産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.03.17

搬送機械10種類・メーカー10選と導入のポイントをわかりやすく解説

「自社工場のワークを自動で搬送したいが、どんな機器・装置があるのか知りたい」「搬送機械導入にあたってポイントを知りたい」こんな疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか?本記事では、FA(ファクトリーオートメーション)業界で10年以上働いている筆者が次の内容についてわかりやすく解説します。

・搬送機械の種類

・搬送機械メーカー

・搬送機械導入のポイント

この記事を読めば、搬送機械についての基礎知識を知ることができ、搬送機械を導入するにあたって気を付けるべきポイントがわかるようになります。搬送機械に興味を持った方、自社製造工程の搬送自動化について検討中の方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。

搬送機械とは

製造ラインのコンベア
製造ラインのコンベアロボカル

搬送機械とは、工場の生産工程において「ワークをある工程から次の工程に運ぶ」ことを自動化する機器・装置です。搬送を自動化する需要が高まっている背景には、労働人口減少による人手不足があります。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの経済レポートによると、「15~54歳の2030年の労働力人口は、人口減少を背景に2017年から237万人減少する」と言われています。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済レポート

搬送機械を導入するメリット

サイクルタイムのバラツキが少なくなる

生産現場では、各工程にかかる時間(サイクルタイム)を管理し、特定の工程のサイクルタイムが長くなりすぎないようにしています。サイクルタイムにばらつきがあると、サイクルタイムの遅いほうに合わせて生産計画をたてざるを得ません。

そうなると、サイクルタイムが速くなった分の在庫が増え、在庫を確保するスペースや在庫管理の時間が無駄になります。搬送機械で搬送を自動化することによって、サイクルタイムのバラツキが少なくなり、その分の無駄を減らすことができます。

現場の人手不足への対応ができる

少子高齢化や働き方改革の影響で、工場の現場で働く人口・時間は今後減少すると考えられます。搬送そのものは、ものづくりにおいては加工や組立と違って何も付加価値を生まない工程です。搬送工程を自動化することで、人は付加価値のある工程や、生産性を上げるための仕事ができます。

重量物や特殊環境での搬送が可能になる

搬送機械を使うことによって、人が運べないような重量物(たとえば、自動車のボデー)や特殊環境(たとえば、真空環境)での搬送が可能になります。

搬送機械10選

ここでは、搬送の自動化においてよく使われる搬送機械を10選紹介します。それぞれの特徴や、どのような場所で使われているかについて解説します。

ベルトコンベア

ベルトコンベヤ
https://www.okurayusoki.co.jp/product/conveyor/lightweight/belcon_mini/dmh.html

ベルトコンベアは、ゴムベルトを台上で回転させ、その上にワークを載せて搬送する機械です。ワークを大量かつ迅速に搬送できるのが特徴です。製造現場では、電子部品の組立・食品製造の工程間搬送に使われています。

ローラーコンベア

ステンレス製コンベア
https://www.okurayusoki.co.jp/product/conveyor/gravity/roller/nts.html

ローラーコンベアは、金属製のローラーを連続してつなげ、その上にワークを載せて搬送する機械です。製造現場においては、比較的重量物のワークを大量かつ迅速に搬送する場所で使われています。製造現場以外でも、物流センターにおいて、商品の荷受けや倉庫からの搬出でローラーコンベアは多用されています。写真のようなカーブタイプのものもあり、搬送経路を比較的自由に設計できます。

チェーンコンベア

チェーンコンベア
https://www.daifuku.com/jp/solution/automotive/

チェーンコンベアは、チェーンをコンベア上で駆動させて、チェーンに付いているキャリア上にワークを載せて搬送する機械です。ベルトコンベア・ローラーコンベアのワークと比べて重いワークを運ぶことに使用されます。例えば、自動車工場で車体を搬送させながら組立を行うラインでは、チェーンコンベアが使われています。

リニア搬送システム
https://www.yamaha-motor.co.jp/robot/lineup/lcm/lcm-x/

リニア搬送システムは、リニアモーターでワークを運ぶテーブルを駆動させ、コントローラーでテーブルの位置を把握・制御するシステム一式を指しています。リニア搬送システムを搬送工程で使うと、ベルトコンベアよりも高速・高精度なため、搬送時間を短縮できます。

また、個々のテーブルを独立して制御できるため、搬送経路に分岐を作ってワークの振り分けや追い越しなどが自由にできるようになっています。そのため、多品種少量生産のラインへの適用が期待されています。

リニア搬送システムは国内外のさまざまなメーカーが新製品を開発しており、今後の製品としての発展・生産ラインへの適用が期待されています。

AGV(無人搬送車)
https://www.meidensha.co.jp/products/logistics/prod_01/prod_01_01/index.html

