目次
直交ロボットは低コストかつ柔軟な導入が可能なことから多くの企業で採用されています。
しかし、直交ロボットなどの産業用ロボットを導入した経験がない工場も少なくなく、直交ロボットについて詳しく分からない方も多いでしょう。
本稿では直交ロボットの特徴や導入事例、メリット・デメリットを解説します。
・直交ロボットは、組立・搬送・運搬・加工など幅広い用途で活用されている
・直交ロボットはコストパフォーマンスが高く導入しやすい
・ただし、設置面積の大きさやシンプルすぎる動作範囲が導入のネックになることもある
直交ロボットの構造
直交ロボットの構造は非常にシンプルです。ほとんどは2~3つの交差するスライド軸から構成されています。
単軸直動ユニットと呼ばれる直線的なパーツのみで作られているため、可動範囲は直線的なものに限られます。
直交ロボットの主な使用用途
直交ロボットはどのようなシーンで活用されているのでしょうか。主な使用用途について解説します。
製造業の組立や搬送
組立や搬送工程で直交ロボットは重宝されています。
組立や搬送は単純な作業になることが多く直線的な動きで十分履行可能なため、直交ロボットが導入されるケースが多いです。
組立や搬送作業を人が行う場合、作業員の能力に依存するため作業効率にバラツキがあり生産性が安定しません。
このような問題を解決することを直交ロボットは得意としています。
食品など繊細物の運搬
直交ロボットは直線的な動きしかできない反面、精密な動作が可能です。
そのため、崩れやすい食品や繊細に扱う必要がある商品の運搬なども器用にこなせます。
成形・加工
精密な動作を得意とする直交ロボットは、成形や加工などこれまで熟練の職人が必要とされていた工程でも活躍します。
6面切削鋼材の加工工程に直交ロボットを導入した事例では、カメラ撮像および位置補正機能を直交ロボットと組み合わせることで多種多様なサイズに完全自動で対応できるようになりました。
直交ロボットのメリット
他のロボットと比べて、直交ロボットを導入するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく解説します。
高精度な動作が可能
直交ロボットは、多関節ロボットとは異なり直線的な動きしかできないため複雑な作業には不適です。
しかし、その分ブレを最低限に抑えることができるため、高精度な動作が可能です。
低コストで導入可能
直交ロボットはその構造上、安価での生産が可能です。自社で直交ロボットを生産する企業もあるくらいです。
また、カスタマイズ性が高いため、現行の生産ラインに補助的な役割で導入することもできます。
もちろん、本格的な自動化システムを構築する場合もその他の産業用ロボットを導入するよりも低価格に抑えられる傾向にあります。
他ロボットとの柔軟な組み合わせが可能
直交ロボットは動作のブレがほとんどないため、複数のロボットとの柔軟な組み合わせが可能です。
センサーと連動させたり、単軸ロボットや汎用アクチュエータと組み合わせたり、多関節ロボットの架台に使用するなどして2つのロボットを同時に動作させたりすることもできます。
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直交ロボットのデメリット
直交ロボットのメリットについてお伝えしましたが、もちろんメリットがあればデメリットもあります。
これから導入を検討している人は、直交ロボットができないことをきちんと理解しておきましょう。
複雑な動作ができない
直交ロボットは、高精度な動作を得意とする一方で構造上複雑な動作ができません。垂直または水平方向の直線的な動きにしか対応していないためです。
複雑な動作をロボットに任せたい場合は、多関節ロボットなど、複雑な動作が可能なロボットの導入を検討しましょう。
設置面積が大きい
直交ロボットは直線的な動きしかできないため、動作内容問わず設置面積が大きくなりやすい傾向にあります。
逆に多関節ロボットの場合は、関節を折り曲げることで上手に空間を使うことができるため、直交ロボットよりも作業範囲に対する設置面積は小さくなる傾向にあります。
直交ロボットの導入を検討している場合は、事前に設置可能な面積を把握しておきましょう。
精度・強度を保った大型化が難しい
ワークが主軸から遠かったり主軸の高さを変える必要がある場合は特に顕著になります。
柱を1本の軸で構築すると、張り出し分のスライド軸の重みでひねり(モーメント)が掛かり、誤差が生まれやすく、張り出し部分に負荷がかかって破損しやすくもなります。
これを防ぐには片持ちではなく2本の柱が必要になります。このタイプで柱側に昇降機能を持たせる場合、リンクさせる機構を設計するか、ロボットシリンダの性能に頼る必要があり、精度と信頼性を高めるためのコストが割高になってしまいます。
ある程度の大きさを想定するのであれば、スペースを確保して門型を設置するか、速度面・費用面で多関節ロボットの導入と比較・検討することが大切です。
直交ロボットの導入事例
直交ロボットの導入事例をご紹介します。実際にどのように活用されているのかを知ることで、自社での活用イメージをより鮮明にすることができるでしょう。
ネイル筆製造工程のロボット化
熊野筆と呼ばれるネイル筆の製造工程に直交ロボットを導入した事例です。
導入前まで、熊野筆は製作工程が複雑なためほとんどが手作りでした。
しかし、職人の高齢化や安価な中国製品の台頭など、さまざまな環境要因により製造コストの削減が急務となっていました。
そこで本事例では、熊野筆の製造工程(計量・接着・バリ取りなど)をすべてロボット化するため6台のロボットを導入しました。
その結果、製造に必要だった従業員の数は6人から1人になり、導入後の労働生産性は導入前の30倍になりました。
釣銭作成機運搬工程のロボット化
釣銭作成工程で直交ロボットと単軸ロボットを導入した事例です。
導入前までは多関節ロボットを使用していましたが、1日約2,500回稼働するため多関節ロボットでは関節部分の耐久性に問題がありました。
そこで関節部分を直交・単軸型に変更し、エラー対応の迅速化を目的とした「音声ガイダンス」の導入など新たなシステムインテグレーション手法を導入しました。
その結果、労働生産性は導入前の1.4倍となり、年間約1,500万円のコスト削減を実現しました。
直交ロボットのメーカー紹介
最後に、直交ロボットの主要メーカーをご紹介します。導入を検討される方は各社のホームページをご覧ください。
企業名 | 創業年 | 従業員数 |
蛇の目ミシン工業株式会社 | 1984年 | 3,528人 |
芝浦機械株式会社 | 1938年 | 1,796人 |
武蔵エンジニアリング株式会社 | 1978年 | 750人 |
株式会社近藤製作所 | 1939年 | 316人 |
株式会社宮山技術研究所 | 1973年 | 38人 |
株式会社サンエイテック | 1987年 | 90人 |
株式会社エフ・エー・テクノ | 1969年 | 164人 |
株式会社アイエイアイ | 1976年 | 1,182人 |
平田機工株式会社 | 1951年 | 2,201人 |
安長電機株式会社 | 1961年 | 18人 |
ヤマハ発動機株式会社 | 1955年 | 10,567人 |
オリムベクスタ株式会社 | 1984年 | 76人 |