産業用ロボットSIer 300社掲載

2022.01.31

LMガイドのネジ締め工程を省人化し生産性を50%向上!

フジセン技工株式会社

フジセン技工株式会社では、川崎重工業株式会社製(以下、川崎重工)の双腕ロボットduAro(※2)を活用して社内で初めて「組立工程の自動化」に成功されました。フジセン技工株式会社の阿久津様と坂村様に導入経緯や苦労した点をロボカル 矢部秀一がインタビューさせていただきました。

【インタビューにご協力頂いた方々】
フジセン技工株式会社 技術部 部長 阿久津 圭司様
フジセン技工株式会社 技術部 生産技術課 技師長 坂村 秀樹様

【会社概要】

社名 フジセン技工株式会社
代表取締役 木下 不二夫
設立 1987年7月
社員数120名
本社栃木県足利市
事業内容電気機器・半導体製造装置・調整省力化装置・測定装置等の産業用機器
①開発・設計 ②精密板金部品 ③機械部品加工 ④組立、配線
主要取引先株式会社アドバンテストグループ 日本電気株式会社(NEC)
平田機工株式会社 日本信号株式会社 富士通グループ

【サマリー】

▼ フジセン技工株式会社内で自動化ターゲットを選定し構想設計を実施
▼ プロジェクトを補助するロボットSierや電動ドライバーメーカーに良い対応をしていただけたことでスムーズに進んだ
▼ リース会社のレンタル事業や群馬県の補助金制度を活用し、金銭的リスクを軽減しながら実証を進めた

【ロボットを導入しようとした経緯】

ロボカル 矢部秀一:
まずは御社の事業内容について教えてください。

坂村様:
各種分野のOEM生産でメインは半導体業界 各種洗浄装置、防衛や社内インフラ、医療、食品等精密機械に関連した省人化装置の製造を行っています。開発から・機械設計・電気設計・制御設計・部品調達など一貫して対応することが可能です。切削機械、板金工場も保有しており、部品の加工対応することも可能で、子会社にはケーブルメーカーも保有しているのでハーネス関係の製造もできます。

ロボカル 矢部秀一:
今回、川崎重工製の双腕ロボットduAro(WD002NHD61201)を導入されていますが、御社としてこれが初めてのロボットの導入だったのでしょうか?

阿久津様:
過去にファナック製の溶接ロボットを板金加工工場に納入したことはありますが、組立分野でロボットを導入したのは初めてです。

ロボカル 矢部秀一:
組立ロボットとは具体的にどのような作業をしているのでしょうか?

坂村様:
ネジ締めロボットとしてduAroを導入しています。メカ部品のLMガイド(※1)を組付けるためのロボットとして活用しています。

ロボカル 矢部秀一:
LMガイドのサイズはどの程度でしょうか?

坂村様:
大体40cm程度の大きさのものを対象としています。

ロボカル 矢部秀一:
ロボットの導入前はどのような体制で作業が行われていたのでしょうか?

坂村様:
作業者1人が作業場につきっきりで、一個一個ネジ締め作業を行っていました。LMガイドが製品の可動部になるので、平行度に注意しながら組付けを行う必要がありました。

ロボカル 矢部秀一:
ロボットを導入するきっかけは何かありましたか? 

坂村様:
お付き合いのあったリース会社様が「ロボット派遣」を行っていたことがきっかけです。それまでは組立工場のロボット導入の前例がなかったため、いきなりロボットを購入することはリスクと感じていました。いきなりロボットを購入するのではなく「レンタル」からスタートしようということになりました。現在はリース契約に切り替えています。

阿久津様:
また、群馬県のロボット導入支援補助金の支援も頂きながら、導入の為の検証を進めていきました。

【ターゲットとSier選定】

ロボカル 矢部秀一:
また、なぜネジ締めをターゲットにしたのでしょうか?

