産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.03.31

バリ取りとは?バリの種類や手順・産業用ロボット活用のメリットも解説

生産現場の加工の過程で発生した金属の残留物や付着物を削り取る「バリ取り」。
バリ取りは一見地味な作業と思われがちですが、製品の精度や安全性を左右する重要な工程です。

今回はバリの種類やバリ取りの方法から、バリ取りが抱える課題解決が期待でき産業用ロボット導入のメリットまで紹介します。

この記事の結論

・バリ取りが必要な理由は「怪我の防止」「機械の故障・摩耗防止」「製品の品質低下防止」
・バリの種類は「切削バリ・研削バリ」「プレス加工バリ・せん断バリ」「鋳造・鍛造・射出成型のバリ」
・バリ取りの主要な切除方法は5種類
・バリ取りの課題は「人手不足」と「品質維持」
・産業用ロボット活用により研磨の人手不足が解消され品質維持が可能

バリ取りとは

「バリ」とは、金属やプラスチックやゴムなどを加工するときにできる「出っぱり」「ギザギザ」「トゲ」などの総称です。

日本の生産現場では「かえり」と言われることもありますが、英語が元になった「バリ」という言い方が一般的です。

バリを取り除くことを「バリ取り」といいます。
さまざまな部品の設計図には「バリなきこと」や「バリ不可」と記載されていることが多いほど、あらゆる製品づくりの現場ではバリを取り除くことが求められている重要な作業です。

バリ取りが必要な理由

どんな現場でも行っているバリ取りの作業ですが、バリ取りを行わないとどのようなことが起こるのでしょうか。

作業従事者が怪我をするから

金属や樹脂など硬い素材のバリは、製造する過程で作業員が怪我をする可能性があります。またバリが衣服や施設や設備を傷つけることで、別のトラブルの原因になることもありえます。

さらには製品に残ったバリによって、エンドユーザーが怪我を負うリスクも考えられます。
エンドユーザーは小売店ではなくメーカーに対して損害賠償責任を追及できるため、製造物責任法に関わる重要な問題にも発展しかねません。

機械の故障や摩耗の原因になるから

剥がれたバリが動作部に入りこむと、故障や摩耗につながります。
部品にバリがあると取り付けた際に不具合を起こし、電気製品の場合はショートや故障の原因にもなりかねません。

以前は人の手に触れない製品部分はバリ取りの対象となっていませんでしたが、故障や摩耗のリスクから、近年では製品のほぼ全ての部分にバリ取りの対象となっています。

製品の品質が落ちるから

バリがあることは、製品の品質の低下にも影響します。
組み立て時のバリの存在や、バリが剥がれて部品同士の間に挟まると、組み立て時の精度も悪化します。

複数ある生産プロセスに影響を及ぼすため、バリは必ず初期段階で除去することが求められます。

バリの種類

バリの発生メカニズムは、加工方法に由来します。
加工方法によって発生するバリの種類を解説します。

「切削バリ」「研削バリ」

ドリルやフライスなどによる機械加工によって生じるバリのことです。

切削・研削加工では、刃物や砥石が素材に食い込んでいく際に周辺の組織が逃げ、微細な塑性流動を起します。
対象物に力が加わると、弾性変形(元に戻る変形)→塑性変形(元に戻らない変形)→破断という流れで変形してバリが生じます。

「プレス加工バリ」「せん断バリ」

プレスやせん断などによる(素材の)塑性加工によって生じるバリのことです。

プレス加工などのせん断加工の場合、素材が引きちぎられる過程でバリが発生します。素材が引きちぎられる際、素材の一部がダイやポンチのクリアランスに流れ込むことが原因です。

「鋳造・鍛造・射出成型のバリ」

分割した金型を合わせた際のすき間に流れた材料が原因で発生するバリのことです。

鋳造や樹脂の射出成形加工では、型の合わせ目に生じる微細なすき間に素材が流れ込み、そのまま凝固することでバリが発生します。

バリ取りの方法

バリ取りの方法は他の金属加工と同じように、いくつか種類があります。
今回は機械を使ってバリ取りをする手法を5つ紹介します。

機械加工法

ボール盤やフライス盤のような機材を使ってバリ取りを行うことや、手仕上げ用の道具やブラシを用いてバリ取りをする方法です。

エンドミル加工などで、事前にバリが発生しないような加工を行うバリ発生抑止加工など、製造するものによって工程は微妙に異なる場合があります。

砥粒(とりゅう)加工法

砥粒と呼ばれる研磨材を吹き付けてバリを取る方法です。

砥粒ジェットが代表的な方法ですが、砥粒をバリに接しながら流動させて除去する砥粒流動や、バレル研磨とよばれる砥粒と製品を同じ容器に入れて研磨する方法もあります。

熱的加工法

熱的加工法によるバリ取りには二つの方法があります。

一つは火炎やプラズマによりバリのみを加熱除去する方法です。もう一つはバリ部分を通電し、電気抵抗で発熱させることで除去する方法です。

化学加工法

薬品を用いてバリを溶かす方法です。

研磨液・基本液・水を入れた処理槽にバリを含む製品を入れ、熱を与えて化学反応を起こしてバリを取り除いていきます 。

電気化学的加工

電解研磨や遠心バレル、スピンドル仕上げによるバリ取りの方法です。

バリ部分へ電流を流すことや、火やプラズマバリ部分にのみ当てて取り除いていきます。

バリ取りの課題

どのような生産現場でも行うバリ取りの作業ですが、近年はいくつか課題も見えてきています。

人手不足

これまでは手作業で対応していた現場が現在直面しているのが、バリ取りに関わる人材不足の問題です。

バリ取りは繊細な作業で担当者の負担が大きく、かつ単純な作業になりがちです。
そのため、バリ取り作業を楽しみ、高いモチベーションで取り組んでいる方は、それほど多くないのが実情なのです。

安定的な品質が維持できない

バリ取りは細かい作業のため、安定的な除去品質を維持するのが難しい領域です。
特にバリ取りを長年担当してきた作業員が高齢化し、ますます品質維持が難しくなっています。

バリ取りの品質が悪化すると製品不良だけでなく、従業員のケガなどの労災リスクもあるため、喫緊の課題といえます。

バリ取りへの産業用ロボット導入のメリット

従来は細かいバリ取りは職人が顕微鏡を覗きながら手作業にて対応していました。
しかし昨今は製造業のスマートファクトリー化の潮流もあり、工作機械やロボットによってバリ取りを自動化するケースも増えてきています。

バリ取りにおける産業用ロボット導入のメリットを紹介します。

人手不足が解消できる

人材不足によってバリ取りが間に合わなくなっていた工程を産業用ロボットで代替ができます。

製品づくりの根幹となるバリ取りができなければ、生産ストップという事態にもなりかねないため、バリ取りをロボットで自動化する流れは注目を浴びています。

品質が安定する

産業用ロボットを活用することで、バリ取りの品質安定が期待できます。

主に生産工程初期で生じる単純なバリ取りを産業用ロボットで代替することで、後工程の複雑なバリ取りに人員を対応させることも可能になります。

まとめ

バリ取りは細かい作業が多く、従来は人による作業の代表格でした。

昨今は人手不足でバリ取りを行える人が少なくなったため、バリ取り職人の繊細な技術を再現できる産業用ロボットも開発が進んでいます。

大掛かりな産業用ロボット導入が難しい場合でも、ロボットアームを使った部分的なバリ取りの自動化も進んでいるため、検討してみてはいかがでしょうか。

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