産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.09.30

医薬品産業で産業用ロボットの導入は可能か?導入事例と頼れるSIerを紹介

医薬品産業ロボット

医薬品は厳しい衛生環境下で、高い技術をもった人の手によって生産されています。同時にヒューマンエラーの防止や、繊細な手作業の再現性が困難な現状が重なり、自動化のニーズは高いものの実現が難しいという状況です。

今回はそのような医薬品業界の課題に対して、産業用ロボットを導入した事例と、産業用ロボットの導入によって得られた効果などを解説します。

最後に産業用ロボットの導入が得意なSIerを紹介しますのでご覧ください。

この記事の結論

・医薬品産業への産業用ロボット導入によって省人化、生産性の向上が見込める
・産業ロボットの導入によってヒューマンエラーの防止や繊細な手作業の再現が可能
・産業ロボットを導入する工程はピッキング・検査・梱包工程が主流

医薬品産業で産業用ロボットは導入できる

「医薬品産業で産業用ロボットを導入できるのか?」の問いに結論を申し上げますと

「導入できる」が答えになります。

結論だけ申し上げても「では、どのようなロボットを導入すべきか」とういう課題が残ります。

次より目的別に最適と思われるロボットを選定していますのでご参考ください。

  • 無菌室・真空環境でも稼働したいならクリーンロボット
  • 省スペース化や高精度化を求めるなら双腕ロボット

それぞれを解説します

無菌室・真空環境でも稼働したいならクリーンロボット

クリーンロボットの特徴としては、装置内外への発塵を抑制する構造になっており、IP65(機器内への遺物の進入に対する保護の等級の防塵・防滴性能 が主流でISOクラス5(クリーン度の規格)のスペックが主流となっています。

また、真空状態でも問題なく稼働できるように潤滑油の蒸発を抑制したり、ロボットからの発熱を装置外に放出しない構造になっているものがあります。

省スペース化や高精度化を求めるなら双腕ロボット

双腕ロボットの種類は様々ですが、共通した特徴としては、装置のサイズが人一人分ほどの大きさであることが多く、狭所でも作業できるように可動スペースが小さいことと言えます。

人型の双腕ロボットは小型かつ可動スペースが小さいため、作業場が広くなくても設置可能です。

また、自由に動かせる関節が多いため、立体的な作業に向いています。

双腕部分は人間の腕の構造に似ているため、熟練者の手技を高精度に再現することができ、繰り返し作業においてもその精度を維持します。

また、人間が行う作業を代替してくれるのでヒューマンエラーの防止にも繋がります。

医薬品産業で産業用ロボットを導入してできること

医薬品産業で産業用ロボットを導入してできることは以下の3つになります。

  • 省人化によるコストカットが可能
  • 生産性の向上が見込める
  • トレーサビリティのために正確な記録を残すことができる

一つずつ解説します。

省人化によるコストカットが可能

ロボット導入の最大の利点として、ロボットが人の作業を代替するので、結果的に携わる人数を減らし人件費などの固定費を削減できます。

また、「人間には不可能な精度と速度で、繰り返し同じ作業を安定して長時間こなす」ことが可能なので生産量を増やしたいときもコストを抑えて稼働時間を長くすることができます。

導入時には高額な資金が必要ですが、長期的な視野で見れば、ロボットを導入するほうがコストを抑制できます。

生産性の向上が見込める

産業用ロボットの作業スピードは人の作業スピードと大差ありません。

一方で、生産効率が変動しないため、計画通りの生産が可能だったり、無人による作業を24時間継続できるので人には実現できない生産体制を構築することが可能です。

また、ヒューマンエラーによる想定外のトラブルや、製品の汚染防止などによる大量廃棄ロスなども防止できるので結果的に生産性が向上します。

トレーサビリティのために正確な記録を残すことができる

医薬品業界では、万が一のイレギュラーが発生した事態に備えて、事象を完全に再現できるように作業過程や結果を記録する必要があります。

その管理項目や基準は年々厳しくなっていますが、ロボットの導入によって動作ログなどから正確な記録を確認できるようになりトレーサビリティに役立ちます。

医薬品産業で産業用ロボットを導入されやすい工程

医薬品産業で産業用ロボットを導入されやすい工程は以下の3つになります。

  • ピッキング工程
  • 検査・検品工程
  • 包装・梱包工程

その理由を一つずつ解説します。

仕分け工程

医薬品産業で発生したヒューマンエラーといえば「ワークの誤配送」が代表的で、その正確性を向上させることが課題なのですが、人の手が介入している現状では「発生率ゼロ」にすることは困難だと言えます。

