産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.03.31

パラレルリンクロボット(デルタロボット)の価格は?メーカーごとの製品を紹介!

高速で正確な動作ができるパラレルリンクロボット(デルタロボット)。導入すると、多くの場合ロボット本体の数倍以上の費用が発生すると言われています。今回は、パラレルリンクロボットの導入コストの内訳やおすすめのロボット、導入事例について紹介していきます。

この記事の結論

・パラレルリンクロボットは56万円から購入できるが、一般的に100万~400万円程度
・ロボット本体以外にもロボット関連装置、ロボット周辺機器、システムインテグレータ費用が発生する
・さまざまなメーカーが販売しており、それぞれ特徴が異なるため、目的に合ったロボットを選ぶ必要がある

パラレルリンクロボットの導入価格を解説

パラレルリンクロボットの導入価格を解説します。どのロボットでも導入する場合、本体だけでなく、ロボットを目的通りに稼働させるために必要な費用がかかりますので詳しく見ていきましょう。

ロボット本体

パラレルリンクのロボット本体の価格はメーカーや製品の精度、大きさによってさまざまです。具体的な価格を表示しているメーカーは少ないため、一概には言えませんが、一般的に100万~400万円で販売されています。

なお、価格を公表しているメーカーで最も安価なパラレルリンクロボットは57万円でした。具体的な価格は各メーカーに確認する必要があります。

ロボット本体以外にかかるコスト

ロボット本体以外にかかるコストは以下の3点になります。

  • ロボット関連装置
  • ロボット周辺機器
  • SIer(システムインテグレータ)費用

ロボット関連装置

ロボット関連装置は設置するために必要な装置や目的の動作を行うためにロボットに装着する機器のことです。具体的には以下のようなものがあります。

  • ロボット架台…ロボットを設置する台
  • ロボットハンド…ロボットに目的の動作を行わせるためのエンドエフェクタ
  • センサ類…画像認識等に必要なセンサ
  • 天吊り走行装置…天井に吊るして水平方向に移動させるための装置

ロボット周辺機器

ロボット周辺機器は法で定められた安全設備や生産ラインの自動化を実現するために必要な設備のことをいいます。具体的には以下のようなものがあります。

  • ベルトコンベア…前後の工程からワークを自動的に運搬するための装置
  • PLC(プログラマブルロジックコントローラ)…複数の機械を効率よく稼働させるために、あらかじめ動作させる順番を決める制御盤。
  • ワークストッカー…加工品や製品を傷つけないように置くための装置
  • 安全柵…人がロボットの可動範囲内に侵入しないようにするための柵
  • エリアセンサ…作業者が意図せずに安全柵内に侵入した時にロボットを停止させるセンサ
  • 安全プラグ…安全柵内に入るときにロボットの動作を停止させるための装置

システムインテグレータ(SIer)費用

システムインテグレータ(SIer)費用はロボットの導入から稼働までをサポートしてくれるSIer会社に対して支払う費用のことです。SIerが支援してくれる業務として以下のようなものがあります。

  • コンサルティング
  • 基本設計、詳細設計
  • 周辺機器の手配
  • ハンドなどの製造
  • システムの組み立て
  • 生産ラインの組立、運搬、設置
  • ティーチング
  • 安全講習

金額のイメージ

経済産業省と一般社団法人日本ロボット工業会が発行した「ロボット活用の基礎知識2017」の想定例「製品の箱詰め工程」では以下の表のようになります。

ロボット本体パラレルリンクロボット2台800万円
ロボット関連装置ロボットハンドカメラ400万円
ロボット周辺設備・コンベア製函機
・封緘機
2500万円
SIer関連・構想設計
・リスクアセスメント
・詳細設計
・製造
・組立
・設置工事、調整、運搬
・安全講習
1350万円
合計5050万円

