産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.03.31

協働ロボットの速度制限は?向いている作業と導入事例を紹介!

人と同じ環境で作業を行うことができる協働ロボット。安全性に優れていますが、労災が起きないように国際規格でロボットの速度が制限されています。

今回は、協働ロボットの制限速度と協働ロボットができる作業とできない作業について導入事例も参考に紹介していきます。

この記事の結論

・協働ロボットの制限速度は250mm/s以下
・協働ロボットは安全性を重視した作業や人と同じ空間で行える軽作業に向いている
・協働ロボットはパワーやスピードが必要な作業や頻繁に作業内容が変わる業務には向いていない

協働ロボットには制限速度がある

協働ロボットは安全の観点から、制限速度が設けられています。

産業用ロボットの安全規格が記載されているISO 10218-1や日本の規格であるJIS B 8433-1によって、協働ロボットはTCP(ツール・センター・ポイント)速度が250mm/sを超えてはならないと定められました。

TCPとは、ロボットアームの先端であるエンドエフェクタがワークに触れる場所の中心点のことです。ピック&プレイス用の2爪ハンドであれば、2つの爪の中間にTCPがあります。

このTCPの速度が国際規格であるISOや日本の規格JISで決められています。

協働ロボットに向いている作業

協働ロボットは安全のために速度制限がされているため、向いている作業と向いていない作業があります。ここでは、向いている作業について見てみましょう。以下のような作業が協働ロボットに向いています。

  • 人と同じ環境での軽作業
  • スピードよりも安全を重視した作業
  • プログラミングやインテグレーションが簡単

人と同じ環境での軽作業

協働ロボットは人と同じ環境で作業が行えるために製造されたロボットです。そのため、協働ロボットは人が工場で行う軽作業であれば問題なく使用できます。

以下のような用途があります。

  • 食品類の仕分けや梱包作業
  • 化粧品のボトルラベリング
  • 電子機器の簡単な組立やねじ締め
  • 画像認識システムと併せた製品の外観検査

スピードよりも安全を重視した作業

協働ロボットは速度制限があるため、一般的な多関節ロボットよりもモータの出力が小さく設計されています。安全柵なしでも使えるほど安全性に優れているため、スピードやパワーよりも安全性を重視した作業に向いています。

協働ロボットであれば以下のような作業が可能です。

  • 食品をロボットから人に渡す作業
  • ワークの運搬と加工機への投入作業
  • 工作機械のワークの出し入れ

プログラミングやインテグレーションが簡単

協働ロボットは一般的な産業用ロボットとは違い、ティーチングを行うために特別教育を受講して資格を取得する必要がありません。そのため、初心者でもプログラミングやインテグレーションを行うことが可能です

現在開発されている協働ロボットは初心者でもプログラミングの作成が可能になっている仕様が多く存在しています。

直接ロボットのハンドを動かして教示する「ダイレクトティーチング」を採用しているロボットや、タブレット端末で簡単に教示できるロボットなどがあります。

インテグレーションもロボットハンドを取り換えるだけで別の作業ができるようになるため、初心者でも段替えが簡単です。

協働ロボットに向いていない作業

協働ロボットは向いている作業が多くありますが、性質上向いていない作業もあります。具体的には、以下のような作業があります。

  • パワーやスピードが求められる作業
  • 頻繁に作業内容や作業場所が変わる場合

パワーやスピードが求められる作業

協働ロボットはあくまでも人の作業を代替するために製造されたロボットのため、一般的な産業用ロボットと比べてパワーやスピードが劣ります。

そのため、生産スピードを求めている作業や重量のあるワークの運搬、加工業務には向いていません。

頻繁に作業内容や作業場所が変わる場合

頻繁に作業内容や作業場所が変わる作業の場合、協働ロボットは向いていません。

協働ロボットは他の産業用ロボットと比べてプログラムの変更や段替えは簡単ですが、段替えの頻度によってはロボットよりも人の方が柔軟性に優れ、効率がいい場合があります。

