上の力を発揮させることができます。

エンコーダ

エンコーダはモータがどれくらい回転したかを検出する装置です。アクチュエータの位置制御に大きな役割を持っています。どちらに回転したか、回転した角度はどれくらいかを把握させることが可能です。

光学式エンコーダを使用していることが一般的です。光学式エンコーダはモータの回転軸に円盤が取り付けられており、光を通すスリットと発光ダイオード、光の強弱を認識するフォトダイオードで構成されています。

モータが回転することで、光が何回スリットを通り抜けたかどうかによって角度や速度がわかります。

伝導機構

伝導機構はアクチュエータや減速機の力を他の要素に伝えるための機構です。機構によって力の向きや大きさも変更できます。

自転車の場合、ペダルを取り付ける柄の部分(クランク)と前輪から後輪へ力を伝えるためのチェーンのことが伝達機構です。

自転車はペダルによる回転運動を伝導機構で後輪に伝達して走っています。ロボットも自転車の構造と似ており、ベルトや歯車を用いた伝導機構を組み込んでいます。

産業用ロボットのアームの種類

産業用ロボットのアームの種類を紹介します。

  • 垂直多関節ロボット
  • スカラロボット
  • パラレルリンクロボット
  • 直交ロボット
  • 双腕ロボット
  • 極座標ロボット

垂直多関節ロボット

引用元:https://robotics.kawasaki.com/ja1/xyz/jp/1803-01/

垂直多関節ロボットは、現在よく使われている汎用性の高い産業用ロボットです。

構造

垂直多関節型は、人間の腕の構造に近い多関節構造のロボットで、可動範囲が広く、立体的な動きを得意としています。

高温や騒音の激しい製造ラインでの搬送・組み立てなど、人間にとって過酷な作業を自動化できるというメリットがあります。

主な用途

汎用性が高く、搬送、組立、溶接など幅広い作業に対応することが可能です。高温などの過酷な環境下でも用いることができます。

スカラロボット

引用元:https://robotics.kawasaki.com/ja1/xyz/jp/1803-01/

スカラロボットは水平方向にアームが動くタイプの産業用ロボットです。「Selective Compliance Assembly Robot Arm robot」の頭文字が「SCARA(スカラ)ロボット」の由来で水平多関節ロボットとも呼びます。

構造

3つの回転ジョイントと1つの直動ジョイントで構成されています。回転ジョイントで水平方向を自在に移動でき、先端部の直動ジョイントで上下に動かすことができます。

可動範囲は限られますが、水平方向への移動が安定しており、上下方向の剛性に優れているのが特徴です。

主な用途

精度の高い半導体ウエハの搬送や、基板の組立、ピッキングやねじ締めに用いられています。

パラレルリンクロボット

引用元:https://robotics.kawasaki.com/ja1/xyz/jp/1803-01/

パラレルリンクロボットはこれまでの産業用ロボットの問題点を解決するために最近開発されたロボットです。「パラレルリンク」という仕組みによって、スピーディーで正確な作業を行えます。

構造

パラレルリンクロボットは、ロボットの土台と先端部が複数のリンクで構成されています

一般的に、3本のアームを用いて先端部の位置を制御しているケースが多いです。

主な用途

食品の整列やピッキング、包装容器のラベリングなどが可能です。

直交ロボット

引用元:https://robotics.kawasaki.com/ja1/xyz/jp/1803-01/

直交ロボットは直線方向に対して動くことができる産業用ロボットです。直線の移動しか対応できませんが、精密な動作が得意なためよく用いられています。

構造

主に2~3つの単軸直動ユニットで構成されています。直動のため直線的な移動のみに制限されてしまいますが、構造がシンプルなため使用されていることが多いです。構造の特徴から「ガントリーロボット」とも呼ばれています。

主な用途

製造業の組立や搬送、食品など繊細物の運搬、成形・加工に使用されており、比較的大きな製品にも対応できます。

双腕ロボット

双腕ロボット
https://new.abb.com/products/robotics/ja/industrial-robots/collaborative-robots/yumi/irb-14000-yumi

人のように両腕を使って複雑な作業ができるロボットです。

構造

人間のように2本のアームで構成されています。垂直多関節型と水平多関節型の2種類があります。

主な用途

検査、組立、搬送など人間にできる作業が可能です。

極座標ロボット

引用元:https://robotics.kawasaki.com/ja1/xyz/jp/1803-01/

極座標ロボットは産業用ロボットの元祖で、初期に広く普及しました。

構造

中心に回転関節が2つと、アームに直動関節が1つという構造になっています。上下回転と左右回転ができ、アームは直線方向にスライドすることができます。

主な用途

半導体製造のクリーンルームや液晶パネルの搬送に使用されています。

産業用ロボットのアームの先端は交換して機能を追加できる

産業用ロボットのアームの先端部分は交換をすることで幅広い作業の自動化を実現してくれます。

先端部分に取り付ける機器のことをエンドエフェクタとよび、製品を運搬するようなハンドや溶接用のトーチ、塗装用のガンなどを取り付けることができます。

まとめ

産業用ロボットのアームについて解説しました。産業用ロボットは人間の腕に近い構成でできているため、さまざまな作業を人の代わりに行うことができます。

産業用ロボットは大きく6種類あり、それぞれ適した用途があり、生産ラインの効率化やコスト削減を行ってくれます。

生産ラインの改善や課題解決のために、産業用ロボットの導入を検討してみましょう。

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