目次
ロボットの導入を行うときにコンサルから稼働できるまでを支援してくれるロボットシステムインテグレータ(SIer)。産業用ロボットの需要拡大とともにロボットSIerの市場も増加傾向にありますが、課題もあります。今回はロボットSIerの市場について紹介します。
・ロボットシステムインテグレータの市場は拡大している
・人材不足や人材育成が課題となっている
・課題解決のために国や団体でさまざまな取り組みが行われている
ロボットシステムインテグレータの市場は拡大している
ロボットシステムインテグレータの市場は拡大しています。
QYResearchが発行した調査レポート「ロボットシステムインテグレーションの世界市場 」によると、2018年の取引価格が約4.1兆円で、以降毎年9.88%市場が成長していき、2025年の世界市場は約8兆円に達する見込みがあることがわかりました。
現在、人手不足や作業員の重労働が課題になっているという背景もあり、企業では産業用ロボットの需要が高まっています。社内で生産ラインの最適な構築をし、稼働まで完了するためには相当な技術や知識、経験が必要です。
ほとんどの会社で持ち合わせていないため、自社だけではロボットの導入が困難です。そこで、ロボットシステムの設計から稼働までを行うためにロボットシステムインテグレータの会社が必要とされています。
ロボットの活用が増えている背景から、ロボットシステムインテグレータの需要が高まっています。
ロボットシステムインテグレータの市場の現状
ロボットSIerの市場を見ていきましょう。株式会社学情と株式会社パーソル総合研究所が発行したロボットSIer業界の人材確保に関する調査報告書のデータより、詳しく解説します。
SI業務の引き合いの傾向
SI業務が7割の企業で増加しているため、ロボットSIerの需要が拡大していることがわかります。
引き合いが増加した要因となった業種
主に製造業の会社がSIerに依頼していることで業務が増加しています。特に自動車や電機業界で需要が高いです。現在、製造業全体で人材不足が課題となっているという背景もあり、自動化や産業用ロボットの導入が増加しています。
引き合いが増加した要因となった企業の規模
大企業だけでなく、中小企業もSIerの依頼をしています。SIerの業務は会社の規模に関係なく依頼が増加していることがわかりました。
SIer会社の売上傾向
業務が増加していることもあり6割の企業で売上が増加していることがわかりました。このことから、市場規模は拡大する見込みがあります。
SIer業務の利益率傾向
売上が増加している一方で、利益率は横ばいの企業が半数に及びます。
エンジニアの社会的地位が低いことから単価自体が低くなったり、顧客の要望と予算が見合わず利益率を下げて契約したりしていることが原因です。
そのため、仕事が増えていても利益自体は変化していないのが業界の問題点として扱われています。
ロボットシステムインテグレータ市場の課題
ロボットSIer事業は需要が高まっていることがわかりましたが、業界全体でさまざまな課題を抱えています。具体的には以下のようなものがあります。
- 人材不足
- 人材育成
- スキル標準の明確化
人材不足
9割の会社が人材不足と感じています。顧客の機会損失やエンジニアの労働環境の悪化など、さまざまな要因によって人手不足の状態になっています。
人材確保のため採用活動を行っていますが、6割の企業は人材確保に満足できていない状況です。そもそも必要なロボットシステムインテグレータのスキルを持つ人材が少なく、応募者が集まらないため採用が困難になっています。
人材育成の急務
人材の確保以外に若手のスキル向上やプロジェクトマネジャーの育成、高度専門人材の育成と、人材育成で課題を感じている人が多いです。新卒採用をしている会社も多いことから、ロボットSIerのスキル向上が求められています。
スキル基準の明確化
スキルの基準が明確化されていないことも課題となっています。調査によると、6割の企業が、基準が必要だと考えていますが、作られていません。
基準がないことにより、育成、評価、待遇などが曖昧になっていることから人材確保ができない原因の一つとなっています。
ロボットシステムインテグレータ市場の課題への取り組み
ロボットシステムインテグレータ市場にある課題解決に向けて、国や団体でさまざまな取り組みを行っているためいくつか紹介していきます。
スキル標準・プロセス標準の制定
経済産業省と日本ロボット工業会がロボット革命イニシアティブ協議会を開き、ロボットSIerのスキル標準とプロセス標準を制定しました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
スキル標準
「ロボットSIerのスキル標準」は、ロボットSIerに求められるスキルを抽出しリスト化したものです。協議会では、11のカテゴリごとに各スキルのレベル1~7段階で設定したスキル標準シートを作成しました。
スキル標準シートによって、ロボットSIer企業が「自社はどれくらいスキルを持っているか」が明確になり、得意分野、苦手分野の把握ができるようになります。
苦手分野や能力の不足している部分を発見できるため、具体的な対策を検討することにも役に立ちます。
プロセス標準
プロセス標準はロボットシステム構築のプロセスを管理する標準化したものです。これまで標準的な管理手法がなかったことで顧客との認識のズレによるシステム構築のミスやトラブルが生じていました。
そのため、標準を作ったことにより、作業の可視化や認識の違いを防ぎ、SI会社と顧客がスムーズにロボットシステム構築を行えるようにしました。
SI検定の実施
2020年よりSI検定が開設されました。
SI検定はロボットSIを行う上でどのくらい知識を有しており、どのくらいの技術を習熟しているのかを測定するための検定試験です。FA・ロボットシステムインテグレータ協会がロボットSI育成プログラムの一環として実施しました。
国内のSI教育を海外展開して、人材を増やすほか、海外の企業が日本のロボットシステムを導入するための促進活動としても行っています。
合格すると、基礎知識とロボットの基本的な操作技能を持っていることを証明できます。合格すると、認定カードが発行され、称号が付与されます。称号のロゴを名刺に掲載することも可能です。
産業用ロボットの導入におすすめのSIer
産業用ロボットの導入にあたり、おすすめのSIer会社を紹介します。
筑波エンジニアリング株式会社
筑波エンジニアリング株式会社は茨城県の生産設備の省力化・自動化を行っている会社です。さまざまな生産システムを省力化してきており、設計から保守・点検まで全てを社内で対応しています。
ロボテック株式会社
ロボテック株式会社はダイカスト周辺機器やロボットシステムの加工以外の工程を受け持つ実力のある企業です。
20年以上培ってきたロボットシステムの研究開発によって、国内と海外累計200社以上の企業と取引を行っています。
株式会社レステックス
株式会社レステックスは産業用ロボットのシステム開発や高精度の温調機器などさまざまな試験装置の開発と製造を行っているSIerです。
IoTやAIにも力をいれており、独自の技術や豊かな発想力が強みです。
株式会社アイエスエンジニアリング
株式会社アイエスエンジニアリングは設立約30年の独立系SIerです。半導体や電子部品などの生産設備が得意で、高品質で高効率の生産システムを提供しています。
株式会社日本設計工業
株式会社日本設計工業は自動車業界や医薬品業界の生産システムや搬送システムに特化したマテリアル・ハンドリングシステムの専門メーカーです。
シンプルで低コストになるようなシステム設計を心がけています。
まとめ
システムインテグレータの市場について紹介しました。システムインテグレータは産業用ロボットの需要が高まっている背景から、市場が年々拡大していきます。人材不足やスキル不足が課題となっていますが、国や団体で取り組みを行っており、多くの企業で技術力が上がっていくでしょう。
最適なロボットシステムを導入するために、システムインテグレータに相談してみましょう。