AGV(Automated Guided Vehicle)とは、無人で搬送・運搬をする移動ロボットです。

床に磁気テープを敷いて、その経路上をロボットが走る仕組みになっています。決まった経路上しか走れないという特性はありますが、その分導入はしやすく、さまざまな工場で部品の搬送用ロボットとして用いられています。

ウエハ搬送ロボット

ウエハ搬送ロボット
https://kawasakirobotics.com/jp/products-robots/ntj10/

ウエハ搬送ロボットは、半導体製造の原料となるシリコンウエハをプロセス室に搬送するロボットです。シリコンウエハはプロセス室でさまざまな加工がされ、パソコン・スマホ・家電・自動車などに使われるICチップになります。

ITの発展や自動運転などの技術進歩によって需要が増えており、国家間競争力にも大きな影響を与える半導体。その需要増にともない、半導体搬送ロボットの市場も大きくなっています。半導体搬送ロボットはクリーンロボットの一種で、クリーンルームというホコリやチリの少ない場所で働くことが求められています。

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OHT(天井走行式無人搬送車)

村田機械株式会社
https://www.muratec.jp/cfa/products/

OHTは「Overhead Hoist Transport」の略で、クリーンルームの天井に設置した軌道上を走行する無人搬送車です。製造途中のシリコンウエハは、複数枚まとめてFOUP(フープ)と呼ばれる箱に入れられます。

クリーンルーム内は半導体製造装置が敷き詰められているため、空いている天井のスペースを活用し、FOUPを搬送します。

電動シリンダー

電動シリンダー
https://www.iai-robot.co.jp/product/series/slider.html#productLine

電動シリンダーは、モーター・ボールねじ・リニアガイドをユニット化した装置です。使用例としては、スマホ用の基板を次工程である検査工程に搬送する作業。ワークを短い距離で直線的に搬送する工程で電動シリンダーが使われています。

従来は空気圧駆動のシリンダーが主流でしたが、エネルギー効率の高さや、位置決め精度の良さなど、電動によるメリットが大きく、電動シリンダーへの置きかえが注目されています。

専用機械

間搬送装置です
https://www.h-f.co.jp/product/detail08.html

用途ごとに特化した専用機械で搬送する方法です。例えば、プレス間搬送装置です。複雑な形状をした板金を成形するために、複数のプレス工程を行います。プレス間搬送装置はプレスが終わった板金を次工程のプレスに搬送するための装置となります。

専用で設計することで、プレス機の中に搬送機械を内蔵できる、サイクルタイムを最短にできる、というメリットがあります。

産業用ロボット

パレタイジングロボット
https://www.e-mechatronics.com/product/robot/palletizing/lineup/hc30pl/spec.html

産業用ロボットも、搬送機械として使われています。ワークを搬送する用途では、パレタイジングロボットとも呼ばれています。

産業用ロボットは1kg~数百kgの可搬重量があり、電子部品の搬送から、商品が入った段ボールのパレットへの積み上げ・積み下ろしなど、さまざまな搬送用途で使われています。

プログラムを変更することで、生産ラインの変更があっても別の用途で運用できるのが産業用ロボットのメリットです。

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搬送機械のメーカー10選

ここでは、搬送機械のメーカーを紹介します。これまで紹介してきたように、搬送機械にはさまざまな製品があります。製品ごとに得意とするメーカーは異なります。

ベルトコンベアのメーカー:オークラ輸送機

オークラ輸送機は、コンベア機器、物流向け仕分け設備などを製造しているメーカーです。

ベルトコンベア製品では、一般用途に加えて、食品業界など水洗いが必要な用途で使えるオールステンレス製品もラインアップされています。

参照:オークラ輸送機(https://www.okurayusoki.co.jp/

ローラーコンベアのメーカー:マキテック

マキテックはローラーコンベアほか各種コンベア製品を製造する会社です。ローラーコンベアは直線・カーブコンベア、傾斜がついたコンベア、上下方向の搬送にも対応したコンベアなど各種製品を取りそろえています。

参照:マキテック(https://www.makitech.co.jp/index.html

チェーンコンベアのメーカー:ダイフク

ダイフクは搬送機器のメーカーで、物流分野をはじめとして様々な業界の搬送システムを手掛けているメーカーです。ダイフクのチェーンコンベアは、自動車工場の完成車組み立てラインで使われています。

搬送・運搬工程は「マテリアルハンドリング」とも言われるのですが、ダイフクはマテリアルハンドリングのサプライヤーで世界No.1の売り上げがあります(2022年現在)。

https://www.mmh.com/article/top_20_material_handling_systems_suppliers_2022

リニア搬送システムのメーカー:ヤマハ発動機

ヤマハといえば一般の方から見るとバイクメーカーの印象が強いですが、FA(ファクトリーオートメーション)機器の事業も行っています。産業機械では電子部品の実装機(チップマウンター)やスカラロボットなどを取りあつかっています。

