目次
産業用ロボットを作るためには、設計や開発する技術者が必要です。産業用ロボットの設計を行う「産業用ロボット設計技術者」は、具体的にはどのような仕事をする人なのでしょうか。また、年収やなり方についても解説します。
・産業用ロボットの設計技術者とはロボット設計を担当する人のこと
・産業用ロボット設計技術者がロボットの仕組みや機能、操作方法などを決定する
・平均年収は666.9万円
・産業用ロボット設計技術者になるルートは主に6つある
産業用ロボット設計技術者とは?
産業用ロボットの製作には、さまざまな技術者が関わっています。その中でロボットの設計を担当するのが「産業用ロボット設計技術者」です。産業用ロボット設計技術者は、ロボットの仕組みや機能、操作方法などを決定していきます。
産業用ロボット設計技術者の仕事内容
産業用ロボット設計技術者は、単に設計するだけが仕事ではありません。設計に必要な情報を入手することや、クライアントと話し合って設計の方向性をまとめることなども仕事内容に含まれます。
- クライアントの相談を受ける
- ニーズに合う産業用ロボットの企画
- クライアントへの提案
- 産業用ロボットの設計
- 試運転と微調整
- クライアントへの操作説明
- 既存製品の改良
クライアントの相談を受ける
産業用ロボットメーカーでは、クライアントの相談を受けるとまずは営業担当者が応対し、クライアントがどのようなロボットを求めているのか詳しく伺います。その際、営業担当者だけでなく、実際にロボットを設計する設計技術者が同席することもあります。設計技術者はクライアントの話を直接聞くことで、産業用ロボットを企画しやすくなります。
ニーズに合う産業用ロボットの企画
クライアントの話を聞いてニーズを理解したうえで、クライアントの要望に沿う産業用ロボットを企画していきます。企画中に何度かクライアントとコンタクトを取り、細部について尋ねることもあります。
クライアントへの提案
企画が完成した後に、クライアントに図面やシミュレーションを見せながら、ロボット導入でどのような変化が得られるのか説明します。クライアントの要望を単に満たすだけでなく、より良いと思われるアイデアがある場合はクライアントにプランとして提案します。
なお、クライアントが企画・提案を承認すると見積もりの段階に進みますが、見積もりは営業担当者が行うことが一般的です。
産業用ロボットの設計
見積もりを提示し、クライアントから正式に依頼を受けてから、設計に取り組みます。設計技術者が設計した後、製造担当者が実際にロボットを作っていきます。
試運転と微調整
産業用ロボットが完成したら、まずは社内で試運転をします。予定していた機能がすべて使えるかチェックし、問題がない場合はクライアントに会社に来てもらい、試運転の様子を一緒に確認してもらいます。クライアントのコメントも参考に、必要に応じて微調整を行います。
クライアントへの操作説明
微調整を行い完成品を作成後、クライアントから注文を受けた台数分の製造を行います。クライアントの工場に運び込み、据え付けます。その後、ロボットの操作方法について説明します。なお、据付は作業担当者が行い、操作方法の説明は設計技術者が行うことが一般的です。
既存製品の改良
以上に紹介したのは、いずれもクライアントから依頼を受けてオーダーメイドの産業用ロボットを作成する際の仕事内容です。産業用ロボット設計技術者は、オーダーメイド品の設計以外にも、既存製品の改良やシリーズ製品などの設計も行います。
産業用ロボット設計技術者の年収
産業用ロボット設計技術者だけの人数や年収については、厚生労働省ではデータは公表されていません。しかし、産業用ロボット開発技術者や産業用ロボットの研究者など、産業用ロボット関連の技術者・研究者全体としては全国に245,000人強いるとされており、平均年齢は46.1歳、平均年収は666.9万円となっています。
産業用ロボット設計技術者のなり方
産業用ロボットを作ってみたいと考えている方は、どのような学校に行き、どこに就職すれば良いのでしょうか。なり方のモデルコースを6つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 高等専門学校(高専)から民間企業へ就職