FA化によってピッキングロボットのラインナップが豊富である現代は、仕分け工程に正確なピッキングロボットの導入は困難ではなくなってきました。

これにより誤出荷・誤配送などに加えハンドリングミスによる製品破損についても防止が期待できます。

検査・検品工程

錠剤などの検査自動化はもちろん、打錠、検査についても生産ラインの自動化が可能です。

検査・検品を行うロボットの特徴として、毎時50,000~200,000個以上の処理能力だけではなく対象医薬品毎に最適な条件を設定出来ます。

また、検査・検品装置に用いられるカメラは高精度なので、コンタミはもちろん人毛などの異物混入も見逃しません。

これほどの精度を人の目で長時間作業することは過酷なのでロボットの導入を優先されやすいと言えます。

包装・梱包工程

包装・梱包作業時は徹底して「汚染」を防止しなければなりません。

汚染事故とそれに続く製品リコールは、あらゆる企業の評判を損ねる可能性があります。

ロボットを導入することで「人の手が触れない」環境を確立できるので、汚染された製品の流出を防止できるのでロボットを導入する工程として優先されています。

産業用ロボットの導入が得意なSIer

日本国内には医薬品産業にロボットを導入実績が豊富で、多くの企業から信頼を獲得しているSIerが多数存在します。

ここでは代表的なSIerを5社ピックアップして紹介します。

株式会社安川電機

(引用元:株式会社安川電機)

株式会社安川電機は福岡県北九州市に本社を構える世界の産業ロボット業界を牽引する大手メーカーです。

株式会社安川電機の2021年2月期の収益の内訳でロボット部門が第二位になっています。

近年では自由度の高い動きが可能な垂直多関節ロボット(MOTOMAN-MCLシリーズ)と旋回半径が小さく小回りが効くスカラロボット(MOTOMAN-MFL、MFSシリーズ)の2種類が発表され医薬品産業での活躍が期待されています。

株式会社安川電機の産業用ロボットは自動車、電子機器、半導体製造、バイオ、食品、医療品、物流など幅広い産業の現場で使用されています。

対応業種自動車、電子機器、半導体、食品・医薬品など
対応プロセスFAシステムの設計開発、製作
住所福岡県北九州市八幡西区黒崎城石2番1号
URLhttps://www.yaskawa.co.jp/
ロボットスクールの有無
ロボットショールームの有無

株式会社バイナス

(引用元:株式会社バイナス)

株式会社バイナスは愛知県稲沢市に本社を構え、最新ロボット技術を活用した生産設備の設計・製作、ロボット・PLCのプログラム作成を通じ、作業の効率化や省人化に最適なアプリケーションを提供しています。

株式会社バイナスは人が担っていた細かな作業を、よりスピーディにより効率良く行うロボットセル生産用ユニットの開発し、さまざまな作業をロボットのユニットによって再現する技術力が強みです。

対応業種自動車、電子機器、半導体、食品・医薬品など
対応プロセスFAシステムの設計開発、製作
住所愛知県稲沢市平和町下三宅菱池917番地2
URLhttps://bynas.com/
ロボットスクールの有無
ロボットショールームの有無

株式会社Mujin

(引用元:株式会社Mujin)

株式会社Mujinは東京都江東区に本社を構え、愛知県や海外では中国にも拠点を有するメーカーです。

独自の高度なロボット知能化技術「MujinMI」により、これまで難しいとされていた工程やワークへの対応が可能になり、従来のロボット課題をクリアする新たなソリューションパッケージとして、現在多くの現場に導入されています。

対応業種電子機器、食品・医薬品、電気部品、物流
対応プロセスFAシステムの設計開発、製作、FAコンサルティング
住所東京都江東区辰巳3-8-5
URLhttps://www.mujin.co.jp/
ロボットスクールの有無
ロボットショールームの有無

株式会社ダイヘン

(引用元:株式会社ダイヘン)

株式会社ダイヘンは大阪府大阪市に本社を構え、三重県や北海道にも拠点を有するクリーンロボットの分野において20年以上の実績を持つメーカーです。

1919年の創立以来、変圧器に始まり溶接機、産業用ロボット、半導体製造装置用高周波電源など、社会が必要とする製品の開発に取り組み、くらしの基盤となる電力インフラの高度化や世界のものづくりに貢献しています。