表のようにロボット本体の数倍はかかります。

おすすめのパラレルリンクロボット10選を価格と合わせて紹介

パラレルリンクロボットはさまざまなメーカーで作られており、それぞれメーカーの製品ごとに特徴があります。

そこで、販売されているパラレルリンクロボット10製品を価格とともに紹介します。ただし、価格が公表されていない製品もありますのでご了承ください。

IRB 360 FlexPicker|ABB

引用元:https://library.e.abb.com/public/fdd3ff5434dcd373c125778200025ad8/IRB%20360%20datasheet%20JP.pdf

ABBの販売しているIRB 360 FlexPicker™は、ピッキング用に開発された高精度のパラレルリンクロボットです。スピードや可搬重量、操作性に優れています。

ABBが独自に開発したPickMaster™ ソフトウェアによってプログラミングが大幅に簡略化されています。価格は公表されていません。

モジュラー式ドライテクノ デルタロボットシステム|igus

引用元:https://www.igus.co.jp/info/robotics-delta-robot?utm_source=direct&utm_medium=quicklink

igus社製のパラレルリンクロボット「モジュラー式ドライテクノ デルタロボットシステム」は低価格で軽量性に優れたロボットです。ピッキングに強く、位置決めが簡単にできるのが特徴です。

ドライリンW歯付きベルト駆動アクチュエータが搭載されており、無潤滑のためメンテナンスがいりません。価格は約57万円から購入できます。

Hornet 565|オムロン

引用元:https://www.fa.omron.co.jp/products/family/3512/

オムロンのHornet 565は食品、薬品、医療品業界に最適なパラレルロボットです。ロボットにサーボアンプとコントローラを内蔵したことで配線を減少させ、高速に動くベルトコンベアでのピッキング作業も問題なく行えます。

可搬重量8kgと大きく、複数個のワークをピックすることも可能です。オープン価格となっています。

YF002N ロボット|川崎重工

引用元:https://robotics.kawasaki.com/ja1/products/robots/pick-place/YF002N/

川崎重工のYF002N ロボットは動作性能が高く、素早く作業を行うことができます。コンパクトな構造のため、複数ロボットを導入しても省スペースに抑えられることが可能です。

潤滑剤は食品機械用を用いており、食品や医薬品業界でも安全に使用できます。価格は非公表です。

XT500S1/700S1|GKM

引用元:http://www.gkm.co.jp/prodcts.html

GKMのXT500S1/700S1は加工が得意なパラレルリンクロボットです。5軸加工の柔軟性が優れており、精度の高い切削ができます。

段取り替えの時間削減と寸法誤差を極限まで減らすことが可能です。価格は非公表となっています。

PLR-D500|パナソニック

引用元:https://biz.panasonic.com/jp-ja/products-services_fa_products_fatp

パナソニックのPLR-D500は内蔵されている6つのサーボモータによって、スピーディで高精度の作業を得意にしています。フレキシブル基盤などこれまで人が行っていた作業の自動化を実現できます。

ティーチングは人間がロボットを動かして教示するため、プログラミングが必要ありません。価格は非公表となっています。

M-1 iA|ファナック

引用元:https://fanuc.co.jp/ja/product/catalog/pdf/robot/RM-1iA(J)-06.pdf

ファナックのRobot M-11Aは軽量性に優れた高速組立ロボットです。小型ロボットのため、狭い場所でも設置できます。目的に応じて適切な自由度と動作範囲の設定が可能で、組立やピッキングなどに利用できます。

ロングアームタイプも用意されており、可動範囲をひろくすることが可能です。価格は非公表となっています。

MPS2シリーズ|村田機械

引用元:https://www.muratec.jp/mmc/parallel/

村田機械のMPS2シリーズは、毎分180サイクルの高速稼働ができるパラレルリンクロボットです。ハンド部の多軸機構により、複雑な動作が可能です。

不規則に流れる製品のピッキングを行うことで処理能力を向上することができます。価格は非公表となっています。

MOTOMAN|安川電機

引用元:https://www.yaskawa.co.jp/newsrelease/product/5916

安川電機のMOTOMANは超高速動作ができるパラレルリンクロボットです。画像認識センサにより、無作為に流れる製品のピッキングや整列作業が得意で、生産ラインの効率化を向上させます。