- 高校から大学工学部→民間企業へ就職
- 工業高校から大学工学部→民間企業へ就職
- 大学工学部から大学院→民間企業へ就職
- 大学工学部から大学院→国・民間研究所へ就職
- 大学工学部から大学院→大学に就職
高等専門学校(高専)から民間企業へ就職
5年制の高専で学び、民間企業へ産業用ロボット設計技術者として就職するルートがあります。中学を卒業して最短5年で就職できるので、もっとも早く実務に携われるルートです。なお、ロボット専門の高専もあるので、ロボットに対する学びに特化したい方は検討することができるでしょう。
高校から大学工学部→民間企業へ就職
普通科高校から大学工学部、民間企業へ就職するルートもあります。日本では高専や工業高校よりも普通科高校が多いため、もっとも一般的なルートといえるでしょう。
工業高校から大学工学部→民間企業へ就職
工業高校から大学工学部、民間企業へ就職するルートがあります。工業高校から大学工学部へは推薦も多いため、中学校以前からロボット設計に興味がある場合はこのルートを選ぶことができるでしょう。
大学工学部から大学院→民間企業へ就職
大学工学部や高専から企業へ就職する人ばかりではありません。工学部は大学院進学率が高いため、大学院で学んでから民間企業に就職する方も多いです。
大学工学部から大学院→国・民間研究所へ就職
民間企業ではなく研究所に就職したい場合は、大学院修了以上の学歴が求められることも多いです。研究職に就く以外は修士課程のみ修了でも不問のケースが多いため、国や民間の研究所で産業用ロボット設計技術者として働きたい方は、大学院への進学も考えておきましょう。
大学工学部から大学院→大学に就職
大学の教職に就きたい場合も、少なくとも修士課程以上を修了していることが求められます。修士課程修了後に助手や助教として働きながら博士課程に進学する方も少なくありません。
産業用ロボット設計技術者になるために取得しておきたい資格・経験
大学工学部や大学院で産業用ロボットを学んでいても、必ずしも希望する企業や研究所に就職できるわけではありません。就職に有利になる資格を紹介しますので、希望する企業等で働きたい方はぜひ目指しましょう。
なお、資格を取得していると就職後もキャリアアップしやすくなることがあります。常に新しいスキルや情報を習得するためにも、就職後も資格取得をするなど学び続けることが大切です。
- アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト
- 情報処理技術者試験
- CAD利用技術者試験
- 電気主任技術者試験
- 機械設計技術者試験
アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト
テレビでも毎年放映している「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」、通称ロボコンは、資格ではありませんが出場経験があると就職に有利になることがあります。入賞や優勝などの結果が出れば、さらに就職に有利になるでしょう。
情報処理技術者試験
「情報処理技術者」は産業用ロボットの設計を行うならばぜひ取得しておきたい国家資格です。技術者としてのスキルの目安にもなります。
CAD利用技術者試験
「CAD利用技術者」は、産業用ロボット関連の技術者試験の中では高い知名度の資格です。民間資格ではありますが受験者も多いです。なお、試験は三次元と二次元に分かれています。
電気主任技術者試験
「電気主任技術者」は配線や電気の扱いに特化した資格で国家資格です。一種・二種・三種があり、二種と三種では扱える電気工作物に制限がありますが、一種はすべての電気工作物を扱えるようになります。
機械設計技術者試験
「機械設計技術者」は民間資格です。設計技術者の能力向上をチェックする資格で、3級は産業用ロボット設計技術者を目指す学生でも受験できる難易度です。
まとめ
産業用ロボット設計技術者は、クライアントに依頼を受けるところから実際に設計し、操作方法を説明するまで一貫して業務を行います。産業用ロボット設計技術者を目指している方は紹介した進学ルートを検討し、就職しやすいように資格取得も目指しましょう。