坂村様:
装置関係の製造時、ほぼ100%ネジ締め作業が必要です。現在の製造現場の繰り返し作業をリストアップして、LMガイドのネジ締め作業の割合が高かったので、そこを自動化することによって、急激な生産の増加にも対応することができ、生産性の向上を見込むことができると判断しました。

阿久津様:
半導体試験装置の納入先のお客様からロボット化のご理解いただけたことも大きな理由です。
 お客様にはネジ締め工程の認定制度があり、実技と学科に基づいたネジ締め認定を受けた作業者だけが作業をできます。半導体業界は景気の浮き沈みがシリコンサイクルとともにある為、景気が悪いときに人を減らして、景気の良いときに人を増やす必要があります。中小企業の為、人がなかなか集まりづらい上に、人を雇う度に、ネジ締め方法を教えないといけないということが非常に大変でした。
 そこで、ネジ締め教育担当の坂村と相談し、安定して作業ができるロボットにネジ締めを教えたらどうか、ということになりました。
 4M(※3)の変化点のため、お客様への申請が必要ですが、ロボットに置き換えることで人の増減に左右されずに品質を担保できるというメリットを強調して、ネジ締め工程のロボット化のご理解を頂くことができました。

ロボカル 矢部秀一:
装置メーカーということで御社の中でもロボットシステムを構築する技術はありそうですが、ロボットSierに依頼した理由は何だったのでしょうか?

阿久津様:
リース会社様からのご紹介がきっかけです。ロボットSier様にはネジ締めduAroの実績があり、設備構築に慣れていると判断しお願いしました。実際に現場の方にも足を運びduAroを何台も活用していることも確認しました。

(ロボット導入前の現場)

【構想設計から導入まで】

ロボカル 矢部秀一:
ロボットSierを紹介されてから導入までの流れはどのように進みましたでしょうか?

阿久津様:
基本構想は全て坂村が構築しました。簡易的な3Dモデルを使用し、仕様のとりまとめを行いました。
ただ、duAroは初めての活用だったため、ロボットの制御やティーチングの部分はロボットSier様に担当いただき、ネジ締め部分は電動ドライバーメーカー様にご協力頂きました。

ロボカル 矢部秀一:
基本構想にはどのくらい時間をかけられましたか?

坂村様:
構想には2か月近くかかりました。苦労した点は、組立をするための部品の配置とロボットの動きを作るところです。ロボットSier様に助言を頂きながら一緒に進めていきました。

ロボカル 矢部秀一:
基本構想の後はどのように進みましたか?

坂村様:
構想設計が終わり次第、すぐ発注して約4か月ほどで納入でした。発注後3か月程度で形になり、最後の1か月でLMガイドの精度を上げたり細かい調整をしたりしました。基本構想から全体で6か月程度で納入に至りました。

ロボカル 矢部秀一:
早いですね!

阿久津様:
構想設計の部分からロボットSier様にアドバイスを受けて、ネジ締めノウハウを入れながら進めることができたことが良かった点です。
 また、精密機器の為、ただ締めれば良いわけではありません。ピンに当てながらずれないように締めたり、締める順番を考慮したりしながら細かいところまで要求通りにロボットSier様が再現してくれたこともスムーズに進んだ要因かと思います。

ロボカル 矢部秀一:
全体としてとてもスムーズに進んでいるイメージですが、ご苦労した点はありますか?

坂村様:
最も苦労した点はLMガイドの組付け精度です。最初、0.1㎜程度だったのですが、部品を押さえつける位置やハンドの設計を若干変更したり、締め付ける順番を変更したりすることにより、お客様の要求精度の0.03mmに上げることができました。

【導入効果と今後の展望】

ロボカル 矢部秀一:
ロボット導入後の効果はどのようなことがありましたか?

坂村様:
現在安定して稼働していて、以前は作業者がつきっきりだったところを、ワークのセットとスイッチを押すだけになったので、その分、作業者が別の作業をできるようになりました。生産性で言うと、50%ほど上がりました。

ロボカル 矢部秀一:
今回組立ロボットの導入を成功されましたが、今後の展開を教えていただけますか?