顧客が独自に機能を開発・組み込みが行えるツールも用意しており、利便性を向上することができます。価格は378万円です。

ALFIS|デモレ

デモレ社のパラレルリンクロボットはスイス製の高速ピックアンドプレースの用途のロボットです。パラレルメカニズムを世界で初めて商品化した会社の製品です。日本国内ではロボットシステムインテグレーターのJRCが独占販売していて、30年以上前に日本で初めてパラレルリンクロボットを導入したのもJRCです。価格は非公表となっています。

パラレルリンクロボットの導入事例|実際のコストも紹介

実際にパラレルリンクロボットがどのように使われているか見てみましょう。経済産業省と一般社団法人日本ロボット工業会が発行した「ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018」から導入事例と実際のコストを紹介します。

不規則に配置されたレトルトパウチ製品の整列作業の高速ロボット化|セントラルパック株式会社

セントラルパック株式会社では、カレーや釜めしなどのレトルトパウチ製品を包装工程に向けて配列を手作業で行っていましたが、パウチの配列が不規則のため包装機への供給作業が自動化できませんでした。

そこで今回、パラレルリンクロボットと高性能カメラ導入を行い、画像認識技術による配列の自動化が実現しました。現在は、作業人数を3分の1に減らすことができ、熟練者がいなくても安定供給できるようになっています。

労働生産性3.0倍
人数6人→2人
労働時間8時間→8時間
生産量62400個→62400個
その他の効果過酷作業の軽減
導入したロボットパラレルリンクロボットファナックM-2iA/3SL
導入コスト45.5百万円
1年あたりの効果導入効果:一日当たり4名の少人化年間稼働日数:200日労働生産性:@16,000×4名×200日=1280万円
回収期間3.6年

2台のパラレルリンクロボットを組み合わせた効率的なピッキングシステムの実現|株式会社テック

株式会社テックでは液晶ディスプレイ用偏光フィルムの断裁工程で、ピッキング作業の導入をしようと試みましたが、4台のロボットが必要でコスト面から厳しかったため、自動化に踏み込むことができませんでした。

そこで、Slerと協議した結果2台パラレルリンクロボットでも生産ペースを維持できるシステムを構築します。その結果導入コストを抑えながら自動化の実現ができるようになりました。

労働生産性3.0倍
人数12人→4人
労働時間16時間→16時間
生産量130万個→130万個
その他の効果流出不良が減った
導入したロボットパラレルリンクロボット ABB IRB360-3
導入コスト51.1百万円
1年あたりの効果労働生産性:8名(32.6百万円=34万円×8名×12ヶ月)の人件費に相当
回収期間1.6年

切り替えレス多品種対応自動化ラインによる生産プロセス効率化|紀伊産業株式会社

紀伊産業株式会社ではバリエーションの多い化粧品の包装工程の自動化が必要でしたが、これまでの手法で対応するには多額の追加費用が発生し、ロボットの導入が困難でした。

そこで、柔軟性に優れたパラレルリンクロボットを導入し、さまざまな品種に対応できるシステムを構築しました。結果、現在では段取り替えの時間が削減されたうえに、作業人数の削減が実現されています。

労働生産性4.1倍
人数19人→7人
労働時間7.25時間→7.25時間
生産量14000個→21000個
その他の効果流出不良が減った
導入したロボットパラレルリンクロボットファナックM-1 i A
導入コスト199百万円
1年あたりの効果省人効果:21.5人/日
効果:21.5×260千円=5,590千円/月稼働率他加味し、4,740千円/月効果
回収期間3.6年

パラレルリンクロボット(デルタロボット)について

パラレルリンクロボット(デルタロボット)の価格について紹介しました。一般的にロボット本体の価格は100万〜400万円程度ですが、ロボットを稼働させるためには本体以外にも費用が発生するためより多くのコストが発生します。

また、さまざまなメーカーがパラレルリンクロボットを発売しており、それぞれ特徴が異なります。最適なロボットを導入するためにもシステムインテグレータ会社に相談してみてはいかがでしょうか?

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