産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.28

ライン作業とは?作業内容や産業用ロボット導入の利点・注意点を解説

「ライン作業」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。生産現場や工場で使われるイメージも強いですが、今は一般企業の間接部門にも浸透するほど、幅広い概念で使われています。

今回は、ライン作業の定義や内容から、産業用ロボット活用のメリットや注意点まで紹介します。

この記事の結論

・ライン作業はいくつかの工程に分かれ、様々な業種で導入されている
・ライン作業における産業用ロボット活用のメリットは「人件費削減」「品質安定」「生産ペースの把握」
・ライン作業における産業用ロボット活用の注意点は「代替可能な作業の見極め」「故障のリスク」「費用対効果」

ライン作業とは

ライン作業とは、正式名称は「ライン生産作業」と呼ばれ、ベルトコンベア上に流れる製品を扱う作業全般のことを指します。

各担当者が流れ作業を行い、1つの製造ラインで製品完成までのすべての工程が完結するためライン作業と名づけられました。

ライン作業は1913年にアメリカの自動車メーカーであるフォード社が導入したのが発祥といわれています。これまで一箇所ですべての組み立てを行っていた作業を、ベルトコンベアによる流れ作業に切り替えたことで生産効率が大きく向上しました。

日本でもメーカーを中心にライン作業の導入が進み、大幅なコスト削減と大量生産を実現し、日本の高度経済成長に寄与しました。

ライン作業の工程

ライン作業は分解するといくつかの工程で成り立っていいます。代表的なライン作業の工程を紹介します。

組み立て

組み立てが必要なものを、パーツを組み合わせて一つの部品を完成させる工程です。 「組み付け」と呼ばれることもあります。

車、飛行機などの大きなものから時計やはさみといった小さなものにいたるまで、組み立てが必要なものをライン作業で行います。

細かい部品をいくつも使う物であっても、ライン作業では流れてきた製品に部品を組み立てていくだけなので、比較的どんな人でも作業しやすい工程です。

機械オペレーション

機械を操作して製品を加工・成形する工程です。

作業者は「マシン(機械)オペレーター」と呼ばれ、主に金属加工でねじ穴を開けたり金属をカットする作業が行われます。

担当するラインの生産過程を機械によって管理するため、機械のメンテナンスなど仕事内容は業種によって変わってきます。

機械オペレーターは、特殊な機械の操作を求められることも多いため、経験者でなければ担えないことが多い工程です。

検品

製品の中に不良品がないかを調べる工程です。

梱包や出荷を行う前に、不具合やミスがないかをチェックする作業で、製品として出荷しても良いものであるか、規定ラインを満たしているかを判断します。

工業製品であれば動作チェックなど、食品であれば異物混入や形状チェック、化粧品であれば容器の破損や液漏れなどを確認します。

目視点検や微生物検査などいくつかの種類がありますが、一般的なのは目視点検です。集中力を要するため、ローテーションを組んで行われるのが一般的な工程です。

仕分け・梱包

完成した製品の配送先を振り分け、製品を紙で包装したりダンボールにつめたりする工程です。

食品工場であれば、食材の大きさや形を規定に沿うものとそうでないものを仕分けし、梱包していくのが作業内容となります。

仕分けと梱包のセットで行われることが多く、単純作業ではありますがスピードと正確さが求められる工程です。

ライン作業の特徴

ライン作業の特徴と担当する人が注意すべき点を解説します。

同じ作業を繰り返す

作業工程を分割して担当を割り振っているため、一人が行う作業は基本的には同じ作業となります。単調な作業でも飽きずに行う必要があります。

一定のリズムでの作業

作業はマニュアル化・パターン化されているため、同じリズムで行う必要があります。前後の工程に迷惑をかけないよう、一定のスピードでリズムを崩さずに作業をすることが求められます。

同じ位置で長時間の作業

工場内の配置で担当する工程の場所は決まっているため、同じ位置で作業を行います。
立った姿勢で作業を行うことも多いですが、同じ位置や体勢で作業を行う必要があります。

ミスは禁物

単純作業を扱うため、極力ミスは起こしてはなりません。ひとつひとつは簡単な作業であっても、ミスを起こさないように集中力を保つ必要があります。

ライン作業が多い業種

メーカーが多い日本ではさまざまな業種でライン作業は活用されています。代表的な業種を紹介します。

自動車工場

自動車工場は、自動車製造メーカー、部品製造メーカー、系列メーカーなどに大きく分けられます。そのなかで行われるライン作業は、組み立てから機械加工、部品供給、成型などです。

自動車工場ならではのライン作業の特徴は、金属を溶かして型に流す鋳造や最終チェックの前に行われるボルト締めなどが挙げられます。

食品工場

食品工場は、飲料や食肉加工なども含まれ、扱う製品は多岐に渡ります。

原材料の管理のほかに検品や梱包、機械のチェックといった細かなライン作業が多いのが特徴です。また食肉加工では肉のカットが含まれ、お菓子やお弁当では詰める作業やトッピングがメインになるなど、扱う製品によって作業内容が異なります。

化粧品工場

化粧品の種類で内容が変わってきますが、基本的には容器に詰める、シールを貼る、検品、箱詰め、蓋閉めなどが作業内容になります。

説明書の同封や荷台に積み上げていくなど細かい作業に分けられるのが一般的で、作業者に女性が多いのも特徴です。

ライン作業への産業用ロボット導入のメリット

近年ライン作業において、産業用ロボット導入の動きが加速しています。導入した時に期待できるメリットを紹介します。

人件費が削減できる

現在の作業要員を産業用ロボットに置き換えることで、製造コストとして大きな割合を占めている人件費を削減できます。

単純に作業要員を減らすだけではなく、その余力を新技術習得や製品開発にリソースを向けることも可能になります。

品質が安定する

同じような設備や環境が整ってさえいれば、どこであっても同様の品質を確保することができます。

人員起因のミスが削減することで、これまでと同じ時間でも安定的な作業を行うことができます。

製品の生産ペースが把握しやすい

産業用ロボット導入で工程が安定化することで、どの工程でどの程度の時間がかかるかが把握できるようになります。

ひとつの製品の生産ペースが可視化されることで、工程の改善につながり、労働生産性の向上にもつなげられます。

ライン作業への産業用ロボット導入の注意点

ライン作業へ産業用ロボットを導入する際の注意点を解説します。産業用ロボット導入にはコストもパワーも発生するため、参考にしてください。

すべての工程が自動化できるわけではない

産業用ロボットで代替可能なのは、標準化された工程のみになります。現在の工程のすべてが自動化できるわけではありません。

産業用ロボットを導入する前に、人が担当する工程と産業用ロボットが担当する工程の見極めをする必要があります。

故障するリスクがある

産業用ロボットは機械なので、故障するリスクがあります。

産業用ロボットのメンテナンスができる人材を確保する、または修理の委託先を事前検討しておく必要があります。

導入の費用対効果が合わない場合もある

部分的な産業用ロボット代替の場合は費用対効果が見合わないケースもあります。

産業用ロボットの「導入コスト」「導入パワー」「導入後のメンテナンス」に対し、産業用ロボット導入で見込める収益のバランスを事前検討するようにしてください。

まとめ

ライン作業は単純な工程が多いため、産業用ロボット活用がしやすい領域といえます。

ただし、事前検討をきちんとせずに産業用ロボットを導入してしまうと、トラブルが起きるなど、かえって現場が混乱することも考えられます。

産業用ロボットを導入するにあたっては、どの工程を代替するか、どの程度の効果が期待できるか、どの産業用ロボットが最適なのか、など事前に精緻に検討をするようにしましょう。

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