坂村様:
既に2台目のロボットの検討を進めており、既に構想設計はほとんど完了しています。2台目は、ロボットの特徴をもっと活かす為、多品種少量生産にも対応できるよう、ハンドの変更を自動でできるようにします。ロボットが一時的に停止した時に、作業者のスマートウォッチに知らせる仕組みを構築したり、ネジの頭に印をつけるという作業にもロボットで対応できるようにしたりする予定です。カメラをつけてワークのセットの仕方が間違っていた場合、事前に検知するということもできるようにしたいです。

ロボカル 矢部秀一:
盛りだくさんですね! 

坂村様:
1台目を導入した上で現場の作業者からの意見を聞きながら進めています。例えばロボットが一時的に停止しているときに、パトライトが点灯していても作業者が気づかないという問題があります。ロボットの作業が終わって止まったままですと、稼働率が下がってしまうので、すぐに次のワークを供給しないといけないということを知らせることができるようにしたいと考えています。
 将来的には外販も視野に入れているので、社内で技術構築を行ってから、同じような悩みを持った中小企業に向けて低価格で提供できる体制を構築したいと考えています。

【動画】

ロボカル 矢部秀一:
今回とてもスムーズにロボットを導入できた事例だと思います。ロボット導入検討されている企業様へのアドバイスをお願いします。

坂村様:
組立用にロボットを導入するのは初めてだったため、本当に導入できるかという心配はありました。ロボットレンタルをうまく活用して評価をする中で使用できるということをしっかりと確認することができてから進めることが大事だと思いました。また、特有のノウハウを持ったところと組み、アドバイスを頂きながら進めることもポイントになると思います。

阿久津様:
様々なロボットが販売されていますが、目的に合ったロボットを選定することが重要かと思います。ただロボットを入れればいいというのではなく、目的をはっきりさせて、適したロボットを選定するということが特に大事と感じました。

【編集後記】

今回インタビューさせていただいたプロジェクトは構想設計から稼働するまでとてもスムーズに進んだ成功事例だと思います。
成功要因は以下のようなポイントがあると感じました。
① 自社内で自動化ターゲットを選定し構想設計までできたこと。
② プロジェクトを補助するロボットSierや電動ドライバーメーカーの対応が良かったこと。
③ リース会社のレンタル事業や群馬県の補助金制度を活用し、金銭的リスクを軽減しながら実証を進められたこと。
④ あくまでも自社が主体でロボットを導入し、活用していこうという積極的な取り組み姿勢
ただ、プロジェクト進行には実際にこのようにスムーズにいかず、ロボット化を断念してしまうことがあります。
自動化はしたいが自動化をするための人員がいない、忙しくてロボット化を検討する時間を避けない、構想設計を完成させる為のロボットの知見がない、どのようなロボットを選定すればいいか分からないなど、お困りごとがある際は、お気軽にロボカルまでお問い合わせください。

株式会社ロボカル
アライアンス事業部 
ゼネラルマネージャー 
矢部秀一

早稲田大学国際教養学部卒業後、
川崎重工業株式会社のロボット部門にて海外営業、国内営業を経験。
大手自動車メーカーや電機メーカーなどに向け約10年間で通算2,000台以上のロボットの販売に携わる。
日本の強みである産業用ロボット業界を更に発展させるため、株式会社ロボカルの立ち上げに従事。ITの力で産業用ロボット業界のビジネス環境を整えることを目指す。

【注釈】
(※1)LMガイド:Linear Motion Guideの略。機械の直線運動部を転がりによって直線運動させる機械要
素部品
(※2)duAro:川崎重工製の双腕スカラーロボット。4軸のスカラーロボットが2本組み合わさってできて
いる。80w以下のモーターを使用しているため人との協調作業が可能。アームとコントロ
ーラーが一体になっているため、簡単に移動することができる。
(※3)4M:Man、Machine、Material、Methodで構成される4つのMのこと。品質管理業務を適切に実施
する為の要素をまとめている。