産業用ロボットSIer 300社掲載

2022.07.20

草刈機の部品組立工程にロボットシステム導入で省人化に成功した㈱オーレックにインタビューさせていただきました!!

株式会社オーレック
代表取締役社長 今村 健二

草刈機の製造工程に双腕ロボット、多関節ロボット、スカラロボットなど多様なロボットを導入し、数々の工程の自動化を実現している㈱オーレック。従業員の熟練度や、人の視覚・触覚・体力に頼り切りであった工程をロボットを上手く活用していく事で、ロボットのメリットを出す秘訣をお聞きしました。

【インタビューにご協力頂いた方々】
生産本部 取締役生産本部長 安部 秀治様
生産本部 田中 忠様

(左:安部 秀治様、右:田中 忠様)

【会社概要】

商号株式会社オーレック
代表者代表取締役社長 今村 健二
設立昭和32年7月
資本金95,000,000円
売上高157.7億円(2021年6月期)
従業員数408名(2022年5月)
本社福岡県八女郡広川町日吉548-22
事業内容緑地管理機・農業機械製造販売
URLhttps://www.orec-jp.com/

(㈱オーレックの主力製品の1つスパイダーモアー)

【㈱オーレックについて】

ロボカル 矢部 秀一:
はじめに、御社の事業内容についてご説明お願い致します。

オーレック 安部 秀治様:
当社は福岡県八女郡広川町に本社を置く創業74年の会社です。草刈機を中心とした農業機械の製造・販売を行っています。
その他に農業を取り巻く周辺課題を解決するために、畜産現場のにおいを消すミストの販売、ECサイトを活用して生産者の方から直接農産物や加工品を販売する事業も行っています。

【ロボット導入の経緯と流れ】

ロボカル 矢部 秀一:
この度、ロボット導入を検討したきっかけを教えて下さい。

オーレック 田中 忠様:
実は当社では1981年に初めて溶接ロボットを導入し、溶接やハンドリングロボットなど、約80台のロボットが既に働いています。
今回は溶接工程だけでなく、組立工程でロボット導入してはどうかという意見が社内で挙がり検討を進めました。  

ロボカル 矢部 秀一:
検討はいつごろから始めていたのでしょうか?

オーレック 田中 忠様:
導入の半年ほど前からです。ロボット導入実証事業の話もあり、今まで導入していなかった組立の工程にチャレンジしようということになりました。

ロボカル 矢部 秀一:
ターゲットの工程はどのように決められたのでしょうか?

オーレック 田中 忠様:
スパイダーモアーという機種を1日150台生産していたのですが、今後生産が増えることを見越して180台を目標に設定し、その機種の生産工程のアルミケースの組立とチェーンケースの組立工程でロボット化を検討しました。
生産性の向上はもちろんですが、人が常時作業を行っており、組立は熟練者しかできなかったため、ロボット化によって省人化と作業の簡略化を進めていきたいという想いがありました。

ロボカル 矢部 秀一:
実際にはどのような組立作業だったのでしょうか?

オーレック 安部 秀治様:
部品点数が10数点の製品の組立作業です。

ロボカル 矢部 秀一:
導入にあたってどのようにプロジェクトを進めたのでしょうか。

オーレック 田中 忠様:
㈱安川電機と別件で打ち合わせをしており、自動化の相談をしたところSierをご紹介いただき、プロジェクトを始めました。
ただ、ご紹介いただいたSierはもともと食品関係の自動化をメインに行っていた会社で、モノづくりの工程にも進出していきたいという会社でしたが、予算がこちらの想定よりかなり高かったため、急遽別のSierを探しました。

ロボカル 矢部 秀一:
予算に対して大体どの程度高かったのでしょうか?

オーレック 田中 忠様:
アルミケースの組立とチェーンケース組立の2つのシステムを構築したのですが、予算に対して1.5倍程の見積になりました。予算内に納めるため、㈱イーモーションにお声がけして従来の予算まで抑えていただきました。

ロボカル 矢部 秀一:
Sierの㈱イーモーションはどのように探されましたか?

