目次
産業用ロボットが駆動するためには、モーターが必要です。産業用ロボットに搭載されるモーターは主に3つの種類があり、それぞれメリットやデメリット、制御回路などが異なります。各モーターについて詳しく解説します。
・産業用ロボットはモーターで動く
・モーターは関節ごと、動作ごとに搭載され、減速機で制御されている
・モーターにはブラシレスDCモーターとステッピングモーター、サーボモーターの3つの種類がある
産業用ロボットがモーターで動く仕組み
産業用ロボットはモーターで動いています。モーターの仕組みは、以下の2つに大別できます。
- 関節ごと、動作ごとにモーターを搭載する
- 減速機でモーターの動きを制御する
関節ごと、動作ごとにモーターを搭載する
産業用ロボットの複雑な動きは、複数のモーターに支えられています。産業用ロボットでは関節ごと、また、動作ごとにモーターが搭載されています。
アーク溶接や組立に使用される旋回盤に1関節・1手首のある産業用ロボットを例として説明します。旋回盤には「腕旋回動作用モーター」と「腕前後動作用モーター」、関節部には「腕上下動作用モーター」と「手首回転動作用モーター」、手首部分には「手首ひねり動作用モーター」と「手首曲げ動作用モーター」などが搭載されています。関節数が増え、動作が複雑になると、モーターの数も増えていきます。
減速機でモーターの動きを制御する
原則として、モーターと減速機は組み合わせて搭載されます。1つのモーターに1つの減速機をセットするイメージです。モーターと減速機と組み合わせることで、モーターの力が引き出されます。
旋回盤に1関節・1手首のある産業用ロボットを例として説明します。旋回盤には「腕旋回動作用減速機」と「腕前後動作用減速機」、関節部には「腕上下動作用減速機」と「手首回転動作用減速機」、手首部分には「手首ひねり動作用減速機」と「手首曲げ動作用減速機」などが搭載されます。
産業用ロボットに搭載されるモーターの種類
産業用ロボットに搭載されるモーターは、主に次の3つの種類があります。それぞれの働きと特徴について解説します。
- ブラシレスDCモーター
- ステッピングモーター
- サーボモーター
ブラシレスDCモーター
ブラシレスDCモーターは、モーター自体が小さく軽量のため、放熱しやすく連続作業に耐えるという特徴があります。効率重視の作業場面に適しています。制御回路からインバータを経由してブラシレスDCモーターに指令が届き、インバータ回路による制御機能が働きます。
ステッピングモーター
ステッピングモーターは、回転角度の調節が可能なモーターです。比較的安価で、幅広い用途に用いられています。制御装置からパルス発生器、ドライバを経由してステッピングモーターに指令が届き、ドライバを用いたオープンループ制御機能が働きます。
サーボモーター
サーボモーターは、高速かつ高精度のモーターで、近年、利用が増えてきています。高価ではありますが性能が高いので、精密さが求められる場面で使用されています。
制御装置からパルス発生器、ドライバを経由してモーターに指令が届くという仕組みはステッピングモーターと同じですが、モーターからドライバへのフィードバック、ドライバからパルス発生器へのフィードバックがある点が異なります。サーボモーターでは、ドライバを用いたクローズドループ制御機能が働いています。
ブラシレスDCモーターのメリット・デメリット
産業用ロボットで利用されるモーターには、それぞれメリットとデメリットがあります。最初にブラシレスDCモーターを利用するメリットとデメリットを紹介します。
メリット
- 比較的安価である
- 放熱性が高く連続使用に耐えられる
- 運転速度が変わっても比較的トルクが安定している
- 多様な速度で作業が必要なロボットに用いることが可能
ブラシレスDCモーターは比較的安価で、なおかつ連続使用に耐えられます。単純作業を長時間繰り返す場面に適したモーターといえるでしょう。しかもトルクも比較的安定しているので、速度が変化する作業にも適しています。
デメリット
- 駆動回路が別途必要なため、トータルでは高価になることもある
- トルクは安定しているが、ムラが見られることもある
- 起動時に速度制御機能がばらつくことがある
ブラシレスDCモーター自体は高価ではありませんが、駆動回路を別途購入する必要があるため、トータルで見ると割高になることがあります。また、トルクにムラが生じることがあり、起動時の速度が安定しにくい点もデメリットです。
ステッピングモーターのメリット・デメリット
次はステッピングモーターのメリットとデメリットを紹介します。メリットとデメリットを把握することで、利用に適した場面が見えてきます。
メリット
- 指令パルスに同期するため追従性が高い
- 回転速度の調整が可能
- 位置決めが容易
- 比較的安価で利用可能な場面が多い
ステッピングモーターの動きは指令パルスと同期するため、作動性にばらつきが少ないというメリットがあります。また、回転速度を調整できるので、様々な速度で動かす必要がある産業用ロボットに適しています。
位置決めが容易なため、ポジショニングを頻繁に変える必要がある産業用ロボットへの搭載も適しています。さらに価格が比較的安価なので、高額になりがちな産業用ロボットの価格を抑えたいときにも検討できます。
デメリット
- 騒音、振動が大きい
- 高速回転のときはトルクが低くなる
- トルク不足により、脱調することがある
ステッピングモーターのデメリットとして、騒音と振動が大きいことを挙げられます。可動性の高さは位置決めが容易というメリットにつながりますが、騒音・振動を発生させる原因にもなるのです。
また、高速回転のときはトルクが低くなるため、加速がつきにくく一定の速度を維持できないこともあります。トルクが低すぎるために脱調することもあるでしょう。
サーボモーターのメリット・デメリット
最後にサーボモーターのメリットとデメリットについて紹介します。サーボモーターは近年使用される機会が増えてきているモーターで、最新型の産業用ロボットの多くに搭載されています。メリットとデメリットを理解することで、より適した場所に利用できるようになるでしょう。
メリット
- 高速かつ高精度で位置決めが可能
- 回転が円滑
- 高速回転時にも高いトルクをキープ
- フィードバック機能があるため、高速応答と安定した運転が期待できる
サーボモーターは、高速かつ高精度で位置決めすることができます。例えばブルーレイディスクなどの薄いもの、集積回路などの細かなものを製造する産業用ロボットには、サーボモーターを搭載することで、正確なポジショニングとスピーディな製造が実現できるでしょう。
また、回転が円滑に進むため、他の産業用ロボットの動きと連動させやすいという特徴もあります。高速回転時にも高いトルクを維持でき、速度低下やズレが起こりにくいです。その他のサーボモーターならではのメリットとして、フィードバック機能があることを挙げられます。トラブルや運転の記録が残るため、自己改善しながら連続運転を続けていけます。
デメリット
- モーターとドライバの制御機能が複雑なため、故障リスクがある
- 高価
- 運転コストも高い
高速度かつ高精度を実現するために、モーターとドライバの制御機能は複雑に作用しています。そのため、故障することも少なくなく、こまめな管理が求められます。また、性能が高いのである程度は仕方のない事ですが、価格が高いこともデメリットと言えるでしょう。消費電力も多く、運転コストも比較的高額です。
まとめ
産業用ロボットのモーターは主にブラシレスDCモーターとステッピングモーター、サーボモーターの3種類があります。それぞれの特徴を把握し、使い分けていきましょう。