産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.03.31

研磨とは?研磨の種類や手順・産業用ロボット活用のメリットも解説

生産現場でさまざまな製品の表面仕上げ加工に用いられる研磨加工。
日本では有史以来の最も古い加工技術といわれていますが、現在の先端産業においても、ものづくりの基幹技術の一つとして研磨の重要性は増しています。

今回は研磨加工の種類や手順から、研磨が抱える課題解決が期待できる産業用ロボット活用のメリットまで紹介します。

この記事の結論

・研磨は、大きく「固定砥粒(とりゅう)加工法」と「遊離砥粒(とりゅう)加工法」に分かれる
・研磨の手順は「下地」~「鏡面仕上げ」がある
・研磨には「人材不足」や「品質の不安定」という課題がある

研磨とは

研磨(けんま)とは切削や研削などの前加工を終えた製品に対して、滑らかな表面に仕上げるための加工のことです。

研磨を行うことで、表面性状(表面粗さ)、寸法精度、平面度、真円度などの幾何形状の精度を向上させることができます。

研磨は金属に施されるイメージが強いですが、近代産業においては石や木などの素材も対象となり、装飾を目的に施されることもあります。

研磨の加工方法

研磨は大きく2つに分類されます。

固くて細かい砥石(といし)を金属等に固定して行う「固定砥粒(とりゅう)加工法」と砥石を液体に混ぜて行う「遊離砥粒(とりゅう)加工法」です。

固定砥粒(とりゅう)加工法

固定砥粒加工法は、ボンドで金属等に固定された砥粒を使い部品表面の凸部を研磨する方法です。
遊離砥粒加工法と比較して研磨時間が短いのが特徴です。

固定砥粒加工法の主な加工法を紹介します。

ホーニング

ホーニングとは、部品の内径の研磨を行う加工方法です。

大量の研削油を流しながら複数個の砥石の付いた工具を用いて、パイプ等の製品内径を回転と上下運動により研磨をします。

ホーニングには、「ホーニング盤」が利用されます。円柱状の回転工具の側面には、いくつかの砥石が取り付けられています。スプリングの力で内面に押し付けた状態で回転運動と往復運動を行うことで、つやつやの鏡面に仕上げることができます。

電解研磨

電解研磨とは、対象となる製品を電解研磨用水溶液中に浸漬させながら電流を流し、化学的に凸部を溶かして表面を鏡面化する研磨方法です。

高精度の平面が出せることに加え、他の研磨法では狭すぎて研磨しづらい部分も研磨することができます。

超仕上げ

超仕上げとは、工作物が回転する方向に対して、直角に振動する砥石を当てながら表面を精密に研磨する加工方法です。

加工面がきれいになり耐摩耗性に優れた状態になるため、 エンジンのクランク軸やカムシャフト、ボールベアリング軸受などの最終仕上げに適しています。

遊離砥粒加工法

遊離砥粒加工法は、砥粒を液体に混ぜて研磨を行う方法です。
固定砥粒加工法と比較して、時間はかかるものの表面仕上げが優れています。

遊離砥粒加工法の主な加工法を紹介します。

ラッピング

ラッピングとは、ラップ盤と呼ばれる専用装置を使い、液体状の研磨材と対象物を挟み込んで平面を研磨する加工方法です。

高い表面性状(表面粗さ)や厚みの制御が可能となり、リコンウェハや光学部品、精密部品などの分野でも活用されるポピュラーな研磨方法です。

ポリッシング

ポリッシングは、表面にある細かい傷などを取り除く加工方法です。ラッピングで研磨する以上に、鏡面状態に仕上げることができます。

加工工程はラッピングに似ていますが、加工液に含まれる砥粒はラッピングよりさらに細かいものとなります。

バレル研磨

バレル研磨はバレルと呼ばれる樽の中に、研磨剤と加工対象物を入れて、バレルを回転・上下運動させることで、加工対象物と研磨剤がすれ合って研磨を行う加工方法です。

加工対象物はパチンコの玉のように小さなものが多く、一度に複数のものを研磨するのに適しています。

研磨の手順

用途や材料に応じて細かい工程は変わりますが、大きな流れは変わりません。

下地

下地は、目の粗い砥石を用いて大きなデコボコや異物を除去していく作業です。

下地の段階では細かく表面を揃えていくというよりは、大胆に削っていく工程になります。寸法など細かいことはあまり気にせず大胆に削っていくことになりますが、下地の工程をしっかり行わないと最優的な仕上がりに影響してきます。

ならし

ならしは、下地工程で使用した砥石よりも目が細かい砥石を使用し、下地工程で凹凸や異物を取り除いた表面をさらに磨く作業です。

下地の段階である程度は製品表面が平らになっているため、この工程は文字通り“ならす”ことです。下地で使用した砥石より、番数が高く目の細かい砥石を使用することで、ならし工程が終わる頃にはほとんど表面は平らになっています。

つや出し

つや出しは、下地~ならし工程で平らにした表面に光沢を出すための工程です。

ならしの工程でデコボコや異物は除去できますが、それはあくまで製品表面を平らにしただけです。つや出しの工程では、表面の汚れを除去する目的があります。

鏡面仕上げ

鏡面仕上げは、鏡面鏡のような光沢を出す仕上げ工程です。

砥石の番手を大きくし、より目の細かい砥石で丁寧に研磨を行い、布などの柔らかい素材に研磨剤を付けて少しずつ研磨するバフ仕上げなどを実施します。

研磨の課題

研磨は日本の生産業においては歴史の古い技術のひとつです。
しかし近年は扱う素材や加工技術も多様化していることで、いくつか課題も散見されます。

人手不足

歴史が古い技術だけあって、研磨のなかには一部の熟練工しか作業が担えない加工法もあります。
各現場で熟練工の技能伝承は進めているものの、研磨が担える人材が少なくなりつつあるのが現状です。

安定的な品質が維持できない

研磨は精緻な技術が要求されることもあります。
作業を担う人の技術のばらつきにより、研磨加工の品質が安定的に保てないこともあります。

研磨への産業用ロボット導入のメリット

研磨作業において、産業用ロボット導入の動きが近年加速しています。
ロボット導入で期待できるメリットを紹介していきます。

人手不足が解消できる

複数ある研磨の加工工程のなかでも、比較的難易度が高くなく、標準化できる工程はロボットで代替の可能性があります。

人手不足が解消できるだけではなく、研磨の熟練工は人手による加工が必要な工程に絞って作業ができようになります。

品質が安定する

産業用ロボットの導入によって、研磨の品質安定が期待できます。

人手に頼っていて品質にムラが生じた工程も、ロボット導入の設備や環境が整ってさえいれば、いつでも均一な品質を確保することができます。

まとめ

研磨は高度な技術で一部の熟練工しか担えないイメージはあります。
しかし昨今は作業員の高齢化や人不足の波を受けて、産業用ロボットの代替が期待される領域です。

産業用ロボットを導入することで、人手不足の解消・品質の安定化だけでなく、熟練工はより高度な研磨の作業に集中することができるようになります。

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