オーレック 田中 忠様:
以前からお付き合いがあったので、お声掛けさせていただきました。
ただ、アルミの組立まではできないとのことだったので、チェーンケース部品全体のシステムのみを㈱イーモーションにお願いして、アルミの組立は五誠機械産業㈱に窓口になっていただき、システムは㈱佐賀プラント工業にやっていただきました。この2社ももともと付き合いがあったところだったので、スムーズに進めることができました。

ロボカル 矢部 秀一:
2つのシステムは同時進行だったのでしょうか?

オーレック 田中 忠様:
そうですね。自分たちで進める場合は計画から準備まで大変ですが、今回はスピードを重視してSierに全てお願いしました。 

ロボカル 矢部 秀一:
発注まではどれくらいの期間打ち合わせをされましたか?

オーレック 田中 忠様:
半年間ほど行っていました。
おおまかな仕様自体はまとまっていたのですが、ロボットの数が多いことや、はじめにお願いしていたSierが㈱安川電機のロボットで統一していたということもあり、㈱安川電機の双腕ロボットの仕様も含め再検討しました。
その結果、チェーンケースの組立工程では㈱イーモーションが得意な㈱デンソーウェーブのロボットと㈱安川電機のロボットの双腕ロボットを含め7台と、アルミケースの組立工程では㈱佐賀プラント工業が得意な㈱安川電機のロボット2台と小型ロボットを適材適所に導入するかたちになり、費用をかなり抑えることができました。

(㈱安川電機の双腕ロボットでの組立作業)


ロボカル 矢部 秀一:
ロボットのメーカーにはあまりこだわりはなかったのでしょうか?

オーレック 田中 忠様:
そうですね。もともと溶接工程はダイヘンのロボットを導入しており、今はPanasonicのロボットを導入しています。ハンドリングロボットは不二越のものを使っており、最近はファナックのロボットも導入しています。
生産性が上がり、担当者の方が操作を覚えることができればメーカーの種類にはこだわりはないです。色々なメーカーのロボットが入ると現場の技量も上がるので、その点でも複数のメーカーのロボットが現場に入っていることは良いことだと捉えています。

(㈱デンソーウェーブの小型ロボットを使った組立作業)

ロボカル 矢部 秀一:
発注から導入までの期間はどれくらいでしたでしょうか。

オーレック 田中 忠様:
6月に発注し、12月に納入されたので半年ほどかかりました。

ロボカル 矢部 秀一:
導入にあたって苦労した点はどのようなところでしたか?

オーレック 田中 忠様:
溶接工程での熱ひずみや搬送中に部品が落下することもあり、カメラで安定してビジョン判定がしづらいという点は苦労しました。
組立工程でのロボット導入は初めてだったので、導入後にどんな問題が起きるかを把握しておらず、もう少し事前に勉強しておけばよかったと思います。

ロボカル 矢部 秀一:
金額は予算内に収まりましたか?

オーレック 田中 忠様:
チェーンケースの組立工程で追加費用が発生したので、予算はオーバーしてしまいました。当初は組立作業のみの予定でしたが、後から検査を行う必要があるということが分かり、追加費用がかかりました。

【ロボット導入後の感想】

ロボカル 矢部 秀一:
今回実際にロボットを導入してみて、良かったと感じた点を教えて下さい。

オーレック 田中 忠様:
普段、自分たちでもロボットシステム構築をしているのですが、Sierの専門家ならではの高い技術を学ぶことができたと感じています。

ロボカル 矢部 秀一:
先程、人での作業の軽減も目的と仰っていましたが、そちらはいかがでしたか?

オーレック 安部 秀治様:
今まで、1か所に2名ずつ配置して計2名で作業を行っていたところを、部品の供給だけの作業のため、0.5人ずつまで減らすことができました。またロボット化によって品質を大きく向上することもできました。
熟練者の方の作業もロボット化することができたので、より効率的な人員配置も行うことができるようになり、ロボットを導入したメリットを存分に出せたと思っています。

ロボカル 矢部 秀一:
反対に、期待通りにいかなかったことはありますか?