リニア搬送システムでは「LCM」というシリーズで製品展開をしており、展示会では新しい搬送システムとして積極的にデモを行っています。

参照:ヤマハ発動機(https://www.yamaha-motor.co.jp/robot/lineup/lcm/lcm-x/

AGV(無人搬送車)のメーカー:Swisslog

SwisslogはスイスのAGV世界最大手メーカーで、AGVにおいては世界最大手メーカーと言われています。2014年に産業用ロボット大手KUKAに買収されています。

https://www.swisslog.com/en-us/products-systems-solutions/transport/agv-automated-guided-vehicles

ウエハ搬送ロボットのメーカー:川崎重工

川崎重工は産業用ロボットの総合メーカーで、垂直多関節ロボットパラレルリンクロボットも製造しています。半導体搬送用ロボットで世界シェアの5割程度を握っており、同社の半導体向けロボットの21年度の売上は363億円となっています。

参照 https://newswitch.jp/p/29963

参照 https://www.khi.co.jp/ir/pdf/pre_220510-1j.pdf

半導体の需要増に伴い、半導体製造装置の市場成長率も高まっており、近年のウエハ搬送ロボットビジネスにとっては追い風となっています。

OHT(天井走行式無人搬送車)のメーカー:村田機械

村田機械はロジスティクス(物流)・クリーンFA・工作機械・情報機器・繊維機械の事業セグメントがあり、搬送用ロボット以外にも工作機械や繊維機械も手掛けるメーカーです。搬送用ロボットにおいては、病院向けに薬品などを搬送するロボットシステムも発売しています。
参照 https://www.muratec.jp/

電動シリンダーのメーカー:IAI

IAIの電動シリンダーは、工場の製造工程のさまざまな用途で使用されています。電動シリンダーのラインアップも、ストローク・可搬重量・形状・防塵防滴仕様の有無などさまざまな製品を取りそろえています。

参照 https://www.iai-robot.co.jp/

プレス間搬送装置のメーカー:エイチアンドエフ

搬送機械の専用機械メーカーとして、プレス間搬送装置のメーカーであるエイチアンドエフを紹介します。エイチアンドエフは、プレスライン(連続して複数のプレス工程がある生産ライン)用のプレス間搬送装置を製作しています。専用機械に搬送させることで、サイクルタイムを最小化することができ、プレスラインの生産性向上に貢献しています。

参照 https://www.h-f.co.jp/product/detail08.html

パレタイジングロボットのメーカー:安川電機

安川電機は、産業用ロボット世界4強の1つと言われているロボットメーカーで、自動車業界などさまざまな業界で実績があります。パレタイジングロボットでは、30kg可搬の人協働ロボット「MOTOMAN-HC30PL」などを製造・販売しています。

参照 https://www.e-mechatronics.com/product/robot/palletizing/lineup/hc30pl/spec.html

搬送機械を導入するときのポイント

マイルストーン
マイルストーン

搬送機械を導入する際に気を付けるポイントは、以下の通りです。

・目的をはっきりとさせておく

・価格・導入費用と効果が見合うか確認する

・搬送機械に関する情報収集を行う

・「提案依頼書(RFP)」の原案を作成しておく

・導入を依頼する会社を選ぶ

これらのポイントは、産業用ロボットを導入する際のポイントに似ています。詳しくは以下の記事でも解説しているのでご参考ください。

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搬送機械の導入はロボカルにお任せください!

「導入したい搬送機械はなんとなくわかったけど、自社の生産システムにどのように組み込めるかがよくわからない」「搬送機械に強いSIerとのつながりがなく、誰に相談すればよいか分からない」

初めて搬送機械を導入する際は、こんな不安もあると思います。ロボカルでは提携SIerの導入事例データベースにもとづき、搬送機械やロボットのシステム提案を行っています。貴社の搬送機械の導入も支援させていただきますので、上記のお困りごとをお持ちの方はぜひロボカルまでご相談ください!

まとめ

この記事では「搬送機械の種類、搬送機械のメーカー、搬送機械導入のポイント」を解説しました。冒頭でも述べたように、少子高齢化や働き方改革の影響で、工場の現場で働ける人口・総労働時間は今後も減少すると考えられます。このような背景から、搬送工程の自動化はいっそう求められると筆者は考えています。

「搬送機械を導入したいが、自社だけで進めるのは不安」という方は、ぜひロボカルにご相談ください。SIerのご紹介や搬送機械の導入をサポートさせていただきます。

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