また、経済産業省が発行している産業ロボット導入ガイドラインに複雑な作業が多い場合は以下のように書かれています。

作業が複雑で品種が毎日変わるような組立工程、柔軟物を含む高度な組立工程などは、ロボット化による費用対効果が十分に得られないことが多い。

産業ロボット導入ガイドライン

そのため、ロボットを導入しても大きな効果が得られない場合もあります。

協働ロボットの導入事例|実際のコストも紹介

実際に協働ロボットがどのように使われているか見てみましょう。経済産業省と一般社団法人日本ロボット工業会が発行した「ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018」から導入事例と実際のコストを紹介します。

包装機へのハム・ソーセージ製品投入ロボットシステム|日本ハムファクトリー株式会社

日本ハムファクトリー株式会社では多品種で形状の違う製品を扱うハム・ソーセージを包装機へ投入作業を作業者の手で行っていました。しかし、重労働であることと人件費がかさむという問題がありました。

そこで、協働ロボットを2台導入し新たに生産システムを構築します。結果、ロボットによる包装機への投入が可能になり、労働環境の改善と人件費削減を実現できました。 

労働生産性1.7倍
人数5人→3人
労働時間15時間→15時間
生産量20000個→20000個
その他の効果長時間肉体労働削減
導入したロボット協働ロボット ライフロボティクス CORO 
導入コスト20百万円
1年あたりの効果一人当生産数増加:178個/HMアップ 266個/HM→444個/HM 労働生産性:2名(360万円=30万円×2 名×6ヶ月)の人件費に相当
回収期間5.5年

協働ロボットとパレットストレージ導入による医療用分包紙検査作業環境の改善|株式会社タカゾノ

株式会社タカゾノでは、出荷工程で、複数の上流機から流れる12kgの製品を作業者2人で行っていましたが、作業時間の増加や労働環境が悪いため改善が必要でした。

そこで、省スペースで利用できる協働ロボットを導入します。コンベアとロボットを連動させることで、作業者の負担を減らし、人件費も2人分削減できるようになりました。

労働生産性1.5倍
人数6人→4人
労働時間8時間→8時間
生産量6000個→6200個
その他の効果肉体的負担の低減
導入したロボット垂直多関節協働ロボットファナックCR-35iA
導入コスト31.7百万円
1年あたりの効果ロボット導入により削減された人員 2名上記作業者の賃金を450万円/年として算出 31.7百万円÷9百万円(2名)
回収期間3.5年

協働ロボットと人工知能技術を組み合わせた多品種油圧機器外観検査作業の省コスト化|稲坂油圧機器株式会社

稲坂油圧機器株式会社では、建機用の多品種油圧パイロット弁の外観検査を作業者が目視で傷や刻印の検査を行っていましたが、熟練者でないと困難な作業でした。

そこで、画像認識できるAIと協働型の双腕ロボットを活用します。3台のカメラが搭載された画像認識機能付き双腕ロボットを導入したことにより、良品の判定が行え、生産性を向上することができました。

労働生産性10倍
人数1人→0.1人
労働時間8時間→8時間
生産量664個→664個
その他の効果製品の更改に対応容易
導入したロボット双腕型スカラロボット川崎重工業(株)WD002N/duAro
導入コスト25.2百万円
1年あたりの効果年々の平均増分現金流入額:削減人件費 550万円投資回収年=2,520/550=4.6年
回収期間4.6年

まとめ

協働ロボットの速度制限について紹介しました。協働ロボットはTCP(ツール・センター・ポイント)速度が250mm/s以下にしなければなりません。

また、協働ロボットには向いている作業と向いていない作業があるため、導入前に協働ロボットがあなたの工場で求められている作業が可能かどうか判断する必要があります。

もし社内で判断ができない場合はシステムインテグレータがおすすめです。あなたの工場のニーズに沿った生産ライン設計をサポートしてくれます。一度相談してみませんか?

関連記事