オーレック 安部 秀治様:
当初、部品の年間の生産量が想定以上に増え、タクトタイムが合わず、システムの改修が必要になるという問題が出ました。
季節によって製品の受注量が変わるため、ピーク時にロボットの生産性が間に合わなくなってしまいました。そこで、導入したロボットシステムに専用ラインを追加して、1日の生産量を減らす代わりに年間を通じて安定的に生産できる体制に調整しました。それでも生産量の増加時にタクトタイムが間に合わないことがあるので、追加でもう1台ロボットの導入を検討しています。

ロボカル 矢部 秀一:
㈱安川電機の双腕ロボットはいかがでしたか?

オーレック 田中 忠様:
見た目はとてもインパクトがあり、工場見学時など見ていただくととても良い反応をもらうことができます。ただ、ロボットの中心部の可動範囲が狭く、組立作業時の動作姿勢がとても窮屈になってしまいました。生産の効率性だけを考えると、普通の垂直多関節ロボットを2台導入した方が良かったかもしれません。

ロボカル 矢部 秀一:
なるほど。人と同じような見た目だから使いやすいとは限らないのですね。

【今後の展望】

ロボカル 矢部 秀一:
今後の自動化についてはどのようにお考えでしょうか?

オーレック 安部 秀治様:
溶接工程やハンドリングに関してはかなりロボット化が進んでいるので、今後は組立などの人手の必要な工程にロボットを導入していきたいと考えています。どうしてもロボットで多品種の組立に対応するのが難しいので、そこをどう解決するかが課題ですね。

ロボカル 矢部 秀一:
最後にこれからロボットを導入しようと検討されている企業様に向けて、今までの知見からアドバイスがあればお願いします。

オーレック 田中 忠様:
ロボットは教えたことを正確にやるので使い勝手もよく、間違えずに使えば品質や生産量は向上すると思います。ただ、今回分かったことは製品を認識するためのカメラを使用するときは注意が必要であるということです。当社の工場は窓があるため、太陽光の影響で時間帯によりカメラが想定通り機能しないという問題が起こりました。事前に場所や環境についても調査をした方が良いということは勉強になりました。そのような懸念事項がある場合は、急いで導入して後で後悔しないよう、時間をかけて検証を行ってから導入する方が良いと思いました。
また、中小企業でいきなり大きな設備を導入するのはコスト的にも厳しいと思うので、予算感に関しても最初からターゲットを決めて打ち合わせが重要ですね。

オーレック 安部 秀治様:
どこまでSierに任せるかも重要なポイントです。予算や現場の状況から、どこまでロボット化して、どこまでを人が行うかを見極める必要もあると思います。

ロボカル 矢部 秀一:
「人の得意なところは人で、ロボットが得意なところはロボットで」と上手に割り切りすることが重要ということですね!本日はありがとうございました。

オーレック 安部 秀治様田中 忠様
そうですね。ありがとうございました。

【編集後記】
80台以上のロボットを使用していても、貪欲にロボットを使用して効率化を図るチャレンジ精神がとても素敵だと感じました。ただ、初めてロボット導入を検討される企業様は、人が得意な作業とロボットで行ったほうが良い作業の境界を判断するのは、難しいこともあるでしょう。そのような場合はロボカルのロボット化の経験豊富な技術営業に是非一度ご相談ください。

【インタビュー】
株式会社ロボカル
技術営業部 責任者 
矢部秀一
早稲田大学卒業後、川崎重工業株式会社のロボット部門にて海外営業、国内営業、社長直轄プロジェクト推進部にてロボットPCR検査事業立上げを経験。
大手自動車メーカーや電機メーカーなどに向け約10年間で通算2,000台以上のロボットの販売に携わる。
日本の強みである産業用ロボット業界を更に発展させるため、株式会社ロボカルの立ち上げに参画。
ITの力でロボット業界の活性化を目指す。