産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.03.31

産業用ロボットの課題とは?産業用ロボットの現状や市場について解説

「ロボット大国」とも呼ばれる日本ですが、世界情勢や時代の変化にともない新たな課題にも直面しています。本記事では産業用ロボットの現状や課題について解説します。

本記事を読むことで、産業用ロボット業界の一般的な課題のみならず、製造業や建設業、農林水産業、食品業といった業種ごとの課題や取り組みについても知ることができます。

この記事の結論

・産業用ロボットに残された主な課題は、システムインテグレーションの精緻化
・グローバル化への対応の2点
・製造業界ではロボットビジョンによって生産ラインを最適化する技術やクリーンルームに対応できるロボットなどが求められている
・建設業界では人の介在を最小限におさえられる自立型ロボットの実用化が急務となっている
・農林水産業界では自然災害への対処法としてスマート農業の取り組みが進められている
・食品業界では多品種多変量生産やクリーン環境に対応可能な協働ロボットが活躍中

産業用ロボットに残された一般的課題

ここでは産業用ロボット業界全体に残された2つの喫緊課題について解説します。

  • システムインテグレーションの精緻化
  • グローバル化への対応

システムインテグレーションの精緻化

産業用ロボットを実際の現場に導入するためには、ロボット本体だけでなく、現場に合わせて周辺機器などを開発・設計・設置するシステムインテグレーション(SI)のプロセスが必要不可欠です。

そのため、メーカーだけでなく、SIを専門に手がけるロボットシステムインテグレータ(ロボットSIer)の技術力や制度の充実化を図ることが喫緊の課題となっています。

グローバル化への対応

産業用ロボット市場はグローバル化が加速している一方、新興国などでは、ロボットやSIを専門的に扱える人材が不足しているのが現状です。

そのため、産業用ロボットの海外展開を進めるためには、ロボットに関する専門知識が少ない現場であってもロボットを適切に導入できるような、シンプルな自動化設備やユーザーインターフェースに優れた機器開発が求められています。

産業用ロボットの需要が高い中国では自国でのロボット製造を強化して輸入コストを抑える動きがあるため、競合よりもコストパフォーマンスに優れるスペックダウン品の開発や、部品コストを下げながらも性能を発揮するトータルコストを重視した製品など、ロボット大国の日本ならではの施策を打ち出すことが急務となっています。

業界別に見る産業用ロボットの課題と課題に対する取り組み

ここでは、製造業界、建設業界、農林水産業界、食品業界に分けて、産業用ロボットに関する課題や近年の取り組みなどを紹介します。

製造業界

課題

製造業界においては、外観検査や自動検出技術の向上や設備異常の検知など、生産システムのどこに問題が発生しているかを即時に見分けてデータ化し、収集したデータに基づき生産ラインを最適化する技術が求められています。

課題に対する取り組み

ロボットビジョン(ロボットが対象物を認識する機能)を搭載したロボットの開発が進んでいます。たとえば、オムロンの手がけるパラレルリンクロボット「Quattroシリーズ」では、ロボットアプリケーションに最適化された高信頼画像センサシステムと連携させることによって、1分あたり180cpm(cycle per minute)の高速ピック&プレース作業を実現します。

建設業界

課題

建設業界においては、作業員にとって重労働となる作業や危険物を取り扱う作業を代替できるような産業用ロボットが求められています。

現実的には、建設工程の全てを自動化するというよりも作業者のサポーターとして危険な作業の一部を代替できる「協働ロボット」のシステム構築が急務とされています。

課題に対する取り組み

搬送や溶接などの作業工程への人の介入を出来るだけ減らせるようなシステム開発が積極的に進められています。たとえば、清水建設が手がける「シミズ・スマート・サイト」の一環として開発された溶接ロボット「Robo-Welder」は3次元情報とAI(人工知能)を搭載した自律型ロボットであり、所定の位置まで誘導するだけで自主的に溶接を行うことができます。

農林水産業界

課題

日本の農林水産業界にとっての最重要課題は台風や地震といった自然災害への対処です。災害大国とも言われる日本では、災害が起こることを前提とした農業の自動化が求められています。

課題に対する取り組み

機械学習やAI(人工知能)などの最新技術を活用した「スマート農業」の一環として、革新的な取り組みが進められています。たとえば、農園内での産業用ロボットの自動運転システムや空中から農産物などのデータを収集するドローン型ロボットなども実用化されつつあります。

食品業界

課題

女性の社会進出の増加や感染症の蔓延といった昨今の社会変化に伴い、調理済みの惣菜を自宅で食べるという「中食」の需要が拡大しています。

その一方で、食品業界も含む「三品産業」では工場内の衛生管理が重視されるため、産業用ロボットの導入が遅れ気味であるのが現状です。そのためクリーン環境での作業にも対応できる産業用ロボットを充実化させることも課題の一つとなっています。

またコンビニ弁当などの製造時に求められる多品種多変量生産への対応や柔らかい食材をロボットで扱いにくいという課題などが残されています。

課題に対する取り組み

作業員と同じ空間で作業ができる協働ロボットの開発と導入が進んでいます。たとえばざる蕎麦の生産ラインにおいて、袋に入った調味料などを一定数詰めていく作業やパン生地の計量・型入れ作業をロボットで自動化する取り組みが始まっています。

まとめ

本記事では産業用ロボットにまつわるさまざまな課題について解説しました。

産業用ロボット市場ではシステムインテグレーションの精緻化やグローバル化への対応といった課題も残されていますが、時代や社会のニーズに対応すべく、ロボットビジョンやスマート農業など革新的な取り組みも進められています。

産業用ロボットの需要は今後も増加の一途をたどることが予想されるので、この記事でご紹介した各種業界における取り組みなどを参考にしながら、産業用ロボットの導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか?

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