特に4軸円筒座標型の大気ロボット「UT-AFX/W4000 シリーズ」やアームのカスタマイズも可能な真空ロボット「UT-VFX3000NM シリーズ」など、半導体製造工程におけるウエハ搬送分野で高い評価を得ています。

対応業種電気部品、半導体製造、物流、機械部品
対応プロセスFAシステムの設計開発、製作
住所大阪府大阪市淀川区田川2丁目1番11号
URLhttps://www.daihen.co.jp/
ロボットスクールの有無
ロボットショールームの有無

株式会社ティ・アイ・エス(TIS)

(引用元:株式会社ティ・アイ・エス)

株式会社ティ・アイ・エスは福岡県福岡市に本社を構え、佐賀県にも拠点を有するFA事業、エコシステム事業、サービス事業で活躍するSIerです。

FAシステムの導入にあたっては対象の工場やライン全体の作業効率や生産効率についてトータルバランスで提案しています。

また、FA事業で培ってきた総合的な技術力を活かした自社製品の開発・製造にも注力しており、企画・開発製造・納入・メンテナンスまで自社内で一貫して行っていることが強みです。

対応業種生産設備・搬送設備・検査装置・治具・省力機械等の製作、エコシステム
対応プロセス半導体装置組立、生産管理、品質管理関連、メンテナンス、ソフト開発(組込系・制御系)
住所福岡県福岡市博多区比恵町3番25号
URLhttps://www.tis-web.co.jp/
ロボットスクールの有無
ロボットショールームの有無

医薬品産業における産業用ロボットの導入事例

これまで自動化は困難だとされてきた医薬品産業にも産業用ロボットが導入され活用されています。導入事例を5つ紹介しますのでご参考ください。

  • 生菌数試験ロボットシステム
  • 分析前処理ロボットシステム
  • 自動梱包システム
  • 液体・粉体秤量ロボット
  • 自動仕分けロボット

その理由を一つずつ解説します。

生菌数試験ロボットシステム

「生菌数試験」とは、医薬品では中間検査として、人の体内に直接入る製品の中に菌が含まれていないかを検査する重要な試験工程です。

生菌数試験システムでは、人に起因するコンタミネーション(異物混入)を防ぎながら、人の熟練技を完全再現でき、高精度なシステムによって自動化が実現しました。

分析前処理ロボットシステム

これまでの分析前処理作業として多数の小型容器に微量の試薬を分注・攪拌などを行ったあとに複数の分析機器を駆使して微細な分析を行うなど、繊細かつ高い技術を必要とする作業が人の手によって行われてきました。

そんなデリケートな作業にも関わらず、手作業ならではのリスク(バラつきやミス)への対策が課題でした。

分析前処理ロボットシステムを導入することで、これまで抱えていたリスクを低減できただけではなく、省人化による長時間の稼働が可能になっています。

自動梱包システム

生産ライン上の製品の位置や角度をカメラで認識し、ハンドピースでピッキングして高速搬送・箱詰めを実現した産業用ロボットです。

汎用性が高いロボットなので、サイズや形状の異なる製品にも対応可能です。

ロボット導入の効果として、省人化、作業の効率化、作業の安定化などを実現しています。

液体・粉体秤量ロボット

これまでは液体・粉体秤量ロボットの実現は困難とされていましたが、FAロボットシステムの技術発展に伴い導入が進んでいます。

多種多様な粉末をコンタミなく秤量可能のほか、高い自在性や人の手を超える正確性・再現性を実現しています。

自動仕分けロボット

包装・梱包の事前作業として仕分けが必要なのですが、これまでは人の手で対応されていました。

現代ではFAシステムの発展によって自動仕分けロボットを導入してピッキングする工場が増加傾向にあります。

自動仕分け用のロボットとして最適とされているパラレルリンクロボットの機能を一部紹介すると、パラレルリンクロボットは一瞬で形状やサイズなどを認識し、高速なピッキングでミスなく仕分けすることが可能です。

まとめ

日本国内では人口減少への対策としてロボット導入の促進が期待されていますが、医薬品の他に食品、化粧品のいわゆる「三品産業」の分野では自動化のハードルが高く、ロボットの導入が遅れています。

今回は、そのような課題の解決の糸口になればと思い、医薬品産業へ産業ロボットを導入したてできることや、導入されやすい工程、頼りになるSIerを紹介させていただきました。

記事の内容を参考に、前向きに検討していただればと思